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家買い替えで所得税が23年間も戻ってくる まさかのロング控除を実現するお宝物件とは

櫻井幸雄住宅評論家
世田谷区内の二子玉川ライズ タワー&レジデンスもお宝物件のひとつだ。筆者撮影

 10月1日から消費税の税率が10%に上がったが、もうひとつ、10月1日から変更されたものがある。それは、住宅ローン控除の内容だ。

 9月30日までの住宅ローン控除は、一般の住宅購入で「毎年40万円まで。10年間で合計400万円まで」となっていた。

 それが、10月1日から消費税率が上がったことに併せて、「3年延長」となった。「毎年40万円まで。10年間で合計400万円まで」は変わらず、11年目、12年目、13年目にも住宅ローン控除が続く。といっても、11年目から13年目までの3年間は、今回消費税率が2%上昇した分を返してくれるというもの。消費税が2%上がった分が戻ってくるだけ、といえるが、11年目以降に、3回に分けて還付されるので、「忘れた頃に戻ってくる」感がある。

 もともと自分のお金でも、無くしたと思ったお金が後で戻ってくるとうれしいものだ。そんな“意外にうれしい住宅ローン控除の3年延長”が住宅購入で受けられるのは、今年10月1日から来年12月31日までに入居する住宅を住宅ローンを組んで購入することが条件になる。

 「住宅ローン控除の期間が13年」になるのは、1年3ヶ月だけの期間限定の特例となるわけだ。だったら、その短い期間を狙って、マイホームを買おうとする人、買い替えようとする人が出てきても、おかしくない……と、そこで、考えたことがある。

 それは、ちょうど10年間の住宅ローン控除を満了した人が、今マイホームの買い替えを行えば、さらに13年の住宅ローン控除を利用でき、「合計23年間、税金が戻り続ける生活が実現するのではないか」ということだ。

マイホーム買い替えで、23年の大型ローン控除が実現

 ここで、住宅ローン控除について、基礎知識をまとめたい。

 住宅ローン控除は、住宅ローンを借りて住宅を取得したり、一部の改修工事を行うと、年末のローン残高に応じて税金が還付される制度。前身となる住宅取得控除(これは、住宅ローンを利用しなくても可だった)は、1972年(昭和47年)に生まれ、毎年2万円で3年間、計6万円という額だった。今から考えれば、わずかな額だ。

 それが住宅ローン控除に代わり、昭和の終わりには毎年20万円で5年間、計100万円となった。現在の水準よりだいぶ低いが、それでも当時は大騒ぎだった。というのも、サラリーマンでこんなに多くの金額を還付してもらえることなど、普通はなかったからだ。

 以後、時代とともに住宅ローン控除の額は大きくなり、これまでの最高額は09年から11年の「毎年60万円で10年間、計600万円」というもの。この額は長期優良住宅の認定を受けた住宅を取得したときのもので、一般の住宅購入であれば、毎年50万円まで、10年間で計500万円というのが最高額(09年〜10年)だ。

 その2009年から2010年にかけて入居となる住宅を買った人は、去年(18年)12月末、もしくは今年12月末で、住宅ローン控除の期間・10年が満了となる。

 その人が、来年12月31日までに入居する住宅に買い替えると、新たに10年+3年の住宅ローン控除が利用できる。合計で23年間、大型の住宅ローン控除を受け続けることができるわけだ。

23年間、所得税がほとんど戻ってくる

 毎年50万円まで、もしくは毎年40万円までの住宅ローン控除は、恩恵が大きい。サラリーマンで所得税が年間40万円となるのは、税込み年収が700万円以上の人と考えられるので、それだけ大きな控除があると、所得税のすべて、もしくは大半が戻ってくるという人が多くなる。

 09年から10年に入居するマイホームを買った人であれば、来年12月末までに入居できる住宅に買い替えることで、23年間、住宅ローン控除で、払った税金がほとんど戻ってくる生活を続けることができるわけだ。

 その23年間は、ちょうど子どもの教育費がかかる時期にあたる、という人も多いはず。子育てにお金がかかる時期に、毎年税金が戻ってくるのはありがたいに違いない。

 2つの住宅購入で住宅ローン控除を続けて利用することは問題ない。ただし、住宅ローン控除は、住宅を売ったときの利益(分かりやすく言えば、買った時よりも高く売れた差額)に対する税金を払わないで済む「3000万円特別控除」との併用はできない。

10年前のマンションは、多くが値上がりも値下がりもなし

 では、09年から10年に入居となった住宅は、現在、中古で値上がりしていないのか。

 マンションの中古価格を調べてみると、都心立地で大きく値上がりしているものもあるが、準都心や郊外立地のものの多くは値上がりも値下がりもせず、購入時と同じくらいか少し下がったくらいの中古価格で取引されている。「3000万円特別控除」を利用する必要がないため、住宅ローン控除を続けて利用しやすいわけだ。

 具体的に「09年から10年に入居となったマンション」の名前をあげてみよう。それらは、08年から09年にかけて分譲されたマンションなのだが、マンション史上に残る有名物件が並んでいることに驚いた。まさに、お宝物件、お宝マンションだったのである。

●09年から10年に入居となったマンション例

東京都内

パークシティ浜田山

二子玉川ライズ タワー&レジデンス

武蔵野タワーズ スカイゲートタワー

シティタワー麻布十番

パークコート麻布十番ザ・タワー

大崎ウエスト シティタワーズ

プラウド阿佐ヶ谷

パークコート赤坂ザ タワー

パークタワーグランスカイ

亀戸レジデンス

神奈川県

上大岡タワーザレジデンス

シンカシティ ステーションスイート

ベリスタ溝の口

フォレシアム

ヨコハマ オール パークス

埼玉県

イーストゲートタワー川口

ザ・大宮タワーズ

ライオンズ上福岡ステーションマークス

千葉県

ガレリア・サーラ

プラウドタワー稲毛

ブリリア稲毛

ユトリシア

大阪府

THE KITAHAMA(ザ・キタハマ)

N4TOWER(エヌフォータワー)

ベリスタタワー福島

ヴィークタワー南堀江

大阪市内 N4TOWERの共用部。建物完成時に筆者撮影
大阪市内 N4TOWERの共用部。建物完成時に筆者撮影

 以上は、08年から09年にかけて分譲されたマンションの一部。それらに住んでいる人は、買い替えによって、23年間の住宅ローン控除を実現することができる……が、好立地でつくりのよいマンションが多く、手放す気になれるかどうか。そこが一番の問題になりそうだ。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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