米国イェール大学、ホロコースト経験者の証言動画をポッドキャストでも公開
米国のイェール大学にある「ホロコースト証言のフォーターンオフ・ビデオ・アーカイブ(Fortunoff Video Archive for Holocaust Testimonies)」はポッドキャストでホロコースト生存者の証言の動画を2019年9月に公開した。
4400本・12000時間以上の証言動画
タイトルは「Those Who Were There(そこにいた人々)」。まずはポーランド出身のユダヤ人男性のMartin Schiller氏の証言から公開していく。同氏はホロコースト時代に4つの強制収容所を転々とさせられた経験を語っている。第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人やロマ、政治犯らを殺害した。戦争が終結してから70年以上が経ち、当時のホロコーストを経験した人々の多くが他界し、当時子供だった経験者らも高齢化が進んできた。ホロコーストを語ることができる人は年々減少しており、直接に話を聞くことは難しくなってきている。当時の様子を知る手段として証言動画が果たす役割は大きくなってきている。
1979年からホロコースト経験者の証言を撮影してビデオで保管してきた。現在ではスマホで誰もが簡単に撮影できるが、当時は誰もが簡単に動画を撮影できるものではなかった。1981年にイェール大学に証言動画が寄贈され、それ以降4400本以上、12000時間以上の証言動画を撮影、保管してきた。動画のアーカイブはネットでも公開しており、欧米ではホロコースト教育に多く活用されている。
1979年からホロコースト経験者の証言動画を収集
イェール大学では1979年にホロコースト経験者の証言を集めて来た。アメリカでホロコーストに対する市民の意識が高くなったのが1978年4月にアメリカの放送局NBCが製作して放送されたテレビドラマ『ホロコースト:戦争と家族』で約1億2000万人が視聴したと言われている。多くのアメリカ人が、ユダヤ人医師ヴァイス一家の悲劇を描いたこのドラマを見て、第2次大戦時に欧州のユダヤ人に起こったホロコーストのリアリティを知ることになった。
ワシントンDCにあるホロコースト記念博物館は1993年4月に開設されたが、このドラマが放映された1978年に「ホロコースト諮問委員会」が設置された。ハンガリー出身のホロコースト経験者で作家のエリ・ヴィーゼル氏を議長に任命。追悼記念碑のような博物館ではなく、人々にホロコーストの教訓を学んでもらえる「体験する博物館」を主張して博物館は建設された。
当時のカーター大統領はアメリカ国民に対して、1979年4月に「真の意味でホロコーストの犠牲者を記念するためには、我々はこの世界から、人間に対する全ての抑圧を取り除かなければならない。我々が理解しなければならないことは、この世界に生きる誰かが恐怖政治(テロリズム)や偏見や人種差別の犠牲になったとき、全人類もまた、犠牲者なのだということだ。我々の世界は40年前、このことを理解できず、ホロコーストの進行を許した。我々の世代は、このことから学ばねばならない。アメリカは自国のみならず、世界のあらゆる国において人権が擁護されるべきことを、常に主張していかなければならない」と語っていた。
Yale University’s Fortunoff Video Archive for Holocaust Testimonies
▼イェール大学でのホロコースト経験者の証言。YouTubeでも視聴可能。