映画「ドリーム」とIBM:新しい技術の進化にも果敢に挑んだ黒人女性たち
セオドア・メルフィ監督作「ドリーム」(原題:Hidden Figures)が日本でも公開された。1960年代初頭、冷戦下のアメリカが舞台。ソ連との宇宙開発競争にある中、超大国の威信をかけて有人宇宙飛行計画(マーキュリー計画)を推進していたNASA。そこでの黒人の女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げた史実に基づいた映画だ。
NASAの計算部門で働く3人の黒人女性。数学の天才だったキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、管理職としてIBMコンピュータを操作していたドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、エンジニアとして活躍していたメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)の3人を軸に話は展開される。他にも多くの黒人が当時NASAで働いていたようだ。
映画の中に登場し、宇宙開発にも重要な役割を果たしているのがIBMのコンピュータだ。現在では見ることもないような初期のメインフレームだ。現在のスマホやモバイルPCとは比べ物にならないくらいの巨大な機械がマーキュリー計画を支え、アメリカ初の有人宇宙飛行に多大な貢献をした。IBMでは以下の動画を公開し、当時の状況を解説している。あまりにも巨大なコンピュータが登場し、ドアを壊すシーンも映画の中にはある。コンピュータの使い方を誰も知らなかったようで、当時は苦労の連続だったことが映画シーンからも伺える。現在のスマホの方がはるかに優秀だろう。
そして以下のIBMの動画でも紹介されているように、ドロシー・ヴォーンら黒人スタッフらは、コンピュータが導入されるまでは自力で計算していた。つまり人間が頭と手で計算することが電卓やコンピュータの役割を果たしていた。そしてコンピュータが導入されると「これからは人間の手による計算は不要になる」と悟ったドロシー・ヴォーン。新しい技術の発展を目にして「これからはコンピュータを使いこなせるようになっていかなくてはならない」とプログラミングを勉強して使いこなすようになっていき、宇宙開発に貢献していく。
ドロシー・ヴォーン役のオクタヴィア・スペンサー氏が「コンピュータが今と昔で、こんなに違うということを考えると面白いね」と語っているように数十年間でのコンピュータの進歩は本当に大きい。ハードウェア、ソフトウェアともに現在では考えられないようなものばかりだった。これから先の数十年間で、コンピュータはどのように進化していくのだろうか。
映画「ドリーム」の紹介動画(20th FOX)