舛添知事の疑惑をテレビはこの一カ月半伝え続けた

6月15日に辞意を表明した舛添要一東京都知事。正式には今日、6月21日に辞職するという。

4月27日発売の週刊文春で、舛添知事の公用車による別荘通いが報じられてから55日で辞職に追い込まれた。不思議なことに、法律を犯したわけではないし、主に追及されたのは都知事になる