Yahoo!ニュース

大和厚木バイパスにある「そば処あさひ」人気の秘訣は奥深いつゆと地物野菜を使った天ぷらとサイドメニュー

坂崎仁紀大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト
大和厚木バイパス脇で元気に営業している「そば処あさひ」(筆者撮影)

 神奈川県大和市を東西に走る国道246号線と南北に走る厚木街道が交わる大和厚木バイパス脇で元気に営業している人気大衆そば店がある。「そば処あさひ」だ。1983(昭和58)年創業の古参店である。

 店はコロナ禍でさまざまな苦労があったそうだ。ようやく第7波が下火になってきたので、JR相鉄線乗り入れルートを使って久しぶりに「そば処あさひ」を訪問してみることにした。

相鉄線相模大塚駅と「そば処あさひ」の位置(筆者作成)
相鉄線相模大塚駅と「そば処あさひ」の位置(筆者作成)

「そば処あさひ」は相模大塚から徒歩約18分

 JR武蔵小杉駅から相鉄線直通で相模大塚まで乗り換えなしで約40分で到着する。大変便利だ。相模大塚から厚木街道と並行した裏道を歩いていくと約18分で大和厚木バイパスの高架下交差点に出るので、そこを左折して100m先の左手に「そば処あさひ」がみえてくる。小田急線鶴間駅から歩くという方法もある。もちろん自動車なら国道246号線の大和厚木バイパスを目指す。

JR武蔵小杉駅から相鉄線相模大塚駅へ(筆者撮影)
JR武蔵小杉駅から相鉄線相模大塚駅へ(筆者撮影)

相模大塚から北方向へスタート(筆者撮影)
相模大塚から北方向へスタート(筆者撮影)

厚木街道を鶴間方向へ歩く(筆者撮影)
厚木街道を鶴間方向へ歩く(筆者撮影)

大和厚木バイパスを左折して100mほど進む(筆者撮影)
大和厚木バイパスを左折して100mほど進む(筆者撮影)

大和厚木バイパス沿いにあるコンクリート打ちっぱなしの店舗外観(筆者撮影)
大和厚木バイパス沿いにあるコンクリート打ちっぱなしの店舗外観(筆者撮影)

店は早朝6時前から営業開始

 到着時間は午前11時前。落ち着いた雰囲気でゆったりとした時間が流れている。奥から女将の座間弘美さんが笑顔で挨拶してくれた。

 店は早朝6時から営業開始だが、急ぎの常連のために少し早めにフライングで開けている。長距離トラックや配送の車などにとって、広い駐車場があることは何より便利である。そうした常連が朝から大挙して入店して来る。

 昼に近づくと今度は近所の人たちがマイカーや営業車に乗って来店する。主婦の仲間が自転車で来店したりする。

広い駐車場はありがたい(筆者撮影)
広い駐車場はありがたい(筆者撮影)

週末はマイカーが増加して賑わう

 週末土曜日になると、営業車はぐっと減ってマイカーが増えるという。ドライブの途中に立ち寄ることが多いとか。そばをサクッと食べて湘南や伊豆箱根に遊びに行くというパターンだったり、近所に買い物に来てついでにランチに立ち寄るというパターンである。夫婦やカップルなども多い。従業員はすべて女性なので、女性客も入りやすいのだろう。     

 他にもマスコミにしばしば登場しているためか、一人でぷらっと来て写真などを撮っていく若い世代も多い。

美味しくてからだによいものを提供

 「そば処あさひ」は素材にこだわる、美味しくてからだによいものを提供したいという女将の座間弘美さんの食への思いが基本にある。つまり、あまり効率のいい商売はしていない。

 つゆ・出汁は秀逸だ。つゆには浄水ろ過機「シーガルフォー」を通した水を使う。出汁は本枯れかつお節や日高昆布をふんだんに使う。1日に何度か追いがつおして味の奥深さを出す。

 そばは秦野の製麺屋に頼んで開発した茹麺でそば粉の配合は7割近いという。急ぎ客にもすぐに提供でき、味もよいと評判である。

「コロッケそば」も人気で、つゆが奥深いうまさである(筆者撮影)
「コロッケそば」も人気で、つゆが奥深いうまさである(筆者撮影)

地物を中心とした国産の野菜で天ぷらを提供

 天ぷらの食材は地物を中心とした国産の野菜を使う。少なめに揚げて常時ほぼ揚げたてを提供できるように工夫している。油はキャノーラ油を使用。社長の座間洋さんが市場に行き、いい地物野菜があれば大量に買い付ける。玉子は丹沢にある養鶏場をいくつか回り、玉子の黄身がきれいな最良のものを買い付けている。

