Yahoo!ニュース

「セックス・アンド・ザ・シティ新章」製作者が語る第2シーズン最終回。次へのヒントはラストにある?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
キャリーとエイダンはどうなる?(Craig Blankenhorn/Max)

*この記事には「AND JUST LIKE THAT.../セックス・アンド・ザ・シティ新章」第2シーズン最終回のネタバレが含まれます。

「AND JUST LIKE THAT.../セックス・アンド・ザ・シティ新章」第2シーズンが終わった。暗いムードで、多様性への努力がぎこちなかった第1シーズンに比べ、今シーズンは「セックス・アンド・ザ・シティ」らしさが戻り、全体的に向上したと言える。エイダン(ジョン・コーベット)も再登場したし、最終話にはサマンサ(キム・キャトラル)がカメオ出演するというファンサービスもあった。

 しかし、その最終回でキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)に起こることについてのファンの反応は複雑だ。エイダンとの恋が復活したのは良いが、嫌な思い出のあるキャリーの家に足を踏み入れることを彼が頑なに拒むため、キャリーは4寝室もある家を新たに購入することにする。元妻との間に3人の息子を持つエイダンが、時には息子も連れて泊まりに来られるよう、大きな家を選んだのだ。

 引っ越す前、キャリーは仲の良い人たちを招待し、長く住んだ思い入れのある家で最後の晩餐をする。エイダンは欠席したが、パーティが終わった後にやってきて、あれほど嫌がったキャリーの家の中に入ってくる。一番下の息子がドラッグと酒を使用して交通事故を起こしたことにショックを受けていたエイダンは、そこでキャリーに対し、父親としてずっと子供たちのそばにいてあげたいと、息子が20歳になるまで会いに来られないという衝撃の宣言をするのだ。

 エイダンは「5年なんかすぐに過ぎる」とポジティブで、会えない間も君のことをずっと考えているからとキャリーを説得。キャリーも、この後何があったとしても、新しい家を買ったことと、エイダンとの関係を復活させたことは「間違いではなかった」と、エイダンだけでなく自分にも言い聞かせるかのように言い、エイダンは「何も(悪いことは)起きないよ」と優しくキャリーに言う。この展開に対して、ファンの間からは「5年も待ったらキャリーは60歳を過ぎている」「5年もの間、訪ねても行かない、訪ねられるのもダメなんてアリ?」など、疑問の声が聞かれるのである。

最後のキャリーの言葉に今後のヒントが?

 オリジナルのドラマの頃から製作と脚本を担当し、この第2シーズン最終回も書いたマイケル・パトリック・キングは、第2シーズンにエイダンを連れ戻したことについて、ちょっとだけ出すようなつもりで決めたのではないと以前に語っている。だが、エイダンと5年も会えないまま、第3シーズンをどう続けるのだろうか。エイダンにバレないからとキャリーが別の男性と付き合ったら、またもやエイダンを裏切ることになってしまう。かと言って、第2シーズンにやっとセックスが戻ってきたのに、キャリーにお相手がいないままで次のシーズンをやるわけにはいかないだろう。

 そんなキングは、このシリーズのエグゼクティブ・プロデューサーや脚本家と一緒に出演するMaxの公式ポッドキャスト「The Writers Room」の中で、彼らが考えていることのヒントは最後にちらっと出てくると明かしている。エイダンが去っていった後、キャリーとシーマ(サリタ・チョウドリー)はギリシャに旅をし、海辺でのんびりとコスモポリタンを飲む。シーマの恋人は映画を監督するために5ヶ月遠いところに行ってしまうが、キャリーの場合は5年も待つのかという話になると、キャリーは「模範的な行動のおかげでちょっと早くなるかもしれないしね」と明るく言う。「5年にはならないというのでなければそんなことは言わないだろう」と、キング。

