今、首都圏でマンションを中古で売れば、いくらになるのか。コロナ禍の1年で中古マンション価格がどのように変化したのかを、駅ごとに調べたデータが本日6月4日に発表された。

 その結果、首都圏で上昇率1位となるのは、西武池袋線ひばりヶ丘駅であることが判明。コロナ禍の1年、世田谷区内の5つの駅で、中古マンション価格が大きく上昇することも分かった。

 その内容を30位までのランキングとともに報告したい。

 調査・発表を行ったのは、不動産・金融業界をはじめ多様な業界にAIクラウドサービスやAIコンサルティングを行うSREホールディングス。同社は、ソニーグループ発のテック企業であり、先進的なAI技術でマンションの売買や賃料の価格相場を高精度で推定することができる。今回は、コロナ禍で中古マンション成約価格が首都圏の駅ごとにどう変化するかを調べた。

 具体的には、昨年2020年1月から3月に売り出された中古マンション成約価格と今年2021年3月末時点での中古マンション成約予想価格をAIが算出して、比較。首都圏の駅ごとに中古マンション価格が上がるか、下がるかを判定し、坪単価や騰落率などを算出している。

 なお、今回のAI調査はSREホールディングスと私櫻井幸雄の協力企画で実施された。

売れ行き好調とされる中古マンションだが、駅による差も

 コロナ禍で中古マンションの取引は好調とされる。しかし、首都圏のすべての駅で、中古マンションが高値で取引されているわけではない。売れ行き好調で中古マンション価格が上昇傾向の駅もあるし、下降傾向の駅もある。そして、価格の上げ幅、下げ幅も、駅ごとに大きく異なる。

 駅ごとの中古マンション成約価格の推測値を出せば、マイホームを売ろうとする人にも、中古マンションを買おうとする人にも役立つデータとなるはず。そんな思いから、今回のAI調査が実施された。

 結果として、対象月に中古マンション取引がなかった駅、極端に少なかった駅を除き、首都圏175駅で現在の成約価格と、2020年の成約価格を比較したときの騰落率など詳細な数値が推測できた。全データは、SREホールディングスのホームページで公開されている。

 そこから、首都圏で中古マンション価格が大きく上昇と想定される上位30駅の駅名・2020年の中古価格・現在の予想価格・1年間の上昇率を紹介したい。

首都圏で、この1年間に中古マンション価格が大きく上昇と判定される30駅

○まず、上昇率1位から10位までの駅

注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅
注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅

○続けて、上昇率11位から20位までの駅

注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅
注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅

○最後は、上昇率21位から30位までの駅

注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅
注)価格は、駅から徒歩15分までで築5年~15年、50平米以上の中古マンション価格 を調べ、70平米住戸に換算して算出されている。太字は、世田谷区内の駅

上位30駅のうち、最も値上がりした駅はひばりヶ丘か

 首都圏では、コロナ禍の1年、多くの駅で中古マンション価格が上昇。なかでも、飛び抜けて大きく中古マンション価格が上がると予想された駅が、東京都西東京市のひばりヶ丘駅。前年比139.9%のプラスなので、1年間で約1.4倍にもなっているわけだ。

 西武池袋線のひばりヶ丘駅は、必ずしも知名度の高い駅とはいえない。しかし、そのポテンシャルは高い。まず、西武池袋線の急行停車駅であり、急行利用で池袋駅から2駅15分と近い。

 都心ターミナル駅からの所要時間でいえば、吉祥寺駅や二子玉川駅と同レベルだ。それでいて、中古マンション価格は2020年に3376万円と割安だったため、1年間で約1.4倍にもなったと考えられる。

 ひばりヶ丘駅前にはパルコと西友があり、パルコの地下にはクィーンズ伊勢丹もあるのだが、新しくなった駅前がゆったりしており、駅のすぐ近くから住宅地が広がるのが特徴だ。

 都心に近く、便利で、住宅地としての落ち着きもあり、しかもマンション価格が割安……それが、ひばりヶ丘駅周辺が備える地域特性というもの。魅力が多いためか、ひばりヶ丘駅を最寄りとする新築分譲マンションは、以前から短期間で売れてしまうケースが多かった。

