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ユニセフ、アフリカのマラウイでドローンの人道支援利用:飛行ルート運用開始

佐藤仁学術研究員・著述家
(C)UNICEF/UN070228/Chisiza

アフリカのマラウイ政府とユニセフは2017年6月29日、ドローンによる人道支援利用の可能性を試験するために開設された飛行ルートの運用を開始。この飛行ルートは、アフリカ初のドローンの飛行ルートで、人道支援・開発支援の利用に特化したルートとしては世界初。

ドローンの飛行ルートは、マラウイ中部に位置するカスング飛行場を中心にした半径40km(直径80km)の管理された空域。高度制限は地上400メートル。ドローン飛行ルートは、2018年6月まで1年間運用の予定。

マラウィのジャッピー・ムハンゴ運輸・公共事業大臣は「マラウイは、長年にわたってイノベーションのリーダー的役割を果たしてきました。革新的な取り組みに対するマラウイの寛容さが、アフリカ初のドローン飛行ルート開設につながったのです。我々は、すでに洪水被害への対応の一部にドローンを活用しており、今後もたとえば医療物資の輸送など、遠隔地の集落で暮らす人々の生活に変化をもたらせる可能性もあると考えています」とコメント。

人道目的のドローン飛行ルートは、主に以下の3つの分野における検証を促進。

1.画像・映像:開発支援や人道危機対応のための航空画像・映像の撮影・分析。洪水や地震発生時の状況モニタリングを含む。

2.通信:特に緊急事態発生時に、通信が困難な地域において、ドローンによるWi-Fi/携帯電話の電波増幅の可能性の検証。

3.輸送:小型で軽量の物資、 例えば緊急用の医療物資、ワクチン、HIV感染検査用の血液などの輸送。

被災地の上空からの写真で現場の状況確認も

ユニセフのマラウイでのドローン試験は長く続けられてきた。2016年3月には、乳児のHIV感染の早期検査を実施するために、ドローンで乾燥させた血液サンプルを輸送するフィージビリティ・スタディが行われた。この調査の結果、ドローンはHIV検査に用いられると証明。そして2016年12月に本ルート開設を発表してから世界中から12の企業・大学・NGOからルート使用の申請があった。

またマラウイ政府による洪水被害対応を支援するためにもドローンの人道的利用を実施。2017年2月から4月にかけて、被災した人々のニーズ調査のため、サリマ、リロンゲ、カロンガにおいてドローンによる空撮を実施。被災したコミュニティや家族たちの状況をより迅速で、より効率的に、費用対効果が高く調査するためにドローンを活用。ユニセフでは緊急の捜索や救出活動を支援するドローン利用の可能性も模索。

ドローンによる人道支援は、まだ開発の初期段階だが、ユニセフは世界の多くの政府や民間セクターのパートナーと協力して、ドローンを低所得国で活用できるかの研究を進めている。 ユニセフ・マラウイ事務所代表のヨハネス・ウェデニグ氏によると、マラウイでは、条件が良いときでさえ、村落部への陸路でのアクセスは限られている。鉄砲水が発生すると土の道路は川になることもあり、被災したコミュニティへのアクセスは、完全に絶たれてしまうそうだ。だがドローンを使えば、簡単に被災地の上空を飛行し、現場で何が起きているかを明確に確認することができる。また衛星写真よりも安く解像度も高い。空爆や戦場でのドローン利用も多いが、人道支援分野での活用もたくさんある。

(C)UNICEF/UN070229/Chisiza
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(C)UNICEF/UN070230/Chisiza
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(C)UNICEF/UN070227/Chisiza
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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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