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米国ホロコースト博物館、スマホを写真にかざしてARで当時の様子を紹介

佐藤仁学術研究員・著述家
(米国ホロコースト博物館提供)

 アメリカのワシントンDCにあるホロコースト記念博物館ではAR(拡張現実)を活用した展示を試験的に導入した。訪問者が自身のスマホを展示されている写真にかざすと、ARでスマホに当時の様子が説明される仕組みだ。

 リトアニアのエイシシュケスという街に住んでいた3000人のユダヤ人が1941年に2日間で殺害された。エイシシュケスに住んでいたユダヤ人らの写真が博物館には展示されている。スマホを写真にかざすと、そこに映ったユダヤ人の名前や当時の様子がスマホに表示される。

「殺されていった人たち一人一人に物語」

 博物館のフューチャープロジェクト担当主任のMichael Haley Goldman氏は「600万人のユダヤ人らが殺害されたホロコーストだが、殺されていった人々には一人一人に物語がある。それらをどうやって伝えていくのか?ARを活用してスマホを通じて、写真に残っている多くの犠牲者たちが、どういう人たちで、どういう生活をしていたのかといった情報を伝えていきたい」と語っている。

 19世紀にアメリカに移住してきたユダヤ人家族のクラウン・グッドマン家の寄付によって博物館でのAR展示が実現した。第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人やロマ、政治犯などを殺害したホロコースト。クラウン・レスター氏は「時代を超えて、歴史を理解することによって、現代社会での問題も理解することができる。今でも人種憎悪や民族差別の問題が世界中であり、そのような発言はSNSなどでも多く飛び交っている。博物館でのAR展示を通じて、世界中の人にホロコースト問題を知ってもらいたい」と語っている。

 2018年は映画「シンドラーのリスト」が上映されてから25年が経ち、北米では12月にリバイバル上映も予定されており、欧米ではホロコーストへの関心が集まっている。

▼アメリカのホロコースト記念博物館でのAR展示の様子

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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