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値上がりが相次いだ2021年、来年のために見直したい固定費節約術

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(提供:イメージマート)

食品や光熱費が値上がりした2021年

今年も残すところあと1か月。2020年からのコロナ禍が2021年も続く中、家計にとっての脅威はじわじわと物価が上がっていることだ。パン、マヨネーズ、コーヒー、アイスクリーム、ペットボトル飲料といった食品類に加え、電気・ガスといった日々の生活に直結するものが値上がりしている。文房具類や学生服なども値上げされ、子育て世帯の家計を直撃している。

給与が上がらないのに2022年も物価の上昇は続く?

物価が上がるときには給与も上がるのが通常だが、来年以降も給与が大きく上がることはあまり期待できそうもない。日本人の平均給与は長く横ばいが続いている。にもかかわらず、すでに電気・ガス料金は来年の値上げが予測されている。2022年も物価の上昇は続きそうな気配が濃厚だ。それなら防衛策として不要な支出を減らして家計を引き締めるしかないだろう。しかし、冬に向かい寒さが身に染みる季節に節約を始めるのはつらい。

物価が上がる中で値下げ競争が起きたものは?

値上がりのニュースの中で、値下げ競争が起きているのが、携帯電話料金と銀行の振込手数料だ

テレビをつけると安さを強調するスマートフォンの料金プランのコマーシャルがこれでもかと流れている。が、プランの見直しをした人はまだ一部のようだ。世界的に見て日本は携帯電話料金が高止まりしていることから、値下げを国が主導している。携帯電話の使い方にもよるが、料金プランを見直すことで月当たり1人数千円は安くなるだろう。例えば家族4人でスマホを使っているなら月1万~2万円の節約となる。見直しの手続きを行えば、あとは何もしなくても毎月の支出が減るのだから、値札を眺めながら食品や日用品を節約するよりも効率的だ。

銀行の振込手数料も同様だ。キャッシュレス化を進めたい国の方針に対し、振込手数料の高さがそれを阻害しているということで、国の主導で2021年10月以降、多くの銀行が振込手数料を値下げした。他行宛てにインターネットで振り込みをした場合の最安値は77円(住信SBIネット銀行、消費税込み1回あたりのネット振込手数料、2021年11月27日現在)。これまでよりも安く振り込めるだけではなく、銀行の選び方や使い方によっては無料で振り込むこともできる。

せっかく国が値下げを誘導しているのだから、乗らない手はない。

固定費の代表である携帯電話料金を見直そう

まずは携帯電話の料金から。もともと携帯電話会社は、ご存じの通りNTTドコモ、au(KDDI)、SoftBankの3社で、プランによって多少の差はあるものの似たり寄ったりの料金体系だった。ここに殴り込みをかけたのが安さを売りにした楽天モバイルだ。楽天モバイルは最終的には通信ネットワーク網も自社で持つことを目標に大手の一角を占めることを目指している。データ通信量は使った分だけ払えばいい料金体系なので、通信料が少ない人には大手3社よりもかなり割安になる。

加えて、数年前から台頭してきているのが、大手からネットワーク網を借りることで自前の設備を持つ負担を減らして安い料金を提供する格安スマホと呼ばれる新ブランドだ。OCNモバイル、mineo、イオンモバイルなど。向いているのはやはりデータ通信量が少ない人で、月あたり数千円は安くなるだろう。

こういった動きに対抗するため、大手3社は料金が割安の新料金プランを打ち出してきた。NTTドコモのahamo、au(KDDI)のpovo、SoftBankのLINEMOだ。データ通信量が月20GBまでなら、数千円安くなる。

ただし、料金が安いということは、あまり人件費などをかけられないということで、格安スマホや新料金プランは原則、ネットで申し込んで、自分でSIMカード(通信サービスを利用するためのICカード)の差し替えを行う作業が必要となる。これがネックとなって見直しをためらう人もいそうだ。

その場合は、携帯電話会社を変えないまでも現在の料金プランが自分の使い方に合っているかの確認は最低限、行いたい。実際に使っているGB数よりも多めの契約になっているケースはけっこうあるようだ。また格安スマホの中には直営店を持っていたり、家電量販店が契約を代行したりするところもある。気になる料金プランがあるなら、ぜひ検討したい。

事前に注意点を確認

注意点は、大手ブランドから乗り換えた場合、キャリアメールが使えなくなること、テザリングが使えない場合があること、使えたとしてもデータ通信量が小さい場合は使いきってしまうかもしれないこと、現在使っているプランを解約する際に違約金が発生するケースがあることなどだ。目安としてはテザリングも含めたデータ通信料が月20GB以下なら見直せば安くなるはず。ひと手間かかるが、安くなる可能性が高い人はチャレンジする価値がある。

インターネットバンキングなら無料か77円で他行に振り込める

銀行の振込手数料は、振込金額、振込方法、振込先が自行宛てか他行宛てかにより違ってくる。最も高いのは、都市銀行の窓口で他行宛てに3万円以上を振り込んだ場合で、770円~880円もかかる。2021年9月までは880円から990円かかっていたから、これでも110円安くなった。キャッシュカードを使ったATM振込だと手数料は330円程度なので窓口よりも300~400円は安くすむ。インターネットバンキングを使った振り込みなら、都市銀行の最安値は165円(りそな銀行、他行宛て3万円以上の振込)、ネット銀行は冒頭で紹介した通り77円だ。

さらにネット銀行では他行宛ての振込手数料が月当たり一定回数無料のところが多い。残高などに条件を設けているケースもあるが、条件なしで月1回まで無料で他行に振り込めるのはソニー銀行、新生銀行、住信SBIネット銀行だ。

都市銀行でも、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行は、残高などの条件を満たせば月当たり一定回数、他行宛てのネット振込手数料が無料になる。

セキュリティ対策を行った上でインターネットバンキングを活用したい

インターネット時代だが、ネットでの金融取引は実はメールや検索、インターネットショッピングほどには普及していない。不正な取引への不安があるからだろう。インターネットバンキングを使ったネット振込はPCやスマホで利用できる。PCにはセキュリティソフトを導入するなどし、対策をしっかり行った上で活用すれば、手数料が安くなる。また、各銀行が提供するスマホアプリをインストールして利用すれば、スマホのブラウザからログインするよりも安全性が高くなる。

定期的な振り込みがある人は、まずは使っている銀行で無料にする方法がないかを確認し、インターネットバンキングやネット銀行を使うことも検討してはどうだろうか。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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