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全米初の保護犬カフェがL.A.にデビュー。オーナーは韓国育ちの22歳

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
オーナーのサラ・ウルフギャングさん。撮影/猿渡由紀

猫カフェもまだ一軒もないL.A.に、全米初の保護犬カフェがデビューした。名前は、The Dog Cafe。グランドオープニングからたった1週間だが、予約を取らないと入れないほどの盛況ぶり。本日の段階では、10日以上先の26日(火)まで、空きはいっさいない。予約なしで来た人が、外から窓ガラスを通じて中を覗く姿も多く見受けられる。

時間待ちの人たち
時間待ちの人たち

法律のせいもあり、日本とは違って、飲み物を出すショップと、犬と遊べるラウンジは、隣合わせながら、別の店となっている。予約客は、まずコーヒーショップでチェックインをし、予約時間の書かれたシールを取得。10ドルの入場料には、コーヒー、紅茶、またはレモネード1杯が含まれている。客はそのドリンクを持って、指定された時間に、隣の犬ラウンジに入るというシステムだ。入場は1時間ごとの入れ替え制。筆者は午後2時の回に入れてもらうことになり、10分ほど前に到着したが、同じ頃到着する人で駐車場は大混雑で、コーヒーショップのレジの前には、チェックインの長い列ができていた。

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ラウンジにいる犬はすべて、地元の保健所から選ばれてきた捨て犬たち。とくに気に入った犬がいれば、客は、養子縁組をリクエストすることができる。ほかに、店の閉店後に引き取り、朝にまた店に連れ帰る“フォスター・プログラム”もある。もちろん、誰もが飼い犬を探すつもりで来ているわけではなく、「犬好きだけど、犬が飼えないから、せめてここで犬と時間を過ごしたい」という人も、たくさんいる。

インテリアは、極めてシンプル。犬が歩き回る中、客は椅子や床に座って、それらの犬をなでたり、だっこしたりする。スペースがそれほど広くないこともあってか、筆者が訪れた日にいた犬はほとんどが小型犬だった。だが、みんな人が好きな犬で、喜んで近寄って来る。客は自分たちでもせっせとスマフォで犬の写真を撮っているが、部屋の中には、犬とのツーショットを撮ってもらえる設備も備えられている。特定の犬に関する質問があれば、その場にいるスタッフが親切に答えてくれる。

シンプルだがリラックスできる犬ラウンジ
シンプルだがリラックスできる犬ラウンジ

創業者でオーナーのサラ・ウルフギャングさんは、アメリカ生まれの22歳。両親の仕事の関係で、16年を韓国で過ごし、韓国語も完璧に話せる。彼女にまず聞かれたのは、「日本には猫カフェがたくさんあると聞いているけれど、保護犬カフェはあるのかな?」ということ。韓国では保護犬カフェが大人気で、ペットを飼えない家に育ったサラさんは、頻繁に通ったという。その後、動物愛護団体の活動にも携わり、「良い面も、悪い面も」学んだ。アメリカに戻るにあたり、良い面だけを活かせるような何かをしたいと考え、このカフェが生まれたというわけだ。

犬のほとんどは小型犬
犬のほとんどは小型犬

養子縁組は重要な目標のひとつながら、この部分に関しては、相当に慎重なルールを守っている。先週のグランドオープニングに先駆け、4ヶ月ほど静かに仮オープンをしていたが、その間に成立したのは3組だけ。しかし、それらはすべて「完璧な縁組だった」とサラさんは誇らしげに語る。衝動的に欲しいと思ったり、犬にふさわしくない環境に住んでいたりする人が引き取ることを避けるため、申込書で多数の質問がなされ、さらにスタッフがその家を訪れて様子をチェックするという段階が組まれている。その結果承認されても、最初の2週間はトライアル期間だ。「せっかく家を見つけたと思った犬が、また別のところに移されたり、シェルターに戻ったりするような事態は、絶対に避けたい。それは、犬にとって、辛すぎることだから」とサラさんは語る。

ゆくゆくは、全米のほかの都市にも展開していきたいというのが、サラさんの夢。「投資家が付いてくれるかによるけど」と言うが、すでに国内のいろいろなメディアに取り上げられているだけに、目をつけている投資家がいてもおかしくはない。幸せな犬と幸せな人間を増やすこのビジネスが成長するのは、社会にとっても素敵なことではないか。

The Dog Cafe

240 N. Virgil Ave. Los Angeles

thedogcafela.com

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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