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カナダとフランス『AIに関するパネル』設立:トルドー首相「AIの倫理的な利用で重要な役割を果たす」

佐藤仁学術研究員・著述家
カナダのトルドー首相(写真:ロイター/アフロ)

 人工知能(AI)の開発力では圧倒的にアメリカと中国が強い。米中の企業でAIの開発競争が進んでいる。そのような中、カナダとフランスがAIの倫理的な利用についてイニシアティブを取ろうとしている。

カナダ「AIの倫理的な利用で重要な役割を果たす」

 カナダのジャスティン・トルドー首相はフランスのデジタル担当ムニール・マジュビ副大臣ととともに2018年12月に「AIに関するパネル(International Panel on Artificial Intelligence)」を開設することを明らかにした。カナダのトルドー首相とフランスのマクロン大統領は2018年初めに両国でAI分野で協力していくことを明らかにしていた。カナダとフランスは他の国にもパネルへの参加を呼びかける。2018年12月にG7加盟国がモントリオールでAIの影響について議論を実施。カナダ政府は参加国がAIの開発者、研究者らがAIの危険性を理解し、AI利用における倫理的に適切な対応をするべきなどを明記したステートメントを発表している。

 カナダのトルドー首相は「カナダがAI分野で世界のリーダーになれば、AI分野における倫理的な問題や懸念を解決していくうえで、重要な役割を果たすことになる」とG7の会議でコメントし、意欲を見せた。

フランス「国際社会でAIの共通の価値観を醸成することが大切」

 フランスのマジュビ副大臣は「カナダとフランスだけでなく、他の国にも参加を呼びかけている。既にパネルに参加したいという国もある」とコメント。まあマジュビ副大臣は「パネルでは、AIの発展による自律型殺傷兵器、キラーロボットの問題とAIの倫理的な活用についても、国際社会で議論していくことが望ましい。このパネルには中国なども含めて、あらゆる国に参加して欲しい。そこでAI技術の倫理的な活用について議論していきたい。国際社会で、AIの倫理的な活用に関する共通の価値観を醸成することが重要だ」と語った。

 国際社会においてAIとロボットの発展で一番懸念されているのが、自律型殺傷兵器(LAWS)やキラーロボットの登場で、そのようなロボットが人間を介さずにロボットの判断で人間を攻撃してくることだ。SF映画のような話だが、そのようなキラーロボットが実現したら、従来の戦争の在り方や人間とロボットの関係を大きく変える。そのためAI技術が暴走しないためにも倫理的な面からの議論が国際社会では求められており、カナダとフランスはその分野で主導権を握ろうとしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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