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インド国防大臣「AI、ビッグデータ、ブロックチェーンが戦争のパラダイムを変える」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 インドの国防大臣のRajnath Singh氏は2019年10月、次世代の戦争について語った。Singh氏は「AI(人工知能)、ビッグデータ、ブロックチェーンは現在の戦争の在り方のパラダイムを大きく変えようとしている。軍事産業はこれらの技術を活用して、兵器開発を行っていこうとしている。さらにAI、ビッグデータ、ブロックチェーンの技術は軍事産業と次世代兵器開発だけでなく、重要インフラのセキュリティにおいても重要になってきている」と語った。

 Singh氏はさらに「戦場は従来の陸・海・空からサイバースペースに移行してきており、国家はそのためにも従来の軍事対策だけでなく、あらゆるサイバースペースでの軍事対策が求められる。今、求められている軍事的なチャレンジは、不測の事態に備えることだけでなく、あらゆる観点からの脅威に対応していくことと、必要に応じて積極的な技術開発を推進していくことだ」とコメント。

 インドは情報通信産業に非常に強く、人口も12億人以上と多く、機械学習の強化に不可欠な様々なデータや画像も大量にあることから、AI技術、ビッグデータの技術開発力も秀でている。また優秀なエンジニアも多い。現在、世界規模で、軍事面でのAIの導入は推進されている。特に人間の軍人が行っている3D業務(Dirty:汚い、Dull:退屈な、Dangerous:危険)はAIを搭載したロボットの方が適切であり、実際に既に監視業務などはロボットによる代替が進んでいる。インドとしては隣国パキスタン、中国、バングラディッシュとは常に緊張関係にあり、国境付近での監視においても軍事力の強化においてもAI技術の活用は欠かせない。

 一方で、AI技術のますますの発展によって、自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)やキラーロボットと称されている、人間の判断を介さないでAIを搭載した兵器やロボットがロボット自身の判断で標的や人間を攻撃してくることが懸念もされている。インドでは2020年2月から世界80ヶ国からの軍事関係者を招聘してDefExpo 2020が開催される。インドとしては、そこで世界中にインドの軍事開発力のアピールをしていきたいところだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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