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キラーロボットに反対:世界で61%・日本は48% 日本の反対理由1位「兵器の判断での攻撃が非倫理的」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

キラーロボット反対、世界で61% 日本は48%:インドは5割が賛成

AI(人工知能)技術の発展によって人間が判断しないで、AIを搭載した兵器自身が判断して標的に攻撃を行い殺傷する「キラーロボット」と呼ばれる自律型殺傷兵器が開発されようとしている。人間の判断を介さないで標的を攻撃して敵を殺傷することが非倫理的であると国際NGOや世界30の国が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対している。

調査会社IPSOSが2019年1月に世界26か国で自律型殺傷兵器に関するアンケートを行った。その結果、自律型殺傷兵器について「強く反対/ある程度反対」と回答しているのは26か国合計で61%となった。「強く賛成/ある程度賛成」は22%だった(残り17%は「わからない」と回答している)。

国別にみると、もっとも反対しているのが多いのがトルコで約8割が反対を表明している。トルコでは「神風ドローン」と呼ばれている標的を認識すると突っ込んで攻撃を行うドローンが開発されたり、近隣諸国アルメニアとアゼルバイジャン紛争での神風ドローンによる攻撃が見られたことから、脅威の認知度が高いのだろう。

もっとも反対していない(賛成が多い)のはインドで5割が賛成している。またイスラエルも4割が賛成。周辺を敵国に囲まれており、AI技術の開発力に優れており、軍事でのAI技術活用が進んでいるインドとイスラエルが自律型殺傷兵器に賛成が多い。

日本では自律型殺傷兵器に賛成が14%で反対が48%で合計62%なので、約4割が「わからない」と回答しており、日本での自律型殺傷兵器の脅威の認知や知名度の低さがうかがえる。

自律型殺傷兵器に反対しているのが7割を超えているのがトルコ(78%)、ハンガリー(74%)、韓国(74%)、コロンビア(73%)、ドイツ(72%)、スウェーデン(71%)だった。

▼各国の自律型殺傷兵器への賛否(賛成と反対以外は「わからない」と回答)

賛成が高い順位に並んでいる

(IPSOS調査結果を元に筆者作成)
(IPSOS調査結果を元に筆者作成)

日本の反対理由は「兵器が判断して殺害するのが非倫理的」65%

また自律型殺傷兵器に反対している人での反対理由についての調査結果を見ると、世界全体では「兵器が判断して殺害することが非倫理的」が66%、「責任の所在が不明」が54%、「技術的欠陥がある」が45%と高い。どこの国でもこの3つが自律型殺傷兵器に反対する理由として上位にある。

日本でも自律型殺傷兵器に反対している人の反対理由で一番多いのが「兵器が判断して殺害することが非倫理的」が65%、「責任の所在が不明」が45%、「技術的欠陥がある」が32%と高い。

「兵器が判断して殺害することが非倫理的」だから自律型殺傷兵器に反対しているのが高い国はフランス(85%)、ハンガリー(81%)、英国(77%)、南アフリカ(74%)、スウェーデン(73%)と続いている。

国際人道法で自律型殺傷兵器の開発や使用を禁止しようと国際NGO団体の「ストップ・キラーロボット・キャンペーン」らが強く主張しているが、「違法であるから」という理由で自律型殺傷兵器に反対している国は全体的に10%~40%と上記の3つの理由に比べると低い。「違法であるから」という理由で反対している国の上位はフランス(40%)、イタリア(33%)、イスラエル(31%)である。

▼各国の自律型殺傷兵器に反対する理由

(IPSOS調査結果を元に筆者作成)赤色が濃いほど高い
(IPSOS調査結果を元に筆者作成)赤色が濃いほど高い

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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