札幌のマンション市況に第2形態?中心部が高くなって、次に活気づくエリアが現れた
北海道の札幌市で、高額の新築マンションが登場し始めたのは2021年の秋から。
地下街に直結する超高層マンションとして、「ライオンズタワー札幌」と「ONE札幌ステーションタワー」が発売され、それぞれの最高価格住戸は3億3000万円と5億円となった。
いずれも、早々に買い手が付いたこと、そして「ONE札幌ステーションタワー」では2億2000万円の住戸が11倍の抽選となったことが全国的に報じられ、びっくりする人が多かった。
「札幌のマンションは、そんなに高いのか」と驚いたわけだ。
実際、札幌市内の新築マンションは価格が大きく上がった。
ただし、数億円の値がつくのは超高層の最上階もしくは最上階に準ずる上層階の特殊住戸。中層階、下層階の2LDK、3LDKであればそこまで高い値段にはならないのだが、それでも7000万円台、8000万円台の住戸が多くなっている。
当然ながら、「普通の人には、もう手が届かない」の声が大きくなった。一方で、札幌駅では北海道新幹線の延伸が計画されているため、なるべく札幌駅に近い場所で今のうちにマイホームを持っておきたい、というのが多くの人の本音でもある。
そこで、今、札幌のマンション市場で始まったのが、「札幌駅になるべく近く、まだ手が届く価格のマンションの発掘」。つまり、札幌周辺の「穴場」で分譲されるマンション探しである。
札幌のマンション市況は、新しい段階に入り、「第2形態」というべき状況が生まれているわけだ。
札幌のマンションというと、中心地の高額物件の話ばかりが出てきてしまう昨今だが、普通の人が買っている新築マンションは、そこまで高額ではない。
札幌市内で、現実的に新築マンションを購入しやすく、これから値上がりが予想される場所はどこか、現地取材を基に紹介したい。
首都圏の湾岸も、じつは周辺の「穴場」として人気を高めた
人気が上がり、マンション価格も大きく上昇する場所が出現すると、その周辺で「まだ安い場所はないか」と穴場探しが始まる……マンション市況の「第2形態」と呼べる現象は、日本中いたるところで起きた。
たとえば、大阪で梅田から御堂筋沿いのマンション価格が大きく上昇しはじめた2000年から2005年頃、大阪駅の隣・福島駅周辺の割安マンションが注目されるようになった。それまで庶民的な街とされていた場所が脚光を浴び、2023年公示地価で福島駅周辺は大阪市内の住宅地として上昇率第1位になっている。
名古屋駅周辺のマンション価格が大きく上昇した2020年には、名古屋駅に近接するノリタケの森エリアのマンションが大人気となった。
首都圏でも、湾岸が今のようにマンション人気エリアになったのは、20世紀の最後の頃から。湾岸が都心に近接しながら価格が抑えられた場所だったからだ。中心地のマンションが高額になれば、その周辺の注目度が上がるわけだ。
ちなみに、首都圏の場合、中心地に次いで周辺部もマンション価格が上昇したため、さらにその周辺に関心が移っている。その点、札幌市内では、まだ中心地の近くに穴場が残っている。
札幌で、割安なマンションが購入できる場所は……
札幌市内で中心地に近い穴場というと、「苗穂」や「新札幌」を思い浮かべる人が多い。いずれも札幌駅から新千歳空港駅に向かうJR千歳線の沿線である。しかし、JR千歳線は北海道の大動脈であるため、「苗穂」や「新札幌」はすでに土地価格が上昇してしまった。
そこで、今、駅近で納得価格のマンションが出やすい場所として注目されるのが、札幌駅の北東側。地図でみれば、北海道大学のキャンパスがある側だ。
北海道では、冬も雪の影響を受けにくい地下鉄の人気が高いのだが、札幌駅の北東側にも地下鉄が延びている。札幌市営地下鉄の東豊線で、さっぽろ駅(地下鉄駅はひらがな表記となる)から3駅目、4駅目となる「環状通東(かんじょうどおりひがし)」駅や「元町」駅が注目すべき場所だ。
いずれも、札幌市民以外には馴染みが薄い場所。というか、「そんな場所、知らない」という人が多いだろう。だから、穴場なのだ。
2駅は、さっぽろ駅からの地下鉄乗車時間が6分、8分と近い。スーパーマーケットやクリニック、飲食店、銀行といった生活利便施設が駅周辺にそろっているし、進学校として評価が高い中学校、高校が集まっていることから、以前から地元で根強い人気があった。
いわば、「知る人ぞ知る」場所だったのが、札幌中心地のマンション価格上昇で、注目度が上昇。環状通東駅や元町駅周辺では4000万円台で購入できる3LDKがまだみつかることもあり、「札幌の穴場」となっているわけだ。
その札幌市内の穴場エリアで、今、新しい動きが出ている。
大手不動産会社のマンションが続けて登場
札幌市営地下鉄東豊線の環状通東駅や元町駅周辺は一戸建ての住宅地が広がり、分譲マンションは地元の不動産会社が開発する小規模物件が中心だった。
そのなか、東京に本社を置く大手不動産会社のマンションが登場し始めたのは、2年ほど前から。札幌中心部のマンション価格が話題になり始めてからだ。
最初に登場した大手不動産会社のマンションはすでに完売してしまった。そして、今年、新たに環状通東駅で販売を開始するマンションが出て、これから販売を開始する予定のマンションも控えている。これまで、目立たなかったエリアで、にわかに活気が出てきたわけだ。
最初に販売を開始したのが東急不動産の「ブランズ環状通東駅前」(全56戸)で、環状通東駅から徒歩1分。3LDKが3930万円からの価格設定となるマンションである。
そして、今年12月から販売開始予定なのが大和ハウス工業の「プレミスト環状通東ステーションサイド」(まだ価格は出ていない)だ。こちらも環状通東駅から徒歩1分となるのだが、「ステーションサイド」の物件名が示す通り、地下鉄駅の出入り口の目の前に建設される。
同マンションは総戸数121戸のスケールメリットでホームパーティが開けるレセプションルームやテレワークに使えるクリエイティブスペース、そしてゲストルームなど共用施設が充実する。24時間ゴミ出しOKなど快適さを高める工夫も多い。
さらに、すぐれた省エネ性能で光熱費を削減し、住宅ローンの金利優遇や住宅ローンの控除が大きくなる「ZEH(ゼッチ)M・オリエンテッド」でもある。
これまで、札幌駅の東北側エリアにはなかったタイプのマンションが登場するわけだ。
札幌では中心部の高額物件が話題となる一方で、周辺部でも質の高いマンションが現れるようになった。マンションの選択肢が広がり、北の国の不動産市況が新しい段階に入ったのは間違いない。