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「駅までバス10分」のマンションで、第1期140戸が即日完売した理由

櫻井幸雄住宅評論家
吉祥寺駅までバス10分を示すジオラマ。手前がマンション。奥に駅がある。筆者撮影

 分譲マンションは駅に近い物件ほど人気が高い。理由は便利だし、資産価値が高いとみなされるからだ。

 駅に近ければ便利なことはいうまでもない。加えて、「資産価値が高い」とは、将来中古で高く売れることや賃貸で高い家賃を稼ぐことができることを意味する。

 この資産価値は駅に近ければ近いほど高まる。駅直結のマンションが理想だが、駅から徒歩3分以内であればいうことなし。徒歩5分以内なら合格。徒歩7分以内が許容範囲……そのように、「駅近」が重視される結果、駅から離れたマンションなど買うべきでない、という極端な意見も生まれてしまった。

 ところが、11月末に「駅までバス約10分」のマンションが第1期140戸を即日完売させる、という驚きの出来事が東京都下で起きた。

最寄り駅は、住みたい街の上位常連「吉祥寺」

 驚くべき現象が起きたのは、野村不動産の「プラウドシティ吉祥寺」。全678戸の大規模マンションで、最寄り駅となるJR中央線吉祥寺駅周辺は、各種の「住みたい街ランキング」で上位の常連エリア。街の魅力はとてつもなく大きい。

 しかし、「プラウドシティ吉祥寺」は、駅に近いマンションではない。吉祥寺駅までバス10分(歩けば23分)となる。ちなみに、吉祥寺駅から同マンションまでの下りバス所要時間は6分。駅までの上りより所要時間は短くなるが、バス便立地であることは変わりがない。

 にもかかわらず、140戸もの住戸が一気に売れたのは、いくつもの納得材料があったからだと考えられる。

価格と広さ、そしてバス便の使い勝手のよさに納得

 「プラウドシティ吉祥寺」の住戸は、広くて安い。住戸の専有面積は約66~90平米で、第1期として分譲された140戸の価格は4874~8987万円。最多価格帯5400万円台だったので、5000万円台で購入できる3LDKが多い設定である。

 吉祥寺駅周辺は人気エリアなのだが、駅に近い場所にマンション用地は滅多に出ない。そして、もし新築分譲マンションが出れば、都心並の価格設定になってしまう。

 吉祥寺駅徒歩5分以内の新築マンションを買おうとすると、3LDKが8000万円以上が相場価格だ。吉祥寺駅から徒歩10分程度でも、3LDKが6000万円を切ることは考えにくい。おそらく7000万円以上になるだろう。

 それを考えれば、吉祥寺駅からバス10分(帰りは6分)で5000万円台の3LDKが購入できるのは納得価格と思える。

 しかも、そのバス便は使い勝手がよい。まず、吉祥寺駅周辺は道路が混雑しやすいのだが、バス専用レーンが設けられているので、路線バスはほぼオンタイムで運行される。

 次に、バスの便数が多く、利用しやすい。

 同マンションの敷地内に新設のバス停が設置されるので、バス停までは徒歩0分。そのバス停から、朝の時間帯はほぼ2分間隔で吉祥寺駅行きもしくは三鷹駅行きが出る。これなら「駅から徒歩10分」に住むのと所要時間は変わらない。雨の日や暑い日は、むしろ楽だろう。

 バス便の立地でもよいか、と納得できる理由がそこにある。

マンションの敷地内からバスに乗ることができる「プラウドシティ吉祥寺」完成予想図。写真は野村不動産提供
マンションの敷地内からバスに乗ることができる「プラウドシティ吉祥寺」完成予想図。写真は野村不動産提供

「駅近」では実現できない価格と生活の豊かさ

 建設地周辺は、下連雀五丁目第二地区地区計画として公園や歩道の整備が行われ、既存のヒマラヤスギも残される。緑豊かな敷地内に商業施設、認可保育園、学童施設が設けられる。木造ゲストハウスなど共用施設も充実する。

 その住戸は、パイプスペース(竪管)を一つにまとめた「ミライフル」の採用で、無駄のない間取りを実現。システムキッチンを中央に配置し、回遊動線で家事をこなしやすいプランも提案されている。家族での楽しい生活を想像させ、インテリアセンスのよいモデルルームも購入意欲を盛り上げる。

システムキッチンを中心に効率の良い家事動線が確保されるモデルルーム。筆者撮影
システムキッチンを中心に効率の良い家事動線が確保されるモデルルーム。筆者撮影

 このように、生活を豊かにしてくれる新築マンション3LDKを吉祥寺で、そして5000万円台という予算で購入しようとしたら、「駅近」は無理だ。

 「駅近」にこだわるなら、もっと高い価格にするか、同予算で狭く、使いにくいプランを甘受しなければならない。

 駅近ならばたしかに「資産価値」は高いだろう。が、その「資産価値」は、本来投資目的の不動産購入者が重視する指標。自ら住む目的で購入し、永住するつもりの人であれば資産価値以外の価値も重視したい。

 資産価値にとらわれすぎず、他の価値も大事にする人たちが、今、「プラウドシティ吉祥寺」のようなマンションに注目し始めたのである。

ゆったりした広さのモデルルーム主寝室。照明で浮いたように見えるベッドが欲しくなった。筆者撮影
ゆったりした広さのモデルルーム主寝室。照明で浮いたように見えるベッドが欲しくなった。筆者撮影
住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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