ドイツ:中東からの難民のトイレ利用が問題になり「マルチカルチャー・トイレ」開発を検討
2015年の1年間で110万人の移民や難民が中東や北アフリカからドイツに流入してきている。そのドイツで今、大きな問題になっているのがトイレの使い方だ。
壊されるドイツのトイレ
ドイツのトイレはいわゆる洋式である。ところが中東から来た難民は洋式のトイレを利用したことがなく、いわゆる和式のようにしゃがんでトイレを利用していた。そのためドイツに来ても洋式トイレで、しゃがんで利用してしまうため、トイレの便座を壊してしまうことが問題になっているようだ。
そして、ドイツでは「トイレの正しい使い方」という張り紙がトイレに貼られて、難民へ注意を促している。
ドイツ南部のオーデンヴァルトにあるハードハイムという村は4,600人しかドイツ人がいない小さな村だったが、1,000人の難民や移民が近隣に流入してきた。そこで村ではドイツでの生活の仕方を記した文書を作成した。「ドイツはきれいな国であり、それを維持していこう」などとトイレの利用法などの注意書きも書いてある。それを見て、またネットでは「人種差別だ」と話題にはなっているようだが、実際にゴミ捨ての問題やトイレを破壊されてしまうドイツの村からしたら大変な問題である。
現在ドイツに来る難民の多くは既に自国にいるころから、スマートフォンを利用していた。それでドイツや欧州にいる友人や知人から多くの情報を得ていたし、あるいはネットで情報収集しており、ドイツや欧州の生活事情は来る前からある程度は知っている人が多いが、トイレの利用法までは伝わっていなかったようだ。あるいはドイツの「洋式トイレでも便座の上にしゃがんで利用する」ものだ、という情報が流れていたかもしれない。
誰でも利用できる「マルチカルチャー・トイレ」
このような文化の違いによる、トイレの便座破壊が問題になっているドイツでは、最近「マルチカルチャー・トイレ」が開発が開始されたようで、これも話題になっている。いわゆる「多文化対応の誰でも利用できるトイレ」で、洋式トイレの横に台が置かれており、そこにしゃがんで、和式のように利用することもできるトイレだ。
移民や難民は自国で何年もわたって利用してきたトイレのスタイルは、ドイツに来たからといって簡単に変えることは難しいのだろう。トイレに注意書きをして、正しいトイレの利用法を促しても、それはドイツ人にとっての正しいスタイルであって、移民や難民にとっては、不慣れで正しいスタイルではない。「郷に入っては郷に従え」なのかもしれないが、毎日の習慣はそう簡単に変わらないのだろう。それなら発想を転換して、トイレの方をマルチで対応できるようにした方が手っ取り早いのかもしれない。まさに「必要は発明の母」だ。
難民らが中東にいた頃からインターネットでドイツや欧州のあらゆる情報が入手できても、中東から来た人にとってはそれが常識として受け入れることができない習慣や認識は多い。例えば「ドイツや欧州では男女平等」という情報を事前にネットで入手したり、実際にドイツに来て生活を始めても、その意識を簡単に変えることはできない。このような意識は変化するまでに相当な時間がかかるだろうが、トイレのような物理的なものだったらトイレの方を難民らの生活スタイルに合わせて変えてしまった方が早いのかもしれない。