 ひばりヶ丘駅からバス便の住宅ゾーンでもマンションの売れ行きがよい。ひばりヶ丘駅周辺は、以前から「マンションがよく売れる場所」だった。

 その「ひばりヶ丘」が、コロナ禍で、人気をさらに高めたのである。

 郊外だが、都心に近いので通勤電車に乗る時間は短い。買い物が便利で、街が楽しい。バーベキューができる西東京いこいの森公園(緊急事態宣言で、バーベキューは現在休止中)など、緑のスペースも多い。

 そのように、総合点の高い街は以前から人気が高いのだが、コロナ禍でさらに人気を高めたということだろう。

コロナ禍で、世田谷人気が復活

 この1年で中古マンション価格が上昇と予測された駅の顔ぶれをみると、意外に都心立地の駅が多いことにも気づく。2位の日暮里駅、4位の品川駅、10位の広尾駅、15位の半蔵門駅……数えてみると、30駅のうち、21駅が23区内だった。

 なかでも、値上がり幅が大きいと予測されたのが荒川区の日暮里駅。JRの山手線と京浜東北線、常磐線などが利用できる便利な駅であり、山手線のなかでは、マンション価格が比較的抑えられてきた駅でもある。

 日暮里駅の中古マンション価格は1年前が5994万円だったのが、今年7566万円に上昇。テレワークが広まると言われながらも、広がりは限定的と予想した人たちが、通勤便利な都心で、なんとか手が届く価格水準の日暮里駅で中古マンションを探す様子が想像される。

 もうひとつ注目したいのは、23区内でも世田谷区内の複数駅で値上がりがみられること。上昇率3位の桜新町駅、7位の上野毛駅、5位の千歳烏山駅、14位の尾山台駅、24位の用賀駅の5駅が世田谷区内だ。

都心部から首都高3号線に入り、東名高速道路に向かうとき、両側に広がる住宅エリアが世田谷区。写真中央が首都高3号線だ。筆者撮影
都心部から首都高3号線に入り、東名高速道路に向かうとき、両側に広がる住宅エリアが世田谷区。写真中央が首都高3号線だ。筆者撮影

 世田谷区内で住宅価格が高くなりすぎ、マンション人気が落ちたと、私が新聞社のニュースサイトで報じたのは2017年10月のこと。その後、同様の記事が多く出て、世田谷のマンションは人気も価格も下がり続けている、と信じられるようになってしまった。

 しかし、実情は異なる。価格が下がる状況が出てから3年半が経ち、割安感が生じたことで、人気が回復していた。

 価格が下がると、人気が盛り返し、下がっていた価格が反転上昇する……不動産市況ではよく起こる現象だ。

 折しも、コロナ禍が起きたことで、「都心に近く、住環境がよい」という世田谷の魅力が再評価された側面もありそうだ。

 世田谷のマンション市況は、新たな局面に入ったとみるべきだろう。

郊外といっても、価格上昇は都心から40キロ圏までの駅

 一方で、気になるのは、首都圏郊外駅の状況だ。

 コロナ禍の1年、思い切り都心から離れ、海や山に近いマンション、一戸建てが人気を高めていると思われがち。その海や山に近い場所というと、首都圏では都心ターミナル駅から45キロ以上離れてしまうのが普通だ。

 が、今回調査で中古マンション価格が1割以上高くなると予想された駅は、都心ターミナル駅から40キロ以内の場所ばかりだった。

 京王相模原線の南大沢駅(新宿駅から約33キロ)、JR総武線快速ほかの千葉駅(東京駅から約39キロ)、東戸塚駅(東京駅から約36キロ)、JR中央線の立川駅(東京駅から約37キロ)……さいたま市の浦和駅にいたっては、東京駅から約24キロに過ぎない。

 郊外といっても、さほど遠くなく、緑が身近な住宅エリア、そして、中古マンション3LDKが3000万円台、4000万円台で購入できる場所が人気を高めている。

 今回の調査では、そんなことも明らかになったのである。