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札幌で5億円、旭川で3.5億円でも抽選に!北海道で高額マンションが売れるホントの理由

櫻井幸雄住宅評論家
旭川市内で3億5000万円の住戸が売れたマンションのモデルルーム。筆者撮影

 北海道で高額マンションが次々に登場。価格が高くても好調に売れている。

 2021年12月には札幌駅の地下街に直結する超高層マンションの「ONE札幌ステーションタワー」で約227平米・5億円の住戸が販売され、2022年12月に第1期が分譲された「プレミスト旭川ザ・タワー」では、約156平米・3億5000万円の住戸が登場。そのいずれもが抽選になる人気ぶりで、この4月以降も札幌駅近くで2億円以上の住戸が販売されることになっている。

 北海道新幹線延伸開通への期待から、札幌駅に近い超高層マンションが人気になるのは理解できる。5億円の住戸は札幌駅の近くで超高層の最上階。約227平米もの広さがあるので、それくらいの価格になってしまうのだろう。

 しかしながら、旭川で最上階156平米・3億5000万円というのは、にわかには信じられない。なにしろ、旭川駅は札幌駅から130キロメートル以上離れており、JRの特急電車でも約1時間半かかる。東京駅・横浜駅間の約28キロメートル、大阪駅・神戸駅間の約33キロメートルとは比べものにならないくらい離れているのだ。

にもかかわらず、旭川のマンションが抽選になるほど人気になっている理由はなにか。

 裕福な外国人が買っている?

 北海道には高い所が好きな人が多い?

 そんな想像をする人も出てきそうだが、実際はどうなのか。ようやく雪が消え始めた4月、札幌と旭川を訪れ、真相を確かめた。

ケタ外れにスペックが高かった札幌の最新超高層

 最初に分かったのは「外国人は北海道の不動産をそれほど買っていない」ということ。ニセコのホテルを購入する外国企業はあるようだが、北海道で新築マンションを個人で買う外国人の話はあまり聞かない。

 一方で、現地の取材で驚いたことがいくつかあった。それらは、想像だけでは浮かび上がらない「現地の真相」というべきものだった。

 まず、札幌の最新超高層マンションはびっくりするくらい高スペックだった。

 札幌駅近くで建設されている「ザ・札幌タワーズ」の場合、長期優良住宅でZEH(ゼッチ)、しかも「電力自営線供給+地域熱供給」という東京、大阪のマンションでも実現していない先進性を備えている。これは、マンションの近くでの発電や高温水生成がないと実現しないもの。どこでも実現可能な特徴ではない。

「ザ・札幌タワーズ」のモデルルームLDK。筆者撮影
「ザ・札幌タワーズ」のモデルルームLDK。筆者撮影

 それなら住んでみたい、と思える要素を備えた超高層マンションなのである。

 一方で、旭川のマンションは立地の魅力が大きく、道民だけでなく、道外からセカンドハウス目的で購入を検討する人たちのハートを掴んでいる、という事実もわかった。

セカンドハウスで、旭川の超高層マンション?

 旭川市内で最高額3億5000万円の住戸が抽選になったのが「プレミスト旭川ザ・タワー」。この超高層マンションがなぜ道内外の人に注目されているのか。

 答えは、立地にある。

 建設地は旭川駅から徒歩4分で、これまで旭川で建設されたマンションの中で、最も駅に近い。そして、駅から建設地の間に「イオンモール旭川駅前」があり、平和通買物公園にも面している。

 「平和通買物公園」は、約50年前に完成した「日本初の歩行者専用道路」である。幅約20mで長さは約1キロメートル。両脇に商業施設、飲食店が集まり、頻繁にイベントが開催される「旭川近郊エリアの中心」となっている場所だ。

日本で最初の歩行者専用道路でもある「平和通買物公園」。左手にマンション建設現場が見える。筆者撮影
日本で最初の歩行者専用道路でもある「平和通買物公園」。左手にマンション建設現場が見える。筆者撮影

 その平和通買物公園の入り口(駅に近い側)部分に同マンションは建設される。

 旭川の街を知っている地元民ならば、「あそこは特別」と認める場所に建設され、旭川市内で最高層のタワーマンションなので注目度が高くなるわけだ。

 一方で、同マンションには、セカンドハウス利用の道外購入者が多いという特徴もある。

 東京の人がセカンドハウスとして北海道のマンションを買おうとするとき、旭川に目を付ける人が多い。だから、人気になっている、というのだが、その理由がおわかりだろうか。

 セカンドハウスでマンションを買うなら、札幌市内のほうがよさそう。しかし、実際は札幌だけでなく、旭川の人気も高かったのである。

旭川ならば、北海道の中心で空港も近い

 東京の人が北海道でセカンドハウスを持ちたいと考えたとき、どんな家に憧れるだろうか。

 たとえば、自然に囲まれた一軒家……しかしながら、夏は庭の手入れ、冬は除雪の心配をしなければならないことを考えれば、一軒家がセカンドハウスに向くとはいえない。

 その点、マンションならば、庭の手入れも除雪もしなくて済む。

 そこで、近年は札幌中心部のマンションが人気を高めているのだが、購入者の多くは北海道民で、札幌市外に住んでいる人。「人生で一度は、便利な札幌に住んでみたい」と憧れていた人たちだ。

 これに対し、道外在住者で「北海道の暮らし」に憧れる人は、必ずしも札幌市内のマンションを狙うわけではない。

 理由は、「都会暮らしに憧れているわけではない」からだ。

 便利な都会暮らしなら、東京や大阪、名古屋でいくらでもできる。それよりも、北海道では雄大な自然の中でキャンプやゴルフ、スキー、釣りなどを楽しみたい。

 そう考えたとき、旭川には大きな利点がある。

 まず、北海道の中心部に位置するため、道内のどこにでも車で出かけやすい。北海道ライフを満喫する拠点になるわけだ。

 次に、旭川であれば、東京から飛行機で行きやすいという利点もある。旭川空港から旭川駅まで車で30分程度。これは、新千歳空港から札幌中心部まで行くよりも所要時間が短い。

 以上の特性に加え、マンションのまわりは買物や飲食に便利で、窓から見える眺望は雄大……東京の人が旭川でセカンドハウスとしてマンションを購入するのには、納得できる理由があったのだ。

「プレミスト旭川ザ・タワー」の建物完成予想模型。筆者撮影
「プレミスト旭川ザ・タワー」の建物完成予想模型。筆者撮影

 「プレミスト旭川ザ・タワー」の場合、高層階には1億円以上の住戸があるのだが、中層、低層には4000万円台の3LDKもある。その価格帯で、約80平米の広さが中心となり、札幌よりも同じ価格帯で広い。だから、セカンドハウスとして購入されるケースが多くなっている、というわけだ。

「今買わないと、次はない」マンションは、どこでも人気

 北海道では、今、超高層マンションが勢いよく売れている。

 その理由は、外国人が買うからでもなく、高所に住みたがる人が多いからでもない。

 マンションのことをよく知っている人が「今買わないと、次はない」と考える物件が次々に出てくるから、北海道でマンションブームが起きているのだ。

 そういえば、北海道北広島市の「エスコンフィールドHOKKAIDO」で、球場近接のマンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」が早々に完売したが、あのマンションも「次はない」と考えられた。

 「次はない」と思えるマンションならば、東京でも大阪でも人気が高まる。

 たとえば、今、東京で爆発的な人気になっている「三田ガーデンヒルズ」も同様のマンションが続々出てくる可能性はない。大阪のうめきた第2期工区で新築マンションが分譲されれば、それも「次はない」ことで爆発的人気になるだろう。

 北海道では、たまたま「次はない」マンションが続出している。

 だから、最上階の高額住戸を買う人も出る。

 その状況が分からないと、今、北海道で起きているマンションブームは理解できないのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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