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【速報】ポーランド等、NATOに武装した「平和ミッション」をウクライナに設置することを要請

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
@ragipsoyluのツイートより。筆者がスクリーンショット

3月15日(火)から、 ポーランド、チェコ、スロベニアの3カ国の首脳陣が、ウクライナの首都キエフ(キーウ)を訪問、ゼレンスキー大統領と会談した。

ポーランドは、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに「軍隊に守られた」「平和ミッション」を設置することを望んでいると、同国のカジンスキー副首相が火曜日の夜、キエフで述べた。フランスのメディアが複数、速報で伝えている。

カジンスキー氏は「このミッションは、武装解除されたミッションであってはならない。ウクライナの人道的・平和的支援を模索しなければならない」と述べたと、ポーランド通信社PAPの報道は伝えている。

カジンスキー副首相は、ポーランドのモラビエツキ首相、チェコのフィアラ首相、スロベニアのヤンシャ首相とともに、ウクライナのゼレンスキー大統領とシュミガル首相との、夜の会合に参加した。

2月24日にロシアの攻撃が始まって以来、外国の首脳がキエフを訪れるのは今回が初めてである。

ポーランドの与党の保守党党首でもあるカジンスキー副首相は、以下のように詳細を述べた。

「NATOの平和ミッション、場合によっては、もっと大きな国際機構の平和ミッションでなければならないと信じている。しかし、自己防衛ができているミッション、ウクライナの領土で行動するミッションであり、それはウクライナの大統領と政府の同意を得て、この国の領土におけるものとなるだろう。そして防衛無しのミッションではないだろう」

さらに、このミッションについて「平和を確立し、人道支援を提供できるように努力するが、同時に適切な軍隊、武装勢力によって保護されるだろう」と付け加えた。

この3国の首脳の訪問は、金曜日にフランスのベルサイユ宮殿で開かれたEU首脳会議によって決まったと報道されていた。

ロイターの報道によれば、EU当局者は、今回の訪問が有効なイニシアチブとしつつも、EUが課した「公式な任務」ではないとしたという。

国連の平和維持軍は、常任理事国であるロシアの反対票によって行くことができないのは、目に見えている。

それならばNATOで、ということだろう。

過去にNATOとロシア軍の兵士は、共にNATOが主導する平和維持活動で働いたことがある。バルカン半島での活動は、当初はボスニア・ヘルツェゴビナで行われ、そしてコソボでも行われた(「バルカン半島に平和をもたらすために、NATOとロシアは共にパートナーとして」と・・・。NATOとロシアには、そんな時代もあったのだ)。

当初、この3カ国の首脳がウクライナに赴いたというニュースが入った時に「変な組み合わせだな」と思った。そのことは、ヤフーニュースのコメントにも書いた。

何が一番奇妙だと感じたかというと、今までウクライナ支援に大変熱心だったリトアニアが入っていないことだ。リトアニアとポーランドは、ウクライナの西側と歴史的に縁が深い。それに、他のバルト国(エストニア、ラトビア)もいない。

さらに、今まであまり東方拡大の問題には大きく関わらなかったスロヴェニアが入っている。一層奇妙なのは、チェコは入っているのに、ハンガリーとスロバキアという、ウクライナの隣国が入っていない(ハンガリーのオルバン政権はわからないでもないが)。

気になるニュースとして、同日15日には、ロンドンで北欧諸国とバルト国の10カ国連合「合同遠征軍(JEF)」の首脳会議が開かれている。これはNATO内のイニシアチブではあるが、バルト3国の首脳はこちらに行ってしまっていた。

何かこのロンドンの会議と関係があるのだろうかと、いぶかっていた。偶然なのかもしれないが、今このニュースを聞いて謎が溶けた思いがした。

今回の提案は、一つ間違えると、軍事的に危険なものになりかねない。だから、旧ソ連に属していたバルト3国、ならびにウクライナと国境を接している国々は、今回の訪問に参加しなかったのだと思う。チェコとスロヴェニアは、ウクライナと国境を接していない。

そう考えるとよけいに、EUの公式の任務ではないが、有効なイニシアチブだと語ったEU側の発言も、納得できる。

そんな中で、隣国の中でポーランドだけは、自ら主導的役割を果たしたのだ。東欧の民主化の雄であり、EU大統領(正確には欧州理事会議長)のトゥスク氏も輩出、東方パートナーシップの主導国の一つでもあった、ポーランドのリードが際立っている。

(余談だが、日本に直行便が来ている東欧の国は、ポーランドだけである)。

この提案をプーチン大統領は聞き入れるだろうか。

私は、オデッサをロシア軍が奪取した後ならば、もしかしたら可能性がないわけではないかもしれないと考える。しかし、予測は難しい。悲観的で申し訳ないが、今まで(悪い方に)外れることが多い。

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欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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