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東西線「西葛西駅」の人気立ち食いそば屋「そば処やしま」そのうまさの理由を探る

坂崎仁紀大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト
西葛西メトロセンター2番街にある「そば処やしま」(筆者撮影)

 東京メトロ東西線は荒川を渡ると旧江戸川まで東京都江戸川区内を走る。その間、西葛西駅と葛西駅がある。西葛西駅にはうまい立ち食いそば屋がある。「そば処やしま」である。今回はこの店の特徴などを解説しよう。

賑わいを見せる西葛西駅北口(筆者撮影)
賑わいを見せる西葛西駅北口(筆者撮影)

「そば処やしま」は西葛西駅高架下のメトロセンター2番街にある

 場所は駅改札を出てすぐの高架下にあるメトロセンター2番街。いつ来ても客がひっきりなしに訪れる人気店である。店はアクリル板を設置して8人で一杯になる立ち食いカウンターと小さなテーブル席が用意されている。「そば処やしま」は「安い・はやい・うまい」をそのまま現実化したような店である。

店は8人で一杯になる立ち食いカウンターと小さなテーブル席が用意(筆者撮影)
店は8人で一杯になる立ち食いカウンターと小さなテーブル席が用意(筆者撮影)

創業当初から生麺茹で立てを提供する

 「そば処やしま」は西葛西駅ができた1979年の創業である。現オーナーの池田克禎さんの両親が当初から生麺茹で立てを提供するそば屋として開業した。当初は店でそばとうどんを自家製麺し、一番出汁をとって自家製返しでつゆを作り、天ぷらを揚げていた。

 当時、生麺茹で立てをうたった店としては大手チェーンの「小諸そば」が有名だった。茹で麺を扱う個人経営店が多く誕生した当時にあって、先見の明があったということになるだろう。

いつ行っても混雑している人気店である(筆者撮影)
いつ行っても混雑している人気店である(筆者撮影)

そばのノウハウを立ち食いスタイルに合うように効率化

 開業前は新橋の老舗名店で修業したそうだ。そば職人のイロハは習得していたが、立ち食いそばとなると勝手が違う。品質や味を維持しながら、立ち食いスタイルに合うように効率化・マニュアル化・コストカットを行っていった。1990年代にそばは国産そば粉を中心とした配合で信州の製麺所に発注し、味の改良を常に行ってきた。また出汁やつゆの味の安定化をはかり、新メニューを取り入れながら今日に至っている。

 開業後すぐにうまいと話題となり人気店となった。当時、マスコミやテレビでも随分取り上げられた記憶がある。

 個人的には創業当時から仕事で西葛西に行くことが多く、その度に立ち寄って食べていたなつかしい店である。

豊富なメニューと安い価格(筆者撮影)
豊富なメニューと安い価格(筆者撮影)

久しぶりに「春菊天そば」を注文

 この夏、コロナ禍前の2019年以来3年ぶりに訪問してみた。西葛西は最近、インド系のスパイスなどを扱うショップが増えているそうだ。改札を出てすぐに到着する。

 久しぶりに「春菊天そば」を注文した。いつものようにどんぶりがすぐに到着した。とにかくいつ訪問しても、注文してから10秒もしないですぐにどんぶりが提供される。小ぶりでやや深めのどんぶりが特徴的だ。どんぶりには春菊天とネギ、そしてわかめが入る。盛り付けもいい。

人気の春菊天そば(筆者撮影)
人気の春菊天そば(筆者撮影)

 生麺提供のそばはやや細めのタイプで、冷しで食べても温かいそばでも、のど越しがよい。そして「春菊天そば」のつゆはすごくアツアツである。その味は出色のうまさで、本枯れ節を中心に出汁をとった本格的なつゆを使用している。やや甘めでムラサキの綺麗なタイプで、濃すぎることはなく口当たりがすばらしい。

大きな春菊天とアツアツのつゆがたまらない(筆者撮影)
大きな春菊天とアツアツのつゆがたまらない(筆者撮影)

