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駅徒歩5分で3LDKが2400万円台から。相続にも有利。知られざる「定借マンション」の魅力

櫻井幸雄住宅評論家
川口市内で3LDKが2400万円台のマンション、モデルルーム。筆者撮影

 「リビオシティ川口元郷」、「ブリリアシティ三鷹」、「パークコート渋谷 ザ タワー」……いずれも、現在分譲中の定期借地権付きの大規模マンションだ。

 定期借地権、略して「定借」は土地を期限付きで借り、建物は自分のものになる、という方式のため、3つのマンションはいずれも価格が抑えられている。

 「パークコート渋谷 ザ タワー」は既報渋谷公会堂跡地の超高層マンションが示す、令和は「利用価値」の時代のとおり約40平米の1LDKが8290万円、約74平米の2LDKが1億2540万円など。これは、都心一等地のマンションとして、所有権分譲のマンションより3割以上安い。

 「ブリリアシティ三鷹」はJR中央線三鷹駅からバス利用となるが、スーパーマーケットが隣接して生活は便利。その2LDKは3500万円台からの設定で、3900万円台最多予定。埼玉県川口市の「リビオシティ川口元郷」にいたっては東京メトロ南北線の川口元郷駅から徒歩5分で、3LDKが2400万円台からというから、驚いてしまう。ほとんど全額の35年ローンを組んでも、毎月の返済金は6、7万円で済む価格水準だ。

 価格に納得感が大きいため、「リビオシティ川口元郷」は販売センターへの来場者数が1000組、問い合わせ件数は1500件を突破。販売開始から7ヶ月で120戸が成約する人気マンションになっている。

定借・大規模マンションが増えた背景にある、「用地不足」

 定借マンションは毎年一定数分譲されてきたが、昨年末から首都圏で目を引く物件が増え始めた。理由は、総戸数が200戸を超える大規模の定借マンションが続々出てきたことにあるだろう。一般のマンションでは大規模物件が減っている。そこに、大規模の定借マンションが増えたので、目立つわけだ。

 一般の大規模マンションが減った理由は、大規模マンションを建設できる広い土地の売り物が減り、希に出る広い土地はホテルやオフィスビル、商業施設用に高値で買い取られてしまうからだ。大規模マンションをつくりたくても用地が手に入りにくくなった。

 その点、定借であれば、都心や駅近で広い土地がマンション用に活用されやすい。というのも、「この土地は手放したくない」と考えている地主も、将来戻ってくるのなら活用してみようという気持ちになるから。好立地の大規模定借マンションが増える図式が生まれるわけだ。

 総戸数505戸の「パークコート渋谷 ザ タワー」は都心立地、総戸数291戸の「リビオシティ川口元郷」は駅から徒歩5分、総戸数436戸の「ブリリアシティ三鷹」は三鷹や吉祥寺を生活圏とするマンションで、立地の魅力は大きい。そして、共用施設が充実する大規模であり、価格が抑えられているので、注目度が高まるのは当然といえる。

借地期間は65年から約70年の長期設定

 でも、「定借マンションは、ずっと住み続けることができないんでしょ」と思われるかもしれない。確かに、初期の定借マンションは「借地期間50年」になるケースが多く、その場合、人生の最後期にマイホームを失うリスクがあった。

 しかし、3つの定借マンションは借地期間が長い。いずれも65年から約70年という長い借地期間が設けられている。これなら、30代で購入しても、死ぬまで住み続けることができるだろう。

 といっても、定借マンションを購入する人は、別の活用方法を考える。それは、賃貸に出す活用法で、渋谷公会堂跡地の超高層マンションが示す、令和は「利用価値」の時代でも説明した。

 ここでも概略を記すと、次のようになる。

 会社勤めしている間は住み続け、リタイアした後に賃貸に出す。この方法なら、65年から70年の定借期間のうち、後半の30年くらい賃貸に出すことができる。その家賃収入と年金で、高齢者施設に入ったり、物価の安い海外や地方に移住する道が開ける。

 都心や駅近、人気のある場所の近くであれば、賃貸で借りてくれる人は多いだろう。大規模であれば、共用施設が充実するので、30年後の家賃は上がっていることが予想され、老後の生活が潤うはずだ。

将来は家賃収入が見込め、相続にも有利

 

 定期借地権付きマンションは、ほかにも多くの利点を生みだす。まず、安く買えるのでローン返済が楽。その分、子どもの教育や家族旅行など思い出づくりにお金をまわすことができる。教育や思い出も、子どもに遺す財産だ。この財産には相続税がかからないし、相続争いも生じさせない。

リビオシティ川口元郷のモデルルーム。住戸内も魅力的だ。筆者撮影
リビオシティ川口元郷のモデルルーム。住戸内も魅力的だ。筆者撮影

 また、相続で定借マンションを子に渡した場合、相続税が安くなる、というメリットもある。なにしろ、土地は所有しないので、相続するのは建物だけ。その建物は40数年で減価償却するからだ。

 定借マンションであれば相続時の税金で頭を悩ますことがなく、高い家賃を稼ぎ続けてくれる。そのメリットを考えると、50代で定借マンションを購入するのもわるくない。

 50歳で70年定借のマンションを購入すると、単純計算で120歳まで住み続けることができる。しかし、平均寿命で言えば、男性81歳で女性87歳。仮に90歳まで生きたとして、残り期間30年の定借マンションが子に相続される。

 その定借マンションを毎月15万円の家賃で貸すことができれば、毎年180万円の家賃収入が見込め、30年で5400万円。都心マンションであれば、さらに高い家賃収入が見込める。それもまた、好立地・大規模定借マンションの隠れた旨みということができる。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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