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【独自調査】全国の最新人気マンションが判明。第1位は都心の低層だが、ちょっと線路が近い

櫻井幸雄住宅評論家
今回調査で全国で人気第1位となった「プラウド白金長者丸」の明るい室内。筆者撮影

 2023年7月から9月に販売されたマンションで、全国第1位の人気マンションとなったのは野村不動産の「プラウド白金長者丸」。JR山手線目黒駅から徒歩6分に建設された低層マンションだった。

 建設地は山手線の内側となるため、文句なしの都心マンションといえる。都心立地で地上3階建ての低層マンション……その住戸は約59平米の1LDKが1億3200万円台からの設定。約144平米で3LDK+エントランススタジオとなるメゾネット(2層)住戸もある。 

エントランススタジオと名付けられた空間は、メゾネット住戸の下層に設けられている。サブの玄関を入った場所を趣味のスペースなど自由に使えるようになっている。筆者撮影
エントランススタジオと名付けられた空間は、メゾネット住戸の下層に設けられている。サブの玄関を入った場所を趣味のスペースなど自由に使えるようになっている。筆者撮影

 約144平米のメゾネットはさすがに3億円を超えるが、約85平米の3LDKならば2億600万円だ。

 山手線内側を中心とする都心部では新築マンションが高騰し、5億円とか10億円の3LDKが当たり前と思われがちだが、さすがにそこまで高くなると、購入できる人は限られる。現実的なマイホームとして人気が高いのは、このくらいの価格設定の新築マンションなのである。

 続く人気第2位は埼玉県で東京建物が販売する「ブリリア浦和高砂」で、3位は旭化成不動産レジデンスの「アトラス麻布台」、4位が「サンウッド浜田山」となり、兵庫県の「プレディア明石」が人気で全国第5位となった。

全国で130物件を「人気マンション」と認定

 以上の人気マンションは11月17日、私のオフィシャルサイトで発表した全国新築マンション人気指数・最新版で明らかになったものだ。

 「マンション人気指数」は、全国の新築分譲マンションを対象に、2011年7月から調査を開始。毎年3〜4回公表し続けている私の独自調査データである。

 今回調査では、今年7月から9月までの販売中マンションを対象に、資料請求数と販売センターへの来場者数を調べ、分譲戸数から「人気指数」を算出。指数「1」以上を「人気マンション」と認定している。その全リストと計算方法はオフィシャルサイトの記事独自調査で注目物件が判明 全国新築マンション「人気指数」 第5回 2023年7月~9月速報で説明させていただいた。

 全リストはデータ量が多いため、ここでは人気指数が特に高かったマンションについて解説させていただく。

高人気マンションに共通するのは……

 今回調査で、全国の人気マンションに共通しているのは、「小規模」で「そんなに高額ではない」ことだった。

 今回、人気度で全国5位までに入ったマンションの総戸数は、次のようになる。

1位「プラウド白金長者丸」 全26戸

2位「ブリリア浦和高砂」 全32戸

3位「アトラス麻布台」 全34戸

4位「サンウッド浜田山」 全47戸

5位「プレディア明石」 全28戸

 「プラウド白金長者丸」の販売価格は前述したとおり、約59平米の1LDKが1億3200万円から。「ブリリア浦和高砂」は価格未定で、港区麻布台の「アトラス麻布台」は約76平米の2LDKが2億980万円など。杉並区内の「サンウッド浜田山」は約55平米の2LDKで8470万円。「プレディア明石」は約64平米の2LDKが4398万円からだ。

 ちなみに、第1位の「プラウド白金長者丸」は、山手線の内側ではあるものの、じつは山手線とりんかい線の線路が近い。その音を気にする人もいるために、価格が抑えられている。万全の遮音対策を凝らしているが、実際の音を確かめてから購入して欲しいとの考えから、建物が完成してから販売が開始されたのも特徴だ。

「プラウド白金長者丸」は完成した建物を見せながら、販売が行われている。筆者撮影
「プラウド白金長者丸」は完成した建物を見せながら、販売が行われている。筆者撮影

 「プラウド白金長者丸」は、小規模で特殊事情のあるマンションだ。そのような物件を探し出し、検討する人が多いことに驚く。

 今は、タワマンと呼ばれることが増えた目立つ超高層マンションばかりが人気を集めているように思われがちだが、実際には、中層、低層のマンションを好む人が大勢いる。そして、少しでも割安でお買い得なマンションを探そうとしている人はもっと多い。投資目的ではなく、自ら住むための物件を探す人、つまり実需層はその傾向が強い。

 全国新築マンション人気指数の調査では、毎回、そのように「目立ちにくい人気マンション」が集まる。

 同調査では、販売センターが開く前の段階で注目を集めている物件も「事前人気指数」上位物件として発表している。事前人気指数の上位にランクインする物件名も渋めというか、目立ちにくい。

事前人気で第1位は、杉並区の小規模

 今回調査で事前人気指数上位5位までのマンション名を挙げてみよう。

1位 サンウッド西荻窪

2位 クレヴィア用賀

3位 ザ・ライオンズミレス蔵前

4位 シティタワーズ板橋大山

5位 ルフォン上野松が谷

 5位までのうち、大規模と呼べるのは、4位の「シティタワーズ板橋大山」だけ。同マンションはノースタワー、サウスタワーの2棟合わせて273戸の規模となるが、それ以外は19戸から70戸までの小規模だ。

 いずれも東京都内なのだが、港区や千代田区、中央区といった派手な都心部ではない。杉並区、世田谷区、台東区、板橋区……落ち着いた場所の目立たないマンションなのである。

 そもそも、販売センターが開く前から杉並区や台東区のマンションに興味を持つのは、主に地元の人たちだ。つまり、自ら住む目的を持ち、今住んでいる家の近くでマンションを探している人たちと考えられる。

 「全国的に注目されるマンション」よりも「地元の人が目を付けるマンション」のほうが高指数になりやすいわけだ。

 それは、「全国的に注目されるマンション」はオンライン商談が多く、実際に販売センターを訪れる人が少ないことも理由だろう。 

 「地元の人が目を付けるマンション」は、販売センターの来訪者が多く、人気指数が高くなりやすいのだ。

 そのため、人気指数のランキングにより、地元の人に認められている優良マンションを掘り起こすことができる。

 人気指数のランキングデータは、そのような活用法もあるわけだ。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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