 さらに、シーマが「もし彼らが戻って来なかったら?」と言うと、キャリーは「もっと…」と言いかけ、シーマが素早く「男(はいるということ?)」と続けると、キャリーは「いいえ、カクテルのことよ」と言って、あと2杯、コスモポリタンを注文する。これもまた、キャリーはほかの男に行かないということを示唆しているのかもしれない。

エイダンが去っていった後、キャリーはシーマとギリシャに出かける(Craig Blankenhorn/Max)
エイダンが去っていった後、キャリーはシーマとギリシャに出かける(Craig Blankenhorn/Max)

 エイダンがキャリーにとって酷な決断をしたことについて、キングはポッドキャストの中で、キャリーがエイダンを傷つける展開にはしないと最初から決めていたと述べている。またそれをやったらファンが反発すると知っていたからだ。「だから今回は彼が彼女を傷つけるんだ。彼が彼女から離れる唯一の理由は、もっと大きな愛。子供を持つ人ならみんな、子供への愛はもっと大きいと知っている。それは責任でもある」(キング)。

 キングはまた、離婚した夫婦は女性が中心になって子供の世話をすることが多いが、エイダンと元妻の場合はエイダンが主流になっているのだということを、このやりとりを通じて視聴者に伝えたのだとも語る。それは、エイダンの人柄にふさわしく、納得できる。オリジナルシリーズで最後にキャリーがエイダンに会った時、妻がお店の中にいる間、エイダンはまだ赤ちゃんだった長男を抱っこして外で待っていたし、映画2作めでも彼は息子たちへの愛を見せていた。エイダンは良いパパなのだ。

ファンの反応に注意を払っている

 キングら製作者がファンの反応に注意を払っていることは、このポッドキャストのほかの部分でも感じられた。たとえば第2シーズン最終回でミランダ(シンシア・ニクソン)とスティーブ(デビッド・アイゲンバーグ)が落ち着いて会話をするシーンについても、キングは第1シーズンでの展開に対しファンが「スティーブがかわいそう」と声を上げたことを踏まえ、「このふたりの関係に結末、いや新たな始まりを与えたかったんだ」と語っている。

ミランダとスティーブの関係には新たな始まりが与えられた(Sarah Shartz/Max)
ミランダとスティーブの関係には新たな始まりが与えられた(Sarah Shartz/Max)

 また、第1シーズンでは、新たなキャラクターがいまひとつしっくり来ず、彼らそれぞれのストーリーもそんなに面白くなかったが、このシーズンではだいぶ自然になった。そのことについて、キングは「僕たちは、連れ戻してきたい人たちを連れ戻すという大きなリスクを負った。新しいキャラクターのことをもっと知ることができたおかげで、ファンがこれらの人たちをもっと好きになってくれたことを願う」と述べている。新しいキャラクターの中でも、ミランダをスティーブから奪うチェ(サラ・ラミレス)はとりわけファンの間で受けが悪かった。この第2シーズンでチェが動物好きだったという意外な側面が描かれたのは、チェの好感度を多少なりとも上げたのではないか(それでもまだソーシャルメディアには第3シーズンにチェが戻ってくることへの不満のコメントがちらほら見られるが)。

 第3シーズンの製作が正式に発表されたのは、第2シーズン最終回配信の直前。シャーロットを演じるクリスティン・デイヴィスは第2シーズン開始前のインタビューで「あと1シーズンは作りたい」と言っていたし、第2シーズン最終回は「さてこれからどうなるのか」という雰囲気で終わるので、第3シーズンのざっくりとした方向性は、第2シーズン製作中からある程度はあったのだろう。

 猫とふたりで住むには大きすぎるあの家で、キャリーはどんな暮らしを始めるのだろうか。5年も待つことなく、キャリーはエイダンとまた愛に満ちた日々を送ることができるようになるのか。だとしたら、どんな理由で?ファンの気持ちを大切にするキングらがどんな話を語ってくれるのか、脚本家のストライキでまだ脚本作業も始まっていない第3シーズンの始まりが今から待たれる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事