コロナ禍の今こそ始めたい貯蓄生活
コロナは災害、家計への影響の差は大きい
新型コロナウイルスが世界に広がって1年以上が過ぎた。マスクを付け、外出を自粛し…という目に見える変化はもちろん、他人の目には見えづらいけれど、各家庭の財布への影響も大きかったはずだ。いや、過去形ではなく、今後もコロナおよび、コロナによる社会の変化がもたらす家計への影響は相当に大きくなると予想する。
まずは、この1年ほどの状況から確認したい
1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月頃から、「家計相談の内容はコロナで変わりましたか?」という質問を数回、受けた。そのたびに、なんだか申し訳ない気持ちで「いいえ、変化はありません」と答えた。私はファイナンシャルプランナーとして有料の家計相談を仕事にしている。この1年間で私が受けた家計相談の内容は、「若い夫婦の住宅購入や保険の相談」、「定年退職を控えた会社員の老後資金の相談」が主で、コロナ前と変わらない。切羽詰まった人が相談に駆け込んだのは、自治体の窓口など別の場所だと推測する。
コロナの影響を大きく受けた「飲食」、「宿泊」、「旅行」などの業種で働く人が、収入の減少や失業などにより家計に大きな打撃を受けた一方で、それ以外の人は、コロナ感染の不安を抱えて生活様式の変更を余儀なくされたものの、経済的な面での影響はそれほど大きくなかったことを実感する。影響を受けた人たちは、たまたま運悪く災害に遭ったのと同じ構図だと思う。
生命保険には「災害割増」という特約があり、不慮の事故などで亡くなった場合に死亡保険金が上乗せされる。今回のコロナでは多くの保険会社が災害割増の対象として保険金を支払っている。保険業界でもコロナは災害の一種と認識されているのだ。
経済的な災害に備えるには?
コロナが収束すれば、今後はもう突然降りかかってくる災難とは無縁でいられるのだろうか? 災害を辞書で引くと、「天災、事故などによって思いがけず受けるわざわい」などと説明されている。台風や地震といった自然災害はもとより突然の事故や感染症まで、家計に影響を及ぼす、いわば経済的な災害はこれからも何度か起きるだろう。今回は無事だった人が、ずっと大丈夫とは限らないのだ。
コロナ禍を教訓に強い家計にしていこう
そのためにはどうすればいいだろうか。次の5つを挙げたい。
- 金利は低いが、すぐに引き出して使える円預金を生活費の3カ月~6カ月分確保
- 適切な保障額での保険への加入
- 金融機関の口座とお金の流れの整理整頓
- 仕事のスキルアップ
- 積立投資による資産形成
(1)の円預金の確保の必要性は、日ごろギリギリで家計を回してきた人は、コロナで強く実感したことと思う。収入が減ったり途切れたりしたとき、すぐに使えるお金があることは最も重要だ。給付金などが受取れるとしても、それをもらうまでには数日から、場合によっては3カ月ほどかかる。まだ確保できていない人は、銀行の定期預金を毎月積立て確実に貯めよう。
(2)の保険への加入は、公的年金や公的医療保険などの社会保険からの給付を知った上で、それぞれの状況に合わせて不足分を補いたい。
(3)の家計の整理整頓も、実現できていない人は早急に取り掛かりたい。取引する金融機関を絞り込み、収入から支出までのお金の流れがすぐにわかるようになっていれば、無駄使いを見つけやすい上に、災害に遭って混乱しているとき、自分では金融機関に足を運べず人に頼むときもスムーズだ。
(4)の仕事については、コロナにより導入が進んだテレワークなどのビジネスの変化が、コロナ後もさらに進みそうだ。これからの社会でも継続的に一定の収入を得られるか、自分の仕事の能力を客観的に把握してスキルアップを図ることも欠かせない。
(5)の資産形成は、すぐに引き出せる円預金を確保したら取り組みたい。投資の利益が非課税になる「つみたてNISA」等の口座を利用できる現在の環境を活かそう。2020年1月以降、コロナウイルスによる感染症が世界に広がったことから、直後の2月~3月に世界の平均株価は暴落した。しかし、その後は、コロナ禍が続いているにもかかわらず、平均株価は回復し、コロナ前より上昇している国もある。株式等の資産を持つ人はますます豊かになって格差が広がっている。投資信託を使って自分のお金の一部を平均株価に連動するようにしておくか、自分が働く業種とは異なる業種の会社の株式を持つことは、リスク分散になるとも考えられる。
そして、イザというときのセイフティネットは、お金のみならず、親しい人間関係も含まれる。いずれも一夜にして築くことはできないから、1日も早く取り掛かりたい。