ナチスの絶滅収容所もIngressのポータルに、Googleが謝罪し削除

位置情報ゲームアプリ「Ingress」が話題になっている。IngressはGoogleの社内スタートアップとして2013年12月にサービス提供を開始されて、全世界で1,300万ダウンロードされている。2015年8月にGoogleから独立してNianticがIngressの開発や運営を行っている。そのNianticは2015年10月15日、Google、ポケモンおよび米国子会社Pokemon Company International、任天堂から2,000万ドルの資金調達を行うことを明らかにした。まずはシリーズAの投資で、今後追加投資で1,000万ドルを予定している。

また、日本語での対応は2015年3月からのため、まだIngressを知らない人も多いかもしれないが、2015年10月16日、大日本印刷(DNP)はIngressとコラボレーションすることを発表した。同社グループの丸善・ジュンク堂書店・文教堂の計281店舗の書店がIngress内のポータルとして2015年11月初旬から登場する予定だ。他にもすでに、ローソン店舗、三菱東京UFJ銀行の店舗やATM、ソフトバンクのショップ、伊藤園の一部の自動販売機などがIngressのポータルになっており、日本でも浸透しつつある。

■ナチスの絶滅収容所もポータルにしてしまい、謝罪していたGoogle

そのIngressはゲームでナチスが第二次大戦時にユダヤ人やナチスに反対する人々を収容し、殺害した絶滅収容所もポータルとして登録され、2015年7月にGoogleが謝罪をし、すぐにそれらを削除した。アウシュビッツ(ポーランド)、ダッハウ(ドイツ・ミュンヘン近郊)、ザクセンハウゼン(ドイツ・ベルリン近郊)など欧州の複数の収容所が含まれていた。

ダッハウ絶滅収容所の生還者で95歳になるJean Thomas氏は、当時フランスからダッハウに移送された。「移送された時に100人いた仲間のうち71人がダッハウで殺された。彼らはバーチャルではない。そのような歴史的な場所がゲームの中にあることは恥ずべきことだ」と怒りを表していた。

またアメリカに拠点を持ち、ホロコーストの記録保存や反ユダヤ主義の監視を行っているサイモン・ウィーゼンタール・センターのラビ(ユダヤ教の指導者)でAvraham Cooper氏は「これは技術やゲームの問題ではない。歴史的な知識や倫理観が欠如している」と怒りを表明し、さらに若者らがネオナチのプロパガンダに繋がることへの懸念も同時に示した。

ダッハウ収容所跡地のメモリアルセンターのGabriele Hammermann氏もナチスの犠牲者、関係者に対する侮辱であるとコメントしている。Ingressに絶滅収容所がポータルとして登場し、すぐに削除されたものの、3か月経っても不快感を示している関係者が多い。

絶滅収容所の役割は財産の押収と殺害だけだった。強制労働はその過程にあっただけで、入れられたら出てくることはほぼ不可能だった。この問題は欧米では非常にセンシティブである。2015年9月には急増するドイツへの難民を収容できる施設が南ドイツにもうないことから、ダッハウ収容所跡地に一時的に収容できないかという話になり、ドイツではニュースになっていた。

Googleは「収容所は歴史的価値がある場所だからポータルにした」とコメントしていた。しかし、例えば1991年のビデオゲーム「Aryan Test」など、過去にもナチを想起するゲームやコンテンツが登場して社会問題になっていたことを忘れていたのだろうか。

「ARBEITE MACHT FREI」(労働は自由への道)とあるが、収容所の役割は財産の押収と殺害そのもので労働でなかった
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ドイツによるヨーロッパのユダヤ人の抹殺は、世界で最初の完璧な絶滅過程だった
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ダッハウ強制収容所。人種差別はまず政策であり、イデオロギーは二の次だった。
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