天ぷらはいつも揚げ立てに近い状態に

 天ぷらは小ロットで少しずつ揚げているのでいつも揚げ立てに近いものを選ぶことができる。春菊天は丸く大きく、しかもカラッと揚がっている。春菊の香りがたまらない。

 春菊天以外にもかき揚げ天、ごぼう天、げそかき揚げ天、ちくわ天、なす天、鶏天、豚天、いか天、海老天と種類が豊富だ。どれも大ぶりでどんぶりからはみ出すほど。油切れもよい。大きな豚天は2枚のる。そして、若者にはコロッケも人気があるそうだ。最近は、かき揚げ天、げそかき揚げ天、春菊天、いか天などが人気だという。

夏場に人気の冷しそばのラインナップ

 夏場に登場する冷しそばも、「冷しかけそば」に各種天ぷらアラカルトだけでなく、「冷したぬきおろし蕎麦」、「冷しきのこおろし蕎麦」、「冷し山菜とろろ蕎麦」など8種類もラインナップがそろう。

冷しそばも充実(筆者撮影)
冷しそばも充実(筆者撮影)

「冷したぬきおろし蕎麦」は秀逸な味

 別の日に訪問し「冷したぬきおろし蕎麦」を注文した。こちらもまたどんぶりがすぐに登場した。平皿の上に、わかめ、きゅうりの千切り、揚げ玉、ねぎ、中央に大根おろしがのっている。この冷たいそばがまた堪らないうまさである。揚げ玉がカリカリ音をたてて心地よい。冷したぬきそばに大根おろしがのることで、爽やかさがグンとアップしている。なかなかよいメニューである。夏の暑い時期を乗り切るのに、冷しメニューは大人気だ。

麺はコシがあってうまい「冷したぬきおろし蕎麦」(筆者撮影)
麺はコシがあってうまい「冷したぬきおろし蕎麦」(筆者撮影)

 他にもサイドメニューとして「やしまの飯」が充実している。「海老天丼」、「海老天・イカ天丼」、「かき揚げ天丼」、「鶏天丼」の4種類がそろう。いつ行ってもどのメニューを頼むか悩むこと間違いなしである。

コロナ禍そしてこれからの「そば処やしま」の立ち位置

 訪問時、偶然にオーナーの池田克禎さんにお会いすることができた。池田さんは今から20年前、先代の味を引き継いで経営参画された。

「最初はそばについては素人でしたが、その分、古い慣習にとらわれず、自由に動くことができて、新しい取り組みをたくさん試すことができました。両親が作ってきた味をどうにか守って、味を改善して前へ進んでいきたい」と熱く語る。

 コロナ禍での経営は困難を極めたという。「以前、カウンターは11人並べましたが、パーテーション設置で8人仕様になり、それだけで売上は3割減ですから大変です。安全にそして、効率よく提供していかなければなりません。『げそかき揚げそば』など新しいメニューを開発して集客をはかることも今後はさらに必要となるでしょう。負けてはいられませんね」

最近人気の新メニュー「げそかき揚げそば」(筆者撮影)
最近人気の新メニュー「げそかき揚げそば」(筆者撮影)

 池田さんは「そば処やしま」西葛西店に続き、行徳店を2014年12月にオープンさせた。その人気は徐々に広まっている。今後の展開も楽しみである。また訪問しようと思う。

そば処やしま

住所:東京都江戸川区西葛西6-14-1 西葛西メトロセンター2番街

営業時間:月~金6:40~21:15

     土日祝6:40~17:00

大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト

1959年生。東京理科大学薬学部卒。中学の頃から立ち食いそばに目覚める。広告代理店時代や独立後も各地の大衆そばを実食。その誕生の歴史に興味を持ち調べるようになる。すると蕎麦製法の伝来や産業としての麺文化の発達、明治以降の対国家戦略の中で翻弄される蕎麦粉や小麦粉の動向など、大衆に寄り添う麺文化を知ることになる。現在は立ち食いそばを含む広義の大衆そばの記憶や文化を追う。また派生した麺文化についても鋭意研究中。著作「ちょっとそばでも」(廣済堂出版、2013)、「うまい!大衆そばの本」(スタンダーズ出版、2018)。「文春オンライン」連載中。心に残る大衆そばの味を記していきたい。

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