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ユネスコ、世界ユダヤ人会議と連携してホロコースト教育サイト提供「人種差別と記憶の忘却に対応」

佐藤仁学術研究員・著述家
ポーランド ワルシャワのユダヤ人ゲットー (1941年)(写真:Shutterstock/アフロ)

 国連の機関である国際連合教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は2018年11月に、世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress:WJC)と提携して、ホロコースト教育と世界中に蔓延っている反ユダヤ主義や人種差別、ヘイトスピーチに対する啓もうと注意喚起を目的としたサイト「Facts about the Holocaust」を立ち上げた。

将来は中国語、アラビア語でも提供

 第2次大戦中にナチスドイツによってユダヤ人や政治犯、ロマなど約600万人が殺害されたと言われている、いわゆるホロコースト。現在では当時のホロコーストの生存者もほとんどいなくなり、また高齢化が進んでおり、当時を語ることができなくなっている。ユネスコが立ち上げたサイトではホロコースト生存者の証言や当時の写真、映像などをオンラインで世界中からアクセスして、ホロコースト教育用に活用することを目的としている。

 またホロコーストの問題や歴史的背景、事実などを記載し、現在でも世界中に蔓延っている反ユダヤ主義やヘイトスピーチ、人種差別に対して注意喚起を行っている。現在は英語のみだが、世界ユダヤ人会議によると中国語やアラビア語でのコンテンツ提供も検討している。

 

 ユネスコのオードレ・アズレ局長は「世界中の若い人たちに、ホロコースト否定や誤った歴史観に対する教育用ツールを提供できるようになった。我々は、記憶のデジタル化によって、現在の人種差別問題や人々の記憶の忘却にも対応していかなければならない」と語った。

「Facts about the Holocaust」

ユネスコ本部でのサイト立ち上げの式典にて。中央がユネスコの局長のオードレ・アズレ氏、その右隣が世界ユダヤ人会議議長のロナルド・ラウダー氏(UNESCO)
ユネスコ本部でのサイト立ち上げの式典にて。中央がユネスコの局長のオードレ・アズレ氏、その右隣が世界ユダヤ人会議議長のロナルド・ラウダー氏(UNESCO)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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