2019年4月15日、火災のために大きなダメージをうけたパリのノートル・ダム大聖堂。

大聖堂の周りには100本以上の新しい木が植えられ、観光客に安らぎを提供する場所に生まれ変わります。

6月28日、大聖堂の周囲をどのように設計するかについて、4つの最終候補の中から、ベルギー人景観設計士バス・スメッツ(Bas Smets)さんのプロジェクトがパリ市庁舎によって選ばれました。

大聖堂の周辺は庭園として30%以上緑化されます。今まで駐車場だった地下は、セーヌ川に面した新しい地下受付が設けられる予定です。

スメッツさんは、大聖堂の前の中庭は、小さな森の中の「空き地」のように見えるだろうと語りました。

気候変動の時代に合わせた空間づくり

暑い日には、前庭に5ミリもの薄い水平の噴水(というより、薄い水の層)が流れることになります。

スメッツさんによると、ヒートアイランド現象をできるだけ抑える効果ももっており、表面温度を最大10度下げることができるとのこと。雨水を地下に貯留して使うという、すでに街角で伝統的に使われているシステムでの非飲料水を使います。

この暑い日に水のせせらぎで広場を冷やすというアイデアに、審査員たちは魅了されたとのことです。技術者のフランク・ブテさん(Neufville-Gayet Architectes)は、「空と大聖堂との反射の遊び」が、特定の宗教的瞬間にも有効であることを否定していません。

スメッツさんは、この壮大なゴシック建築の前庭は、小さな森の中の「空き地」のように見えるだろうと語りました。

パリ市長のアンヌ・イダルゴさんは、市の中心部に緑地を増やすことに重点を置いてきました。

彼女が繰り返し述べてきたように、このプロジェクトには「遺産を保存する絶対的な義務」に従い、既存の建築物にできるだけ手を加えないという制約があります。同時に、「気候上の必要性、それなしではパリという都市に住むことができなくなる」ような緑の実現を目指したのです。

さらに、宗教施設であり、大量に観光客が押し寄せる場所であり、パリ市民の誇りでもあるという難しさがありました。

バス・スメッツさんは「私たちのプロジェクトは、非常に都会的な姿を、気候的な姿へと進化させることにあります」と語りました。

ノートル・ダム大聖堂一帯の修復は、気候変動の時代に合わせた、新しいパリの姿の象徴的なものになるのです。

大聖堂の裏側は三角形の形をしている。ここは一般開放される庭になる。Studio Alma / Groupement BBS提供(以下同)
大聖堂の裏側は三角形の形をしている。ここは一般開放される庭になる。Studio Alma / Groupement BBS提供(以下同)

上の写真のように、大聖堂の裏側、現在生け垣や門で仕切られている部分は、オープンガーデンになります。そこで憩う人たちは、美しいステンドグラスの窓や控え壁を鑑賞できるようになるでしょう。

そしてノートルダム大聖堂の南側の庭園は、長さ400mの公園として開放されます。

南側、セーヌ側沿いは、以前より開放感がある空間に。
南側、セーヌ側沿いは、以前より開放感がある空間に。

一連の工事は、Grau Architects都市計画建築会社とNeufville-Gayet Architectes 遺産専門の建築会社と共に行われる。

観光客に便利なレセプション・エリア

前庭の下にあったさびれた地下駐車場は、前々から改修が必要だと言われていた所です。ここは、広々としたレセプション(受付)・エリアに生まれ変わり、地下聖堂やセーヌ川にアクセスするための通路が設けられる予定です。

レセプション・エリアとは、手荷物サービス、トイレ、カフェテリア、文化施設などのことです。訪問者が欧州で一番多い建造物と言われていながら、これらが圧倒的に不足していたのです。

地下にそのような施設や入り口が設けられるスタイルは、ルーブル美術館に似ることでしょう。ただし、店舗はありません。

典礼上の点で、地下から教会に入ることは問題ないということですが、メインの入口は変わらず、今までと同じように外の正面から入ることになります。

これらの5000万ユーロの壮大なプロジェクトは、パリ市が負担します。

2024年のパリ五輪を目指して

工事は2027年までに完了する予定ですが、その前に、2024年4月の火災の記念日に合わせて教会の礼拝を再開することを予定しています。

屋外工事の最初の部分はそれまでに完成するように進められています。これはパリ・オリンピック&パラリンピックに間に合う日程でもあります。

バス・スメッツさんのチームは、南仏アルルのルマ通りにあるアトリエ公園を手がけた経験があり、ブリュッセルの中心街のデザインにも選ばれたことのある実力者です。

ノートル・ダム大聖堂を見るたびに、少しずつ修復が進んでいくのを確認できるのは、パリに住む者には大きな喜びでした。コロナ禍にあっても工事は進み、建物のセーヌ川沿いの大きな覆いが取れたときには、顔がほころんだものでした。

人々は、大きな悲しみと怒りを経験しました。私はキリスト教徒ではない、パリに住む一外国人に過ぎませんが、それでもとても大きな傷みを覚えました。本当にたくさんの人達の力を得て、一層美しくなって生まれ変わる大聖堂一帯を見て、どんなに人々は喜ぶことでしょう。

世界の叡智を吸収しながら美しいものを創らせることにかけては、右に出る者はいないのではないかと思わせるフランス人ですから、きっと素晴らしい空間が出来上がることでしょう。2024年が楽しみです。