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あの人は今:かつて注目されたハリウッドスターのその後

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
26年を経てデビッド・リンチとまたもや組み、久々に話題を呼ぶカイル・マクラクラン(写真:ロイター/アフロ)

26年を経て、「ツイン・ピークス」がアメリカのテレビに復活した。月々の会費が必要なプレミアムケーブルチャンネルShowtimeでの放映で、この続編の放映開始時には、記録的な数の入会申し込みがあったそうだ。だが、視聴率のほうは、まあまあといったところ。オリジナルの放映があまりにも昔すぎて、30代かそれ以下の若者にとっては、ぴんと来ないからかもしれない。

26年後に思い出の役を再び演じる機会を得られるなんて、ハリウッドでもめったにないことだ。視聴者には、懐かしいという気持ちと同時に、「この四半世紀の間、この人たちは何をしていたんだろう」との思いもよぎる。カイル・マクラクランは「SEX AND THE CITY」や「デスパレートな妻たち」などのドラマに出演したし、シェリル・リーは、ウディ・アレンの最新作「カフェ・ソサエティ」に小さな役で出たが、クーパー捜査官やローラ・パルマーのような運命の役には、 めぐりあってこなかった。

それでも、彼らも、ほかのキャストも、テレビドラマのゲスト出演や、映画の助演などで、地道に役者のキャリアを続けてきている。注目の人として騒がれても、その勢いがいつまでも続くとは限らないのが、ハリウッドの現実。天狗になることもなく、まじめにやってきても、いつしか忘れられてしまう存在になることのほうが、むしろ多い。たとえば、この人たちだ。

ヘイデン・クリステンセン

2005年の「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」で大ブレイクし、兄がプロデュースを手がける「ニュースの天才」でも評価されたが、シリーズ化を視野に入れていたアクション映画「ジャンパー」(2008)の失敗以来、スクリーンでほとんど姿を見かけなくなる。2011年から2013年にかけての丸3年間は、まったく何にも出ていない。しかし、今年4月、フロリダ州オーランドで開かれた「スター・ウォーズ」ファンイベントでは舞台に上がり、撮影中の微笑ましいエピソードなどを披露してくれた。

「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」の後、トロント北部に農場を購入しており、近年はそこで時間を過ごしていたようだ。2008年の筆者とのインタビューでも、「犬が大好きで、自分の犬を飼いたいんだが、ロケが多くてなかなか無理だった。だから、この農場で、犬に囲まれて暮らしたいんだよ。飼い始めの2ヶ月くらいは、一生懸命世話をしてあげなきゃいけないから、仕事は休まないとね」と言っていたが、休みは思ったよりも長く続いたようである。しかし、最近になってまた演技への情熱が復活したようで、この後、ハーベイ・カイテルと共演するスリラーや、エマ・ロバーツ共演のロマンチックコメディなどが控えている。

エステラ・ウォーレン

シンクロナイズドスイミングのチャンピオン、シャネルの香水のモデルなどを経て、シルベスタ・スタローン主演の「ドリヴン」(2001)に出演。続いてティム・バートン監督から超大作「PLANET OF THE APES 猿の惑星 」(2001)の役をオファーされるも、演技力への評価は、決して高くなかった 。2003年にはジェリー・ブラッカイマー製作の「カンガルー・ジャック」に出るが、以後、話題に上ることはほとんどなくなる。しかし、テレビドラマに1話だけゲスト出演をしたり、低予算のインディーズ映画に助演で出たりするなど、今も演技は続けている。

キップ・パルデュー

一時、日本では“次のブラッド・ピット”とも呼ばれたイケメン。デンゼル・ワシントン主演のヒット作「タイタンズを忘れない」(2000)の日本公開よりも前に、日本にファンクラブができていた。翌年の「ドリヴン」では、スタローン、ウォーレンと共演。 その後、「ルールズ・オブ・アトラクション」(2002)でケイト・ボスワースやジェシカ・ビールらと共演し、2003年にはキャサリン・ハードウィック監督の話題作「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」に出るが、その後はこれといった作品に恵まれず、「ER緊急救命室」「MAD MEN  マッドメン」「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」などテレビドラマにゲスト出演をするなどしてきている。現在も、Huluで来年配信予定のシリーズ「Runaways」を撮影中だ。

