Yahoo!ニュース

ロシア、プーチン大統領:AI技術発展に伴う「倫理面でのルール」作りの必要性強調

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアのプーチン大統領は2019年11月にモスクワで開催されたAI(人工知能)イベント「AI Journey conference」に登壇。そこでプーチン大統領はAI技術の発展には「倫理面でのルール」「モラルのルール」を整備していくことが必要だと訴えた。プーチン大統領は「AIを搭載したロボットが発展するにつれて、人間の関与が安全確保のために必要である。社会でのAI技術の活用に向けた倫理面、モラルの観点からの議論は行われており、今後もそのような議論を行っていくことはとても重要である」とコメント。

 さらに「人間こそが最高の価値を持っている。AI技術はあくまでも技術であり、人間ではない。AIのプロフェッショナルたちのコミュニティやAI技術を開発したり使用する企業において、人間とAIの倫理面でのルールを設定することが重要になる」と述べた。またプーチン大統領は「我々のメインゴールは持続可能な社会の構築と、人間とAIによる調和のとれた発展であり、それらが人間生活の質を向上し、市民に新たなチャンスを与えることになる」と語った。

 プーチン大統領は2017年9月には、ロシア国内の16,000の学校で新学期を前に「AIの分野でリーダーになれる者が世界のリーダーになれる」と学生たちに向かって述べていた。現在、ロシアだけでなくアメリカ、中国、イスラエルなど世界中で軍事でのAI活用が進められており、AI技術を搭載した兵器が開発されている。AI技術を搭載した兵器は自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)、キラーロボットの開発に繋がり、人間の判断を介さずにキラーロボットが標的を判断して攻撃をしかけることが懸念されている。この分野における倫理面、モラルの観点からの議論と国家間でのルール作りは今後、重要になっていく。

 AI技術の開発では、軍事面、民生品の活用ともにアメリカと中国が圧倒的に強い。さらにインドやイスラエルなども発展している。AI技術開発においてロシアは米中から大きく引き離されている。プーチン大統領は2019年10月にロシアで2030年までのAI技術開発の国家戦略プランを承認。同プランでは、ロシアにおけるAI技術の開発の加速化、AIサービスの可能性の拡大とAI人材の育成を強調。2030年までにAIを人間の知的活動と同等の機能・レベルにして行動をできるようにすること、そのための技術的なソリューションを提供することを明確な目標として設定している。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事