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勝利宣言をしたスタージョン党首。独立への思いを語る:スコットランド議会選挙

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
選挙キャンペーン中のニコラ・スタージョン党首。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

5月6日、スコットランドの議会選挙が行われ、8日に結果が判明した。

スコットランド国民党は、合計64議席を獲得。過半数にはあと1議席足りなかったものの、記録的な勝利をおさめた(以下、国民党)。

選挙区票では48%、リスト票では40%を獲得し、投票率も約10ポイント上昇したのだ。

同党のニコラ・スタージョン党首は、今回の選挙結果を「並外れた歴史的偉業」と表現した。2007年に同党が初めて政権を獲得した時には、「今回の選挙における私たちの勝利の規模の大きさと記録的な性質を、誰も予測しなかったでしょう」と述べた。『スコッツマン』が報じた。

定数129。過半数65。カッコ内は前回2016年の結果との比較

スコットランド国民党 64(+1)

保守党 31(変化なし)

労働党 22(−2)

緑の党 8(+2)

自由民主党 4(−1)

スコットランド緑の党は、選挙前に、国民党と共に「独立を問う2度目の住民投票」を進める事を公約している。同党は2名増の8名の候補者が当選した。国民党の64議席と合わせて、72議席となった。これで独立派政党は、全議席の約56%を占めることになった。

スタージョンの勝利のスピーチ、独立への思い

党首ニコラ・スタージョン氏は、2回目の独立住民投票を邪魔しようとするロンドンのウェストミンスター議会の政治家たちは、「我が党にケンカを売っているのではなく、スコットランドの人々の民主的な願いにケンカを売っているのだ」と宣言した。

彼女は勝利のスピーチで、以下のように述べた。

私たちは(73定員の小選挙区のうち)62で議席を獲得しました。これは記録的な数字で、全体の85%という驚異的な数字です。私たちは、2016年に獲得したすべての小選挙区で議席を維持しただけでなく、労働党と保守党の両方から議席を獲得しました。

実際私たちは、分権の歴史の中で、小選挙区の投票で、どの政党よりも多くの票を獲得し、高い率を誇っています。

木曜日に行われた投票で、スコットランドが何に投票したのかを明確にしましょう。スコットランドの人々は、独立派の政党がスコットランド議会で過半数を占めるように投票しました。前回の議会より、今回の議会の方が、より大きく過半数をとっているのです。

国民党と緑の党は、次の議会の期間中に、独立の是非を問うという明確な公約を掲げました。そして、私たちは両党とも、住民投票のタイミングは、スコットランド議会の議員の単純過半数によって決定されるべきだと述べました。

住民投票は、私や国民党の要求ではありません。これは、来週私たちの国民議会(national parliament)に着任する議員の過半数が、人々に約束したことなのです。

スタジョーン氏は「通常の民主主義の基準」では、「ボリス・ジョンソンやその他の人物が、スコットランドの人々が自分たちの将来を選択する権利を妨げようとすることは、民主的には全く正当化されない」と述べた。

もしそのような試みが行われたら、英国は対等なパートナーシップではなくて、驚くべきことに、ウェストミンスター(ロンドンの議会)はもはや、英国を自発的な国家連合とは見ていないということを決定的に示すことになるでしょう。このこと自体が、独立を求める非常に強力な論拠となるでしょう。

独立を支持する私たちに課せられた使命は、仲間である市民を辛抱強く説得することであり、それが国民党の意図することです。

対決姿勢を見せる保守党

一方で、スコットランド保守党は、すでに対決姿勢を見せている。同党は、前回と同じ議席数を維持した。

同党の党首であるダグラス・ロス氏は、保守党が得た選挙結果が示しているのは、人々は議員たちに「共に働く」のを求めている事だとしながらも、国民党を批判した。

予想どおり、ニコラ・スタージョンはすでに分裂を煽っています。

数時間のうちに、彼女は有権者との約束を破り、すでに再度の住民投票を要求しています。

私たちの約束は、スコットランド保守党への投票は、国民党が過半数をとるのを阻止するための投票となるということでした。そうすることでindyref2(=independence referendum 2の略 = 2度目の独立住民投票)を阻止し、コロナ禍からの復興に100%焦点を戻すというものです。

このような批判に対して、スタージョン氏は、野党は「すでに、民主主義の基本的なルールを書きかえ、選挙での勝利とは何か、独立のための委任とは何かを再定義しようと必死になっている」と、批判を返した。

スタージョン氏は、コロナ禍がおさまるまでは、住民投票は行わないと選挙前から明言している。「すぐに仕事に戻り、いつもの生活に戻って、そして回復に向けての次のステップを導く決定をすることになるだろう」と述べている。

票を伸ばした緑の党

今後、共同歩調をとる事になるスコットランド緑の党の、共同党首ローナ・スレーターは、同党が「記録的な結果」を得たと言った。

「スコットランド緑の党が大変重要な役割を果たしたことで、有権者は、スコットランド議会に、独立支持派が多数を占めることをもたらしました。そして、ボリス・ジョンソンは、この民主的委任を認識する義務があります」と勝利の弁を述べた。

緑の党のローナ・スレーター共同党首。カナダ出身で、再生可能エネルギーのエンジニア。気候変動の研究のために南極への旅行経験もある。同党のyoutubeより。
緑の党のローナ・スレーター共同党首。カナダ出身で、再生可能エネルギーのエンジニア。気候変動の研究のために南極への旅行経験もある。同党のyoutubeより。

女性議員の数が大幅に増える

スタージョン氏も、スレーター氏も女性である。国民党は、引退した議員のあとに、積極的に女性の立候補者を立てた。そのおかげもあって、今回スコットランド議会では、129人中、58人が女性で、約45%も占める事になった。

さらに、非白人の女性として、国民党のカウカブ・スチュワートと保守党のパム・ゴザルが初めて選出された。労働党のパム・ダンカン=グランシーも女性で、常用の車椅子使用者としては初めての当選者となった。

そして、今回の当選者の3分の1が、スコットランド議会の新しい顔ぶれとなった。なんとフレッシュな議会だろうか(日本とえらい違いだ)。

13日(木)には新議会の初会合が行われ、議員たちの宣誓式が行われる予定。

これから、長い戦いが始まる。独立支持派は、過半数の議席はとったが、今後行われる住民投票では、安全圏にある数字とは言えない。この点、BBCの予測は当たった。やや過小評価ながらも当てたのは立派だ。

(近年、英国でもフランスでも、選挙予測ははずれることが多すぎて不信感をもっていた。それと、筆者が珍しい当地の比例選挙制度に通じていなかったのが、予測を見誤った主な理由だと思う)。

おそらくジョンソン首相では、反発をかうばかりで、英国が解体しそうな危機に対処できないのではないか。この数週間、首相の人気は驚くばかりに急降下しているので、次の大きな動きは、何かロンドンのほうで起きるかもしれない。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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