ブランドン・ラウス

ブライアン・シンガー監督の「スーパーマン リターンズ」(2006)で主役に大抜擢された時、ラウスは姉の家を住ませてもらい、バーテンダーの仕事をしながら、オーディションを受け続けていた。「スーパーマン〜」公開時、彼は、「もうバーテンダーをやらなくていいのは、すごく嬉しい。この役の最初のオーディションから、実際に役がもらえるまでに、7ヶ月もかかっている。その間、僕は毎晩、『今日こそ最後だ』と自分に言い聞かせながら、客のためにカクテルを作り続けていた」と、無名時代を振り返っている。今作はシリーズ化される計画で、長年にわたる定職を手に入れたと思えたが、興行成績が期待に達しなかったことから、ラウスのスーパーマンは、これっきりとなってしまった。

その後は、小さな役で出た「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(2010)くらいしかめぼしい作品はなかったが、近年は、テレビドラマ「ARROW/アロー」「THE FLASH/ザ・フラッシュ」「レジェンド・オブ・トゥモーロー」に、レイ・パーマー役で出演するという、そこそこ手堅い仕事を得ている。

ところで「スーパーマン〜」でお相手役ロイス・レインを演じ、当時はファッションアイコンのひとりでもあったケイト・ボスワースも、2008年の「ラスベガスをぶっつぶせ」以後は、目立った作品がほとんどない。強いて言えば、ジュリアン・ムーアをオスカーに導いた「アリスのままで」(2014)に娘役で出たくらいである。

ブレンダン・フレイザー

ラウスと違い、フレイザーの「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999)はヒットし、続編が2本作られている。ほかに、オスカーを受賞した「クラッシュ」(2004)や、ファミリー映画「ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション」(2003)などで活躍したが、「小さな命が呼ぶ時」(2010) 以後は、これといった作品がない。「センター・オブ・ジ・アース」(2008)の続編にも、彼は出なかった。2013年には、収入が激減したことを理由に、元妻への元配偶者サポートを減額してほしいと裁判所に訴えている。

やや皮肉なことに、トム・クルーズ主演でリブートされた「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」の北米初週末成績がフレイザーの「ハムナプトラ」3作のどれにも及ばなかったことから、ここ数日は、それらの比較で、彼の名前がまたちらほら聞かれる。

レイチェル・リー・クック

高校を舞台にした恋愛映画「シーズ・オール・ザット」(1999)でスターの仲間入りをし、翌年の「追撃者」ではシルベスタ・スタローンと共演。2001年には「シャンプー台のむこうに」「テキサス・レンジャーズ」「Josie and the Pussycats (日本未公開)」「Tangled(日本未公開)」の4本が公開され、キャリアのピークを迎える。「Tangled」ではプロデューサーも兼任するが、4本ともヒットせず、勢いはそこで終わってしまった。しかし、継続的に何かに出てはいるようである。

2004年に俳優ダニエル・ギリスと結婚し、ふたりの子供をもつ。

ジョシュ・ハートネット

「シャンプー台のむこうに」でクックと共演したハートネットにとっても、2001年には重要な年だった。この年、彼は「パール・ハーバー」「ブラックホーク・ダウン」に出演。ヒットこそしなかったものの、「ハリウッド的殺人事件」(2003)ではハリソン・フォードと共演した。続いてロバート・ロドリゲス監督の「シン・シティ」(2005)、ブライアン・デ・パルマ監督の「ブラック・ダリア」(2006)など話題作に出るが、サム・ライミ製作のホラー「30デイズ・ナイト」(2007)以降のプロジェクトは、ほとんど話題になっていない。

人気絶頂期には、スカーレット・ヨハンソンとつきあっていることでも世間の関心を集めた。2012年からは、イギリス人モデルで女優タムシン・エガートンと交際。2015年に長女が誕生、現在は第2子がエガートンのお腹にいる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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