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ユニセフ、コロナによる子供のメンタルヘルスへの悪影響を懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ユニセフ(国連児童基金)は新型コロナウィルス感染拡大にともなって、子供と若者のメンタルヘルスに与える影響を懸念し、各国政府に対して子供と若者のメンタルヘルスのケアへの対応の取組を呼びかけている。ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォア氏が欧州委員会のハイレベル会合で呼びかけた

新型コロナウィルス感染拡大によってロックダウンされ学校が閉鎖されていることが多く、子供や若者の身体的な健康、家庭の経済状況、学習の進捗、将来への不安などからメンタルヘルスに悪影響を与えていることにユニセフは懸念を表明している。また、そのようなメンタルヘルスの悪影響は長期間にわたって続くことも指摘。OECDが77ヶ国で調査した結果によると、新型コロナウィルスの影響で、子供や若者がストレスと不安でアルコール薬物使用が増加している。

ユニセフではこのような子供や若者のために、メンタルヘルスのケアのシステムを再構築していき、デジタルプラットフォームを使ったピア・メンターシステムを構築することを明らかにしている、またユニセフでは、メンタルヘルスのケアに対する支援サービスの不足を指摘し、各国にも若者と子供のメンタルヘルスのケアを呼びかけている。

学校が休校でもオンライン学習も受けられない子供たち

メンタルヘルスに与える悪影響の1つにロックダウンによって学校が閉鎖され、学校に通えなくなり、さらにオンラインで授業を受講できないで学習が中断してしまう子供や若者が多いこともあげられる。

日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校では対面授業再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がないこと、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していないこと、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。

そのような子供たちは学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。学校に行けないので勉強もできずに、友達にも会えず、仕事をしなくてはいけなかったり、家庭で虐待を受けるなどメンタルヘルスに悪影響を与えている。

特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。そのような子供たちは学校が再開されても、ほとんど戻ってこない。

さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えにくいが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そのためデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。

▼ユニセフ・スーダンではメンタルヘルスのケアに対する動画を作成してケアを呼びかけている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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