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「リトル・マーメイド」、30周年を祝いハリウッド・ボウルで特別コンサート

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アリエルの歌を歌うのは「glee/グリー」のリア・ミシェル

 ディズニーと言えばアニメーション。30年代から続いてきたその伝統に、新しい流れを加えたのが、1989年の「リトル・マーメイド」だ。これを始まりに、「美女と野獣」(1991)、「アラジン」(1992)、「ライオン・キング」(1994)、「ポカホンタス」(1995)など、その後ディズニーは毎年のように傑作アニメーション映画を公開しては、大ヒットさせていっている。

 これらの映画は今、ライブアクション化され、第二の人生を歩み始めた。2019年に公開されたエマ・ワトソン主演の「美女と野獣」は全世界で12億ドルを売り上げる大成功を収めたし、今月末には「アラジン」、7月には「ライオン・キング」の北米公開が控えている。「リトル・マーメイド」もロブ・マーシャル監督で製作準備が進められているが、そんな中、オリジナルは公開からちょうど30年を迎えた。これを記念し、今週末、L.A.の名所である屋外ホール、ハリウッド・ボウルでは、「The Little Mermaid: An Immersive Live-to-Film Concert Experience」と題する特別コンサートが開催されている。

ハリウッド・ボウルの特徴である貝の形の枠組みを効果的に使って、観客を物語の世界により強く引き込んでいく
ハリウッド・ボウルの特徴である貝の形の枠組みを効果的に使って、観客を物語の世界により強く引き込んでいく

 タイトルが示すとおり、このコンサートは、ただ映画をかけながらオーケストラが生演奏するにとどまらず、空間を最大限に利用して、観客を映画の世界に引き込もうとするものだ。舞台でシンガーが歌い、ダンサーが踊る間にも、貝の形をした舞台のフレームがストーリーを語る手助けをする。昔懐かしいドライブインシアターの雰囲気を再現するのも狙いのひとつで、コンサートが始まる前には、特別に製作された「予告編」の上映もあった。それらの中には、20世紀フォックスのロゴの下にディズニーの傘下だと書かれているものがあったり、過去のヒット作品の言葉遊びをしたタイトルが含まれていたりなど、大人の観客に向けたユーモアも散りばめている。

 昨年の「美女と野獣」コンサートにはゾーイ・デシャネル、レベル・ウィルソン、ジェーン・クラコウスキーなどが出演したが、今回のキャストも豪華。アリエル役は「glee/グリー」でおなじみのリア・ミシェル、アースラにはトニー賞受賞俳優ハーベイ・ファイアスタイン。セバスチャン役を務めたケン・ペイジは、歌い始める前、30年前、アニメーション版のオーディションを受けたのに役を得られなかったというエピソードを披露してくれている。

ブロードウェイの大ベテラン、ハーベイ・ファイアスタインはアースラ役で出演
ブロードウェイの大ベテラン、ハーベイ・ファイアスタインはアースラ役で出演

「美女と野獣」コンサートで最後にサプライズ出演をした作曲家アラン・メンケンは、今回は最初からクレジットに入っていた。しかし、スペシャルゲストとしての扱いで、登場したのはやはり最後。名曲の生みの親であるこの人を待ち構えていた会場は、彼が舞台に上がると大興奮。そんなファンを前に、メンケンは「パート・オブ・ユア・ワールド」の弾き語りをしてくれている。

 1万7,500人を収容できる大きさをもつこの会場は、初日であるこの夜、ほぼ満員の状態。コンサートに先立ってコスチュームコンテストもあったが、舞台に上がらなかった人の中にも、アリエルをはじめとしたキャラクターの衣装を着た人が数多く目についた。中にはかなり手の込んだものもある。筆者の隣に座っていた大人の女性ふたりは、歌はもちろん、映画のセリフも完璧に覚えていたし、この作品の根強い人気をあらためて実感させられる夜だった。この熱狂は、2日目で最終日である今晩も、続きそうだ。

(写真はすべて筆者撮影)

作曲家アラン・メンケンは映画が終わった後に出演、ピアノで弾き語りをしてくれた
作曲家アラン・メンケンは映画が終わった後に出演、ピアノで弾き語りをしてくれた
L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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