テレワークやリモート授業など、ニューノーマルの暮らしが定着しようとしている。

 そうなると、新しい暮らし方にフィットした住宅を求める声が出てくる。

 テレワークやリモート授業を行いやすい間取りや最新のネット環境を求める声で、増加する宅配物やデリバリーを受け取りやすいことも求められる。

 新築分譲マンションでは、その対応がすでに始まっており、「テレワークスペースをつくりやすい間取り」や「コワーキングスペースを備えた共用部」、「全戸宅配ボックス付き」などを提案するケースが増えている。

 これに対し、賃貸住宅はどうだろう。

 賃貸住宅は、ニューノーマルへの対応が遅れる……というか、対応など考えないのでは、と認識されがちだ。

 確かに、賃貸住宅には畳の和室に押し入れが付いた昭和レトロのアパートもあり、時代を先取りするイメージはない。が、一部の賃貸マンションでは、ニューノーマルへの対応が行われ、居住者全員で利用できるコワーキングスペースがあったり、各住戸に高速のインターネット回線が用意されるといった工夫が採用されはじめている。

 そのような対応は、不動産会社が運営する賃貸マンションで顕著だ。

高仕様だが、家賃は2割程度高め

 不動産会社が「大家さん」となる賃貸マンションは昭和時代からあった。が、当時は、超高級物件が主体だった。港区内や千代田区内といった超都心部に立地し、面積は100平米以上で、家賃は100万円以上……一般の人には縁がないものだった。

 これに対し、10年ほど前から都心部に増え始めたのが、一般的な賃貸住宅よりも広く、設備仕様のレベルを上げ、その分家賃は高め、というもの。鉄筋コンクリート造で、1LDKの家賃が20万円前後、1DKならば15万円前後となる賃貸マンションだ。

 都心部で標準的な「鉄筋コンクリート造の賃貸マンション」を探すと、1DK〜1LDKの相場家賃は12万円から15万円程度になるので、3万円から5万円ほど、率にして2割〜3割程度高いことになる。

 そのジャンルの賃貸マンションに定まった呼び名はまだない。超高級ほど高くはないが、従来の賃貸を超える内容なので、ここでは「ハイグレード賃貸」と呼ばせていただく。

 家賃は高めだが、家で仕事がはかどること、今後テレワーク実践者に対する企業の補助(月額1万5000円程度になることが予想される)が広まりそうなことを考えれば、納得できるという人もいるだろう。

 実際、この2月に建物が完成し、入居者募集を開始した中野区内のハイグレード賃貸マンション(最寄り駅は丸ノ内線中野坂上駅)の場合、案内を開始して2週間ほどで2桁の申し込みが入った。1Kが12万円からという家賃設定を考えれば、驚くべき人気ぶりである。

ニューノーマルの時代にフィットする賃貸

 「ハイグレード賃貸」と呼ぶべき賃貸マンションの特徴は、大きく3つある。

1,不動産会社が大家さんとなり、合理的な賃借方式を採用する

2,建物と設備仕様のレベルが高い

3,便利な23区内立地が中心

 このうち、「合理的な賃借方式」とは、たとえば「礼金」を取らないことを指す。日本の賃貸住宅に残る「礼金(家を借りる人が、大家さんにお礼の気持ちで渡すお金)」は、外国人にはとうてい理解されない。合理的な説明ができないものは受け取れない、と多くの不動産会社が考え、礼金は設定されないのが普通だ。

 加えて、保証金の意味合いを持つ「敷金」は、1ヶ月分になることが多い。敷金は、退去時に返還されるもの。返すものだから、2ヶ月分とか3ヶ月分に設定する必要がないと考えられている。つまり、システムが合理的であり、その点も、若い賃貸利用者に支持される要因だ。

 2つめの「建物と設備仕様のレベルが高い」とは、鉄筋コンクリート造で、壁や床が分厚く、遮音性能と断熱性能が高いことを指す。

 それだけでなく、建物の入り口にはしっかりしたオートロックが設置され、宅配ロッカーが多かったり、コワーキングスペースがあるといった特徴を備える。各住戸に配置されるインターネット回線が高速で、その利用料は賃料に含まれる点もハイグレード賃貸の特徴となる。

 ハイグレード賃貸の建設地は、山手線外側の23区内を中心に、静かで日当たり良好な場所が多い。便利で住環境もよいわけだ。

 立地がよく、建物の質が高いし、賃貸契約も合理的……利点が多いのだが、ネックは家賃が高いこと。そのため、これまでハイグレード賃貸の注目度は低かった。しかし、ニューノーマルの暮らしが脚光を浴びる現在、状況に変化が出てきた。

 テレワークが増えたシングルを中心に、ハイグレード賃貸に関心を寄せる人は確実に増加。今後は、時代にフィットした賃貸の新形式として人気を高めてゆきそうだ。