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南アフリカの入国審査員、仕事中に「ながらスマホ」:入国者の顔を見ないでスマホをチェック

佐藤仁学術研究員・著述家
(Nehanda Radio, Zimbabwe提供)

 南アフリカとジンバブエの国境にある入国審査の管理局で南アフリカ側の女性係官が、入国審査の業務中にスマホを操作していた。ジンバブエ人がその入国審査での様子を動画で撮影し、SNSに拡散。動画は、南アフリカの内務大臣Malusi Gigaba氏の目にもとまり、Gigaba大臣が自身のツイッターで「迅速に職員の調査を行う」と述べた。

パスポートよりもスマホ優先の入国審査

 たしかに、この動画を見ると、女性係官はパスポートよりもスマホに集中している。スマホに意識がいっているのか、スタンプを押してから、さらにスマホを見て、既にスタンプをしたことを忘れてしまったのか、2度もスタンプを押している。入国する人の顔も見ないで、パスポート返却時も視線はスマホに行っている。

 南アフリカ内務省長官のMkuseli Apleni氏は「重要な書類を扱い注意力が必要な入国管理官の仕事中にスマホの方ばかり集中しているのは問題だ。彼女と管理職3名を処分する」とコメント。一方で内務省の労働組合は、大臣が内部での調査も無しに勝手に動画をツイッターにアップし、職員を非難したことに対して正式に抗議文書を出している。

 南アフリカとジンバブエの国境での仕事中の「ながらスマホ」は日常茶飯事で、時間がかかり多くの人がイライラしている。今回の動画の拡散も、そのイライラに端を発したのだろう。女性係官も自身がスマホ操作をしているから、動画を撮影されているのに気が付いてないようだ。

「驚くべきことではない。いつでも見かける光景」

 ジンバブエのクロスボーダー協会のKiller Zivhu氏は、今回の入国審査官の行動について「決して、新しい問題でもないし、驚くべきことではない。入国する人たちの前で、スマホでWhatsApp(日本のLINEのようなアプリ)のチャットを楽しんでいるシーンはいつでも見る光景だ。入国審査待ちの長い行列ができていても、お構いなしにスマホをいじっている」とコメントし、この問題の解決には両国の閣僚級で対応しないといけないとも付け加えていた。

 本来、入国管理局は、不審者が入国しないようにするための防波堤のような場所だ。だが、このような入国審査での「ながらスマホ」のシーンは南アフリカだけでなく、いくつかの新興国ではよく見かける。この女性係官も、たまたま動画を撮影され拡散されてしまうという不運な状況で、「みんな、やっているのに、どうして私だけ?」と思っているかもしれない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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