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新ハン・ソロに抜擢されたアルデン・エーレンライクとはどんな人?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ハン・ソロ役に抜擢されたアルデン・エーレンライク(写真:ロイター/アフロ)

若き日のハン・ソロを描く「スター・ウォーズ」シリーズのタイトル未定映画の主演に、アルデン・エーレンライクが選ばれた。米西海岸時間5日(木)夜の報道を受け、これまでほぼ無名だった彼の名前が、突然にしてメディアに飛び交っている。

エーレンライクは、ロサンゼルス生まれの26歳。14歳の時、バト・ミツワー(成人を祝うユダヤの伝統的な儀式)で彼が出演するふざけたビデオが上映されたことが、デビューにつながった。その席には、偶然にもスティーブン・スピルバーグが出席していたのである。エーレンライクに言わせると、そのビデオはひどいもので、両親に「こんなものを人様に見せるな」と言われたらしいが、スピルバーグはそこに何か光るものを見たということだろう。スピルバーグの勧めでドリームワークスのキャスティング・ディレクターは彼とのミーティングをもうけ、エージェントについてもらえることになった。

スピルバーグの推薦のおかげで、2005年には、テレビドラマ「Supernatural」にゲスト出演。2009年には、フランシス・フォード・コッポラの「テトロ 過去を殺した男」に、ヴィンセント・ギャロの弟役で出演した。2013年にはリチャード・ラグラヴェネーズ監督の「ビューティフル・クリーチャーズ 光と闇に選ばれし者」に主演。結果的にはコケてしまったのだが、若者向け人気小説を原作にした今作はヒットが期待されていた作品で、主演の座を手にしたのはすごいことだった。同年には、ウディ・アレンの「ブルージャスミン」とパク・チャヌクの「イノセント・ガーデン」にも出演。最新作は、13日に日本公開となるジョエル&イーサン・コーエン監督の「ヘイル、シーザー!」だ。

「ヘイル、シーザー!」のエーレンライク(左)
「ヘイル、シーザー!」のエーレンライク(左)

次回公開作は、ウォーレン・ビーティが監督するタイトル未定の映画で、共演はリリー・コリンズ、アレック・ボールドウィン、マシュー・ブロデリック、アネット・ベニングら。最近は、戦争映画「The Yellow Bird」を撮り終わったところ。共演はジェニファー・アニストン、ジャック・ヒューストンら。

最終的にはアンドリュー・ガーフィールドに負けたが、「アメイジング・スパイダーマン」で、ピーター・パーカー役の最終候補に残った実績もある。ワーナー・ブラザースが製作するハリウッド実写版「AKIRA」の鉄雄役の最終候補にも上がっていたようだが、企画は難航したままの状態だ。

世界中で熱烈に愛されてきたハン・ソロを演じるというのは、当然のことながら、彼にとってキャリアの転換期を意味する。この役のために、ディズニーは2,500人ほどをオーディションしたと言われている。最後に絞られた数人の中には、ジャック・レイナー(『トランスフォーマー/ロストエイジ』、)デイブ・フランコ(『グランド・イリュージョン、』)タロン・エガートン(『キングスマン』)などがいたようだ。

もちろん、誰もがこのニュースに喜んだわけではない。発表を受けて、ツィッターには、「この男は全然ハン・ソロに見えないのに、ハン・ソロのオリジン映画に主演するのか」「ディズニーが新しいハン・ソロを発表したせいで、僕の1日は台無しになった」「ハン・ソロ映画を作るのはキャンセルして」などのメッセージが投稿された。有名なキャラクターを新しい俳優が演じる上で、こういった反対意見は避けられない。本当の勝負は、これからである。

このハン・ソロ映画は、1977年に公開されたエピソード4以前のハン・ソロを描くもの。監督は「LEGO (R)ムービー」のフィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビ。ストーリーは極秘に包まれているが、チューバッカは重要な役で登場するようだ。北米公開は2018年5月28日。

エーレンライクは、遅くなってから候補に加えられて見事に役を獲得したらしいが、実はハリソン・フォードも、最初はまるで候補に含まれていなかったという裏話がある。フォードは、候補の俳優がオーディションするせりふ読みの相手役として雇われていたのだが、ジョージ・ルーカスは、彼の皮肉めいた読みをおもしろいと感じ、最終的に彼に役をオファーしたということだ。その後、フォードのキャリアがどんなふうに羽ばたいていったかは、もはや語るまでもない。新しいハン・ソロにも、同じようなキャリアが待ち受けているのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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