13歳ユダヤ人少女の実話を元にした「ホロコースト時代にインスタがあったら?」ウェビー賞受賞
ホロコーストの記憶の伝承を目的に2019年にインスタ開設
第2次大戦時にナチスドイツが約600万人以上のユダヤ人、ロマ、政治犯らを虐殺したいわゆるホロコーストだが、70年以上の時を経て、ホロコーストの生存者、経験者らは年々減少している。ホロコーストの記憶を次世代に伝えていこう、特に若者に伝えていこうという動きが欧米やイスラエルでは非常に積極的だ。
2019年にイスラエルのMati Kochavi氏と娘のMaya氏はホロコーストを若者に伝えるために、ホロコーストを実際に体験したハンガリーEva Heyman氏の実話をもとにインスタグラムで再現。「ホロコーストの時代にインスタグラムがあったなら?」というタイトルでインスタグラムで「Eva.stories」を開設した。Eva氏が体験した実話を元に数百万ドルをかけて映像を作成。インスタグラムという現代の2020年代の若者が使っているソーシャルメディアに短い動画を何回も制作してアップ。スマホで自撮りをしながら当時の様子を伝えるというストーリーと当時の様子を忠実に伝えようとする本格的な映像でホロコースト当時のユダヤ人少女の目から見た様子をインスタグラムで伝えている。
インスタで伝えられている動画は実際に存在した13歳の少女Evaの物語。1944年5月15日から7月9日にかけて、ハンガリーから43万人のユダヤ人がナチスの強制収容所に連行された。Eva氏もその1人。約600万人が犠牲になったホロコーストだが、ハンガリー系ユダヤ人の犠牲者は568,000人。Evaはアウシュビッツに移送されて戻ってくることはなかった。1944年の少女のEvaが体験した平和な日々やナチスの侵攻によって生活が激変する様子、Evaの恐怖、不安、ゲットーのカオスなどがインスタグラムでうかがえる。
「インターネットのアカデミー賞」
その「Eva.stories」が2020年5月に「Best Use of Stories」のジャンルでウェビー賞を受賞した。ウェビー賞は1996年から国際デジタル芸術科学アカデミー (IADAS) によって毎年開催され、優れたインターネットのサイトに贈られる賞で「インターネットのアカデミー賞」「デジタルコンテンツのオスカー」とも呼ばれている。
Mati Kochavi氏と娘のMaya氏は「Evaの物語が人気があり、多くの人に愛されて、多くの人が視聴してくれました。ウェビー賞の受賞によって、再びEvaの物語とホロコーストに多くの人が注目を集めてくれることになると思います。13歳の少女がユダヤ人という理由だけで迫害され、アウシュビッツで意味もなく殺害されてしまったことに世界中の人に注目してほしいです」とコメントを寄せていた。実際にインスタグラムで「Eva.stories」の動画は世界中の3億人が視聴した。
最近では2020年3月にアンネ・フランクハウスが制作した「アンネの日記」の動画版「アンネのビデオ日記(Anne Frank video diary)」がYouTubeで公開された。こちらも1940年代のナチス支配下のアムステルダムでアンネ自身がビデオを回して動画を撮影しながら、隠れ家での生活や思いを伝えている内容になっており、Evaのインスタグラムと同様に実在人物の生涯を元にしていることとホロコーストの史実に忠実なことから若年層への訴求力がある。
▼「Eva.stories」のフルバージョン(ホロコースト・ソーシャル・アーカイブ)
▼インスタでの「Eva.stories」に投稿されている動画のトレーラー