新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ション、10億ションには、独自の設計があるし、特殊な事情もある。

 高額のお金を出して購入したはずなのに、夜、照明がつかない、つまり使っていないのでは、と推測される住戸が目立つのも特殊事情のひとつだ。

 照明がついていないのを見て、さては中国の人が投資目的で購入し、値上がりするまで寝かしているな、と推測されることがある。

 しかしながら、高額マンションの販売現場で「中国本土からの購入者が多い」という話は聞いたことがない。台湾と香港からの購入者はいるが、それは以前から一定数いるもので、近年特に増加しているわけではない。

 では、購入者で多いのはどんな人か。

 数億ション、10億ションの購入者で目立つのは、日本人で地方在住の富裕層だ。

都心の高額マンションは、別荘より利用頻度が高い

 地方在住の富裕層は、東京に出てくる機会が多い。仕事で、そして夫婦で遊びにも来る。さらに、子供が東京の大学等に入学することもある。

 そのため、東京での拠点として、また大学等に通う子供の住まいとして高額マンションを買うケースが多いのだ。

 息子、娘が東京で1人暮らしを始めれば、心配だから、という口実で母親が度々東京に遊びに来る。部屋数の多い高額マンションであれば、母親が何日いても息が詰まることはない。

 また、親類が東京でのホテル代わりにすることもある。

 東京在住者がリゾート地で購入する別荘より利用頻度ははるかに高い。そのため、地方在住の富裕層が購入する都心の高額マンションはセカンドハウスとしての利用価値が高いことになる。

 つまり、購入してもムダにはならない。「そんなもの買って、誰が使うのよ!」とは言われないわけだ。

 そして、都心の高額マンションは値下がりしにくく、大幅な値上がりも期待できる。相続時の節税効果を考えて購入する人もいる。

 以上の特性があるため、都心の高額マンションは地方の富裕層に積極的に購入される。

 ただし、都心の滞在拠点として購入される高額マンションは「頻繁に利用される」といっても、その日数は限られる。大学等に入った子供が定住しなければ、1年のうち100日も利用すれば多いほうだろう。そうすると、残り200日以上は夜も照明がつかないことになる。

 つまり、夜、照明がつかない住戸の多くは「セカンドハウスとして購入され、その日は利用されていない」だけなのだ。

都心のセカンドハウスだから、大型金庫が必要……? 

 都心の数億ション、10億ションは、東京の滞在拠点として利用されがち。そして、住戸内に本体重量500キログラム以上の金庫を設置する所有者が多くなる。 

 500キログラム以上となると、業務用の大型金庫だ。その金庫は、マンションに滞在中のために設置される……その理由がおわかりだろうか。

 都心生活で必要な「なにか」を収めて厳重に保管したい?

 まさか、所持すると法律に触れるもの?などと想像する人もでてきそうなので、急いで答えを明かそう。

 金庫に収めるのは、宝飾品や高級時計、クロコなど高級皮革を使用した高価なハンドバッグなど。それらを、2セットとか3セット、場合によっては4セット以上収めることになる。

 金庫は大型だが、収めるものは小さく、少ない。が、目が飛び出るほど高額なものばかりだ。

 富裕層が夫婦で東京に遊びに来る場合、パーティや友人との会食などが予定されるし、観劇や高級ブティックでの買い物もスケジュールに入れられる。その際、身につけるアクセサリーやバッグ、時計などを複数持って来る。

 富裕層は、高級品をいくつも所有しているが、地元でそれらを身につける機会は限られる。その点、東京の銀座や六本木では気兼ねなく身につけることができる。それも、東京に遊びに行く楽しみになる。

 だから、宝飾品や時計を数セット持ってくるわけだ。結果として、その多くをマンション内に残して外出することになる。だから、金庫が必要。それも、金庫ごと持ち出すことができないサイズ・重量のものが必要になる。

 以上の理由で業務用の大型金庫を設置する、というのが正しい答えである。

 そんなことを明かしてしまうと、夜、照明がつかない高額マンション住戸が泥棒に狙われそう……しかし、心配はないだろう。

 まず、高額マンションほどセキュリティは厳重で、建物内に忍び込むだけでも至難の業。そして、金庫の中に高級品が収まるのは、所有者がマンションに滞在するときだけ。つまり、夜に照明がつくときだけだ。

 照明がつかない夜、マンション所有者は地方の自宅に帰っており、宝飾品や時計も一緒に自宅に戻っている。

 とんでもなく大事なものが入っていそうな大型金庫の中は、じつは空っぽなのである。