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テレビ生中継で抗議のロシア人ジャーナリスト「私は国に残ります」。亡命の援助を断る。

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
本人出演のYoutubeより、筆者撮影

「私は、母国を離れたくないと思っています。私は愛国者です」と、マリーナ・オヴシアニコワさんは語った。

ドイツの雑誌『シュピーゲル』のインタビューで語った。

マクロン仏大統領は15日に、前日の夜に生中継のニュース番組で抗議活動をした彼女に対し、大使館での「領事保護」、または亡命の許可を提供する用意があると述べた。

彼女は逮捕された後、罰金刑を受けて釈放されている。しかし、ロシア軍に関するあらゆる「虚偽の情報」を罰する最近の法律により、依然として最高で禁固15年となる重い実刑判決を伴う、刑事訴追を受ける可能性がある。

彼女は、ウクライナ人の父とロシア人の母の間に、オデッサで生まれた。

オヴシアニコワさんは、「何よりもまず、平和主義の行動を取りました」と考えており「この戦争をできるだけ早く終わらせることが、ロシアと世界のためになる」と言った。

「また、この戦争に、ロシア人も反対していることを示したかったのです。欧米の多くの人がわかっていないことですが。知的で教養のある人々の大半が、この戦争に反対しています」と彼女は言った。家族にも友人にも内緒で、一人で行動を準備したという。

「全国ネットのテレビ局に勤めている人の多くは、何が起こっているのかよく理解しています。自分たちのやっていることが間違っていることを、彼らはよく知っているのです。彼らは宣伝に熱心なわけではなく、しばしばそうでないこともあります」という。

「しかし、同僚たちは家族を養わなければならないし、現在の政治情勢では次の仕事が見つからないことも知っています」とも語る。

彼女は、国営放送のロシア人ジャーナリスト数人が、情報規制に反対してここ数日で辞職したことを「うれしい」と言っている。『ル・モンド』が伝えた。

しかし、ロシアは、もう今までのロシアではない。

ロシアは、15日に、欧州の人権保護などを目的とした国際機関「欧州評議会」を脱退した。今まで反体制政治家のナワリヌイ氏などが、毒殺されそうになりながらも生きており、収監中の彼の発言が世に公表される機会があったのは、この欧州評議会の存在があった。

ここでの人権侵害などの訴えを通して、欧州評議会のメンバーたちが目を光らせていたのである。加盟国だったロシアは、まったく無視する訳にはいかなかったのだ。

しかし、ロシアは脱退してしまった。もう公然と無視できるし、「これで死刑が復活できる」と述べた政治家すらいた。そして罪状は、いくらでもでっちあげられる。

国に残りたいという気持ちはわかるし、立派だと思う。でも、一体次に何が起こるのか。私は彼女の身が大変心配である。若い女性だし、男性とは異なる被害の可能性もあるのではないか。不安を少しでも感じたら、いつでもフランスに逃げてきてほしい。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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