国連事務総長、自律型殺傷兵器開発の禁止を訴え:2020年所信表明演説で・科学技術発展の負の側面を強調
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2020年1月22日に国連本部で、2020年の所信表明演説を行った。演説では、21世紀の進歩を危うくする4つの脅威として以下の4点を掲げ、加盟国への協力を呼びかけた。
1. 地政学的緊張(Geopolitical tensions)
2. 地球温暖化(The climate crisis)
3. グローバル規模での政治不信(Global mistrust)
4. 科学技術発展の負の側面(The dark side of technology)
「人間の倫理観と政治的な観点から受け入れられるものではありません」
グテーレス事務総長は「科学技術発展の負の側面」の中で、AI(人工知能)の発展について警鐘を鳴らした。事務総長は「AI技術の発展は人類の歴史に大きな進化をもたらすと同時に警告すべきこともあります。自律型殺傷兵器の登場です。AIを搭載した自律型殺傷兵器が人間の判断を介することなく、兵器自身が判断して標的を攻撃したり、人を殺しに来る可能性があります。これは人間の倫理観と政治的な観点から受け入れられるものではありません。全ての加盟国に率直なお願いがあります。自律型殺傷兵器の開発には今すぐに反対してください」と訴えた。
自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)はキラーロボットとも称され、グテーレス事務総長も訴えているように、AIを搭載した兵器自身の判断によって標的を攻撃し、甚大な損害を与えることが危惧されている。人間の判断を介さないで兵器のみの判断で人を殺害することに対して倫理的な観点からNGOや一部の国が自律型殺傷兵器開発の反対を訴えているが、全体としての足並みは揃っていない。