トロント大学、ショア財団が保有するホロコースト生存者の膨大な証言を分析

(写真:ロイター/アフロ)

1994年に設立された南カリフォルニア大学ショア財団研究所は、20年以上にわたって、ホロコーストに関するあらゆるデータや生存者の証言を集めてデジタル化して保存したり、録画した証言をYouTubeで全世界に配信したりしている。またホロコーストだけでなく、アルメニア、ルワンダやグアテマラの大虐殺など55,000以上の証言を集めている。またデジタル化された映像をホロコーストの教育に活用している。ショア財団は映画「シンドラーのリスト」を手掛けたスピルバーグ監督が多額の寄付を行って設立された。彼はユダヤ人だが、アメリカに生まれたため、彼自身はホロコーストを経験していない。

 第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人以上のユダヤ人や政治犯らが殺害された、いわゆるホロコースト。それでも戦後も生き延びることができた人たちもいた。ショア財団が世界中から収集したホロコースト生存者らのデジタル化された証言を元に、カナダのトロント大学では生存者の証言に、どのような傾向があるかを分析しているクラスがある。ショア財団の証言はデジタル化されており、世界中どこからでもアクセスが可能。学生らはショア財団が保有している多くの証言を元に、生存者の証言の感情表現や仕草・表情の違い、当時の記憶のネガティブな部分、ポジティブな部分などに分類して解析を行っている。

米国に移住してきた人の方がソ連に残った人よりも子供の頃の反ユダヤを多く語る

 それによると「女性の生存者の方が男性よりも、インタビュー中に小休止することが多く、男女によりホロコースト時にうけたトラウマの影響が異なる」、「同じ地域の出身者のホロコースト経験者で、戦後アメリカに移住してきた人の方が、ソ連領内に残った人よりも当時、子供だった頃の反ユダヤ主義によるユダヤ人へのいじめや日常的な差別について多く語る傾向がある」、「生存者はドイツについて語る時よりもロシアについて語っている時の方がポジティブな感情になっている」といったことが明らかになった。同大学では、そのような結果に至った歴史的・社会的背景などから仮説を立てて立証しようとしている。トロント大学のユダヤ学のクラスではこれからも継続して分析を行っていき質的調査の精度を高めていく。

 ショア財団には世界中のホロコースト生存者らの証言集があり、その証言者のほとんどが他界している。ホロコースト経験者らの生存者もかなりの高齢化が進み、記憶が曖昧になってきている。当時の記憶が残っている世代はもはや80代後半だ。それでも、ショア財団では現在でも残っている生存者らに、当時の経験を語ってもらい、彼らの記憶をデジタル化し後世に残していこうとしている。