かき揚げもできるだけ揚げたてを提供(筆者撮影)
かき揚げもできるだけ揚げたてを提供(筆者撮影)

「スパムにぎり」などサイドメニューが充実

 そして「スパムにぎり」などのサイドメニューが充実している。この日もたまご焼きが入ったタイプやガーリックのスパムが登場していた。おにぎりも定番以外に「野沢菜」が新登場していた。スパイスが利いた「カレーライス」もうまい。

ずらっと並んだサイドメニューたち(筆者撮影)
ずらっと並んだサイドメニューたち(筆者撮影)

大きいスパムにぎり(プレーン)(筆者撮影)
大きいスパムにぎり(プレーン)(筆者撮影)

いか天そばと半カレーライス(筆者撮影)
いか天そばと半カレーライス(筆者撮影)

長考必至のメニュー板には美味しいものがいっぱい

 メニュー板はいつも賑やかで何を頼むか悩んでしまう。訪問当日は地物の春菊が手に入ったとのこと。春菊天があるので「春菊天うどん」と「スパムにぎり(プレーン)」を注文した。お盆をもって左に移動していき、注文が出来上がるのを待つ。厨房の様子がみられてなかなか楽しい。

いつも何を頼むか悩むメニュー板(筆者撮影)
いつも何を頼むか悩むメニュー板(筆者撮影)

おすすめに「春菊天」を発見(筆者撮影)
おすすめに「春菊天」を発見(筆者撮影)

 注文受け渡し口の上をみると、そこには大和食品衛生協会の衛生管理優良施設★★★が並んでいる。令和4年度は大和食品衛生協会長の表彰を受けるというから衛生管理は徹底しているようだ。

大和食品衛生協会の衛生管理優良施設★★★でもある(筆者撮影)
大和食品衛生協会の衛生管理優良施設★★★でもある(筆者撮影)

テラス席で堪能する「春菊天」の味は格別

 待つこと2-3分で注文品が出来上がったので、テラス席に移動した。立体的な揚げ姿の春菊天は箸で崩すとすぐに解れていく。カリッとした食感と口いっぱいにひろがる味が香ばしい。つゆはさほど濃くない綺麗な色である。つゆをひと口のんでみる。出汁がじんわりと利いた奥深い味である。このつゆが忘れられなくて再訪してしまうのだ。少しだけのったわかめとの相性もいい。

テラス席で「春菊天うどん」をいただく(筆者撮影)
テラス席で「春菊天うどん」をいただく(筆者撮影)

つゆは綺麗な色をしている(筆者撮影)
つゆは綺麗な色をしている(筆者撮影)

「春菊天」は箸で簡単に解れていく(筆者撮影)
「春菊天」は箸で簡単に解れていく(筆者撮影)

これからも「地元に根付いた気取りのない店」に

 食べ終わった頃、偶然に座間洋社長にお会いすることができ、お客様への挨拶をいただくことができた。

「いつも、あさひを御贔屓にしていただきありがとうございます。コロナ禍では一時閉店を余儀なくされるなどお客様にもご迷惑をおかけしました。その後下火になってきましたが、今度は食材の値上がりなど悩みが尽きません。食材を大量に仕入れコストを抑えたり、地物の野菜を仕入れるなど工夫して対応しています。これからもお客様に、より一層喜ばれるよう新しいメニューやサービスを考えて精進していきたいと思います。是非またお越しください」

 「そば処あさひ」はいまや「地元に根付いた気取りのない店」「普段使いの店」「ちょっと寄るのに便利な店」「そばや天ぷら・サイドメニューがうまい店」として人気となっている。季節ごとの新メニューの登場も待ち遠しい。また訪問しようと思う。

そば処あさひ

住所:神奈川県大和市上草柳541

営業時間:月~土6:00~14:30     

定休日:日祝

http://www.asahisobaudon.jp/index.html

大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト

1959年生。東京理科大学薬学部卒。中学の頃から立ち食いそばに目覚める。広告代理店時代や独立後も各地の大衆そばを実食。その誕生の歴史に興味を持ち調べるようになる。すると蕎麦製法の伝来や産業としての麺文化の発達、明治以降の対国家戦略の中で翻弄される蕎麦粉や小麦粉の動向など、大衆に寄り添う麺文化を知ることになる。現在は立ち食いそばを含む広義の大衆そばの記憶や文化を追う。また派生した麺文化についても鋭意研究中。著作「ちょっとそばでも」(廣済堂出版、2013)、「うまい!大衆そばの本」(スタンダーズ出版、2018)。「文春オンライン」連載中。心に残る大衆そばの味を記していきたい。

坂崎仁紀の最近の記事