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利用者数はInstagramの半分:世界最速の情報伝達手段だったTwitterは原点に戻れるのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Twitterは2017年2月9日、2016年第4四半期(2016年10~12月)の決算を発表した。売上高は前年同期比1%増の7億1,000万ドル。純損失は1億6,700万ドルの赤字で、前年同期の9,000万ドルから赤字幅は大幅に拡大した。決算発表時にジャック・ドーシーCEOは「2017年は収益のあげられる製品開発に取り組んでいく」とコメントしているが具体的な策が見えているわけではない。

売上はモバイル依存、利用者は微増の3億1,900万人、Instagramの半分

Twitterの売上高のうち約90%は、広告収入である。広告の売上は6億3,800万ドルだが、米国での売上は7%減少。そして、モバイル広告が広告売上高全体に占める割合は89%。

全世界でのTwitterの月間利用者数(MAU)は前年同期比4%増の3億1,900万人で、前期からは200万人増えた。モバイルからのアクセスがMAU全体の約83%だった。

Twitterの利用者のうちアメリカ人は約6,700万人で、残りの2億5,200万人以上がアメリカ国外だ。アメリカ市場の広告売上は3億8,200万ドルと、全体売上の約60%と大きい。圧倒的に利用者が多いアメリカ以外での市場での売上高が少しずつだが増加している。

Facebook傘下のInstagramの利用者が全世界で6億人。Twitterのほぼ2倍である。Facebookの利用者が18億人なので、「SNSはFacebook一強体制」だ。Twitterは3億人を突破してから、ずっと微増のままだ。Twitterの利用者の増加傾向を見ていると、今後Twitterが急速に利用者を拡大できるとは考えにくい。日本でもタレントなどの多くは今でもTwitterを利用しているが、最近ではほとんどがInstagramへ情報発信の軸足を移している。

Twitterの売上高の推移および広告収入とその他の比率(Twitter発表資料を元に作成)
Twitterの売上高の推移および広告収入とその他の比率(Twitter発表資料を元に作成)
広告売上高の地域別推移と比率(Twitter発表資料を元に作成)
広告売上高の地域別推移と比率(Twitter発表資料を元に作成)

「Twitterは世界で最も早く情報を伝えられるツール」という原点に戻るとのことだが

ジャック・ドーシーCEOは「Twitterについて聞かない日はない。Twitterが利用されるのは、世界中の情報を瞬時に知るためであり、Twitterは世界で一番速く情報を伝達する手段。Twitterには影響力とインパクトがある。その原点に立ち返るべきだ」とコメント。だが、世界中でこれだけ多くのメッセンジャーやSNSのツールがあり、もはやTwitterでなくとも情報は瞬時に世界中に伝播できる。世界中でTwitterがなくても困る人は少ない。情報発信手段を別のSNSに変えればいいだけだ。

今回の決算発表時にも、アメリカのアナリストやメディアは「トランプ大統領がTwitterをよく利用して話題になっているから、Twitterの業績を押し上げるのではないか」という議論もあったが、そんなことあるわけがない。トランプ大統領もただの情報発信ツールとしてTwitterを利用しているだけで、「トランプ大統領の発言をTwitterでフォローしてみたいからTwitterを始めてみよう」という人が世界中にたくさんいて、Twitterの業績が回復すると本気で思っていたのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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