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ホロコースト犠牲者追悼「マーチ・オブ・ザ・リビング」コロナのため今年はバーチャルで初開催・3Dで表現

佐藤仁学術研究員・著述家
「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」(写真:ロイター/アフロ)

例年、世界中から約30万人が集まるが今年はバーチャル開催

ホロコースト犠牲者を追悼して、毎年4月に世界中の学生らがアウシュビッツ絶滅収容所を訪問してホロコースト学習を行う「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」というイベントがある。1988年から開催されており、世界中から約30万人の学生やホロコースト生存者、家族らが集まり、アウシュビッツ絶滅収容所からビルケナウまで約3キロメートルを歩くイベントである。今年は4月8日に開催されるが、世界規模での新型コロナウィルス感染拡大の影響で、今年はバーチャルでの「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」を開催する。

第2次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯を殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴の1つでもあるポーランドにあるアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人が殺害された。アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも世界中からの観光客や欧米、イスラエルの学生らが社会科見学で訪問しており、2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており、昨年の訪問者数は52万人程度だった。

例年、アウシュビッツ絶滅収容所に世界中の学生やホロコースト生存者らが集まるが、今年は3D技術を活用して、アウシュビッツ絶滅収容所の映像を前にして、バーチャルで生存者や学生らが3Dで登場する。今年のバーチャルで行われる「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」の紹介動画も公開しているのでイメージもつかみやすい。

イスラエル大統領「ホロコースト犠牲者を追悼したイベントを行う義務があります」

イスラエルのルーベン・リブリン大統領もバーチャルで登場する。大統領は「私たちユダヤ人には、ホロコースト犠牲者を追悼したイベントを行う義務があります。決して忘れてはいけない歴史です。そして後世の世代に伝えていく必要があります。技術力の発展によって、家を離れることなく参加することができます。私たちは世界中ではびこっている反ユダヤ主義、ホロコースト否定、民族憎悪と戦っていかないといけません」と語っている。

また高齢化が進み、もうアウシュビッツ絶滅収容所に実際に足を運ぶことができないホロコースト生存者らもバーチャルなので自宅のカメラでスマホで撮影して「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」に参加できる。

▼2021年のバーチャルで行われる「マーチ・オブ・ザ・リビング(March of the Living)」の紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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