Yahoo!ニュース

【調査】あなたが長時間労働で奪われた生活時間は?~その回答が悲しすぎる

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

国会スタート!

 さて、国会がスタートしました。

 政府の進める「働き方改革」が大きな争点となっていますね。

「働き方」バトル白熱 改憲はかみ合わず 代表質問

通常国会が開会 首相「働き方改革を断行する」

 この「働き方改革」ですが、この中には労働時間に関するものも含まれています。

 残業代ゼロ法案とか、定額働かせ放題制度と私が呼んで批判している内容に加え(詳しくはこちらこちら)、時間外労働を1カ月平均80時間までを上限とする労働時間規制などが盛り込まれています(これも詳しくはこちら)。

 こうした法案の審議はこれから本格化すると期待していますが、現場の声を忘れないでもらいたいと思い、実際に、労働者が長時間労働によって何が奪われているのか、調べる試みをやっています。

 それは、「さよなら!「働きすぎ」キャンペーン仕事・生活実態調査」というやつで、私も呼びかけ人に名を連ねています。

 残念ながら、私もあまり宣伝していないので、まだ数が集まっていないのですが、それでも100以上の回答がありました。

労働によって奪われているあなたの「生活時間」は?

 その中で、「労働によって奪われているあなたの「生活時間」を教えてください。」という項目があります。

 回答は複数でき、回答の選択肢は次のとおりです。

  1. 睡眠時間
  2. 食事の時間
  3. 通院、リフレッシュなど健康の維持・回復のための時間
  4. 家族との時間
  5. 友人・恋人との交際時間
  6. 趣味の時間
  7. 勉強ができない
  8. 家事・育児ができない
  9. 将来について考える時間がない
  10. その他

出典:さよなら!「働きすぎ」キャンペーン仕事・生活実態調査

 で、現在のところ(回答者数108)の結果なのですが・・・

 1位は趣味の時間でした。

 これは分かりますね。予測の範囲内です。

 なお、回答数は80で、74.1%の方がこれを奪われているというものでした。

 当たり前の1位のようですが、長時間労働が消費経済にとって悪影響であることを端的に示しているとも言えます。

 2位が衝撃的というか、私は悲しくなったのですが、通院、リフレッシュなど健康の維持・回復のための時間でした(回答数70で、64.8%です)。

 長時間労働により通院ができないというのは、言われれば理解できますが、病院へ行く時間を犠牲にしてまでも働かなければならない状況というのは、やはり異常だというべきです。

 いや、この結果を見て、「あぁ、まぁね。そうだろうね。」と思ってしまう人もいるかもしれません。

 それほどに現在は長時間労働が蔓延していると言っていいでしょう。

 しかし、そうした状況こそ変えないといけないと思いますし、それは異常であると言い続けないといけないと思います。

 実は、これと似た結果は、エキタスという団体の行ったキャンペーン「#最低賃金1500円になったら」というハッシュタグで、ツイッターに寄せられた声にも多くありました。

 このハッシュタグでは、「悩まずに病院へ行ける」「ガマンしないで病院行く」「薬が買える」「検査代と薬代に怯えず病気の治療ができる」などの声が寄せられていたのです。

 こうした結果や寄せられた声を見ると、特に若年層労働者にとっては、賃金が低いので病院にかかれないという問題に加え、生活できる賃金を得るには長時間働かなければならない、そのためには病気でも休めない、という悪循環があることが分かります。

 この実態を、是非、国会議員の方には認識してもらいたいと思います。

 3位は、睡眠時間でした(回答数63、58.3%)。

 これも長時間労働とセットで、健康にも深くかかわります。

 4位は、勉強ができない(回答数51、47.2%)。

 5位は、友人・恋人との交際時間(回答数47、43.5%)。

 6位は、将来について考える時間がないでした(回答数46、42.6%)。

 これらは、長時間労働は労働者の自己研鑽の機会を奪い、かつ、自分の未来について考える気力も奪うことを表しています。

 これだと日本という国は、どんどん退化してしまうのではないでしょうか。

 また、人と人との交流の機会も奪っています。

 そりゃ、少子化にもなるよ、と思わざるを得ません。

 以上はあくまでも108個の回答結果です。

 ですので、統計的な価値はないかもしれません。

 しかし、実際に寄せられた生の回答であることは間違いありません。

 現在こそ、8時間働けば、誰でも暮らせる社会、これの実現が求められています。

 それは、消費経済にも、少子化対策にも、国民の健康増進にも、我が国の文化の発展にも寄与するはずです。

 国会論戦では、是非、労働者の現場の声も取り上げていただきたいと思います。

まだ回答できます!

 是非、回答にご協力ください。

さよなら!「働きすぎ」キャンペーン仕事・生活実態調査

イメージキャラクターの働きスギー(@no_hatarakisugi より)
イメージキャラクターの働きスギー(@no_hatarakisugi より)
弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

佐々木亮の最近の記事