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近年の販売事情から判明。マンションを賢く買う絶好機は年度末ではなかった

櫻井幸雄住宅評論家
新築マンションを賢く購入する絶好機は年度末、桜が咲く季節ではなく……。筆者撮影

 決算前の年度末は、売り上げを増やしたい会社が多い。だから、車も住宅も大幅な値引きが期待できる、といわれる。

 この「年度末」は、マンション購入でも有利なタイミングなのだろうか。

 たとえば、ハウスメーカーがつくる住宅の建物であれば、「結構、設備機器などでサービスしてもらえた」という話は多い。しかしながら、新築分譲マンションで、年度末で大幅値引きしてもらえた、という話は近年、聞いたことがない。特に、今年は皆無といってよい。

 同様に、新車でも「年度末で大幅値引き」の話はないようだ。

 車は専門外なので正確なところは分からないが、新築分譲マンションと同様、「商品が大量に売れ残っている状況ではない」からなのだろう。

 そもそも、分譲マンションに関しては、毎年3月は販売活動が控えめになる時期。年明けから2月にかけてはダッシュをかけるが、3月に入ると販売は小休止状態になり、人員が減る販売センターもある。

 新築マンションに関しては、年度末は賢く購入できるタイミングではない。では、他の時期でマンション購入の好機はないのか。

 じつは、ある。

 マンション購入で年度末がチャンスといえない理由と、本当の狙い目時期について解説したい。

3月にマンション販売が控えめになる理由とは

 新築分譲マンションの販売活動は、2月末から3月半ばにかけて控えられる。その理由は、完成したマンションの引き渡しで忙しいからだ。

 日本の新築マンションは1月から2月にかけて完成し、3月に入居するケースが多い。それは、子供の小学校入学に合わせてマイホームを買う人が多かった時代の名残というべきものだ。

 昭和時代、多くの新築マンションは3月入居となった。希に9月入居のマンションが出たりすると、「なんで、そんな中途半端な時期に」と不思議がられたものだ。

 今は3月入居にこだわらず、完成時期、入居時期は随意に設定される。それでも、5月入居のマンションをつくると、「もう少し早めて3月入居にしてくれないか」と要求されることがある。

 5月入居や6月入居だと、子供をとりあえず別の小学校に入学させ、1,2ヶ月で転校させなければならない家庭が出てしまう。それでは、子供がかわいそう、というわけだ。

 特例として、引っ越す前でも新居近くの小学校に入学できることがあるが、その場合も、数ヶ月間長距離通学を強いられるケースがあり、子も親も苦労する。

 いろいろな弊害が生じるため、春に完成するマンションは、今も小学校入学に合わせて入居できるよう建設されることになる。

 3月の末まで、遅くとも4月の頭までに入居できるようにするためには、その1ヶ月くらい前までに「内覧会」を行わなければならない。

 購入者ができあがった住戸内を点検し、支障があれば、補修を要求するために行われるのが「内覧会」だ。

 この「新築マンションの内覧会」が、1年で最も集中するのが、3月なのだ。

 内覧会には、多くの不動産会社社員が動員される。その結果、販売センターに詰める人間が少なくなり、販売活動が手薄になる。

 だから、新築分譲マンションに関しては、「年度末が狙い目」といえるのは、2月末まで。3月に入ったら、もう遅いのである。

 新築マンションに関しては、年度末は賢く購入できる時期ではない。

 それよりも狙い目といえるのは、いつか。

 考えてみると、「年度の初め」が思い浮かぶ。年度末ではなく、年度初めなのだ。

 その理由は、新年度が始まる4月から6月にお買い得物件が数多く販売されてきた歴史があるからだ。

 桜が咲く前の年度末がよさそうだが、じつは桜が散った後に狙い目時期が訪れるのである。

大規模マンションは年度初めから始動しやすい

 新築マンションの狙い目時期は、4月から6月ーー根拠となるのは、その時期に新規販売開始する大規模マンションが多いことだ。

 不動産会社にとって、大規模マンションは力が入るプロジェクト。その販売は、新しい期の始まりとともに行われがちなのだ。

 そして、総戸数が200戸を超える大規模マンションでは、販売が進むたびに価格設定が上がる事例が近年増えている。最初は安く売り、徐々に高くなってゆくわけだ。

 この傾向は駅に近いとかスーパーマーケットに隣接しているなど、人気要因を備えたマンションに強く出やすい。

 販売が進むにしたがい価格が上昇すると、「最初の頃に買っておけばよかった」の声が出てくる。そういうケースが何度も出ているので、「狙うなら、大規模の最初の販売」と考える人も増えてきた。

 「大規模マンションで、最初の販売で価格を抑える」のは、マンション販売でよく起きる現象だ。大規模マンションの販売は長丁場になることが普通なので、不動産会社は「最初からつまずきたくない」「お買い得住戸を販売し、認知度を上げたい」という気持ちを持つ。その結果、最初の販売で割安な価格設定を行いがちなのである。

第1期は抽選になりやすいのだが……

 4月から6月は、大規模マンションの最初の販売が行われやすく、割安な価格設定の住戸が売り出される時期となる。

 最初の販売、つまり第1期販売は抽選になりやすい。

 「これはお買い得」と考える人が多いため、購入申し込みが殺到するためだ。

 そうなると、抽選に当たらないと買えない……のだが、その点も心配いらない。現在のマンション販売では、第1期が抽選になった場合、即座に追加販売が行われるケースが多いから。第1期2次というような販売となり、申し込みできるのは抽選に外れた人だけ。なので、購入できる可能性は大きい。

 ちなみに、首都圏で4月以降に最初の販売を開始する大規模(総戸数が200戸以上)マンションで、販売開始前から人気の高い事例を挙げると、次の5物件がある(一部、3月下旬から販売開始予定物件を含む)。

●Brillia Tower 池袋 West(全230戸)

●シティテラス赤羽(全298戸)

●Brillia City 石神井公園 ATLAS(全543戸)

●リビオタワー羽沢横浜国大(全350戸)

●大宮スカイ&スクエア ザ・タワー(全398戸)

 首都圏の平均マンション価格が上がってしまった現在、少しでも安く新築マンションを買いたいなら、4月から6月は注意すべき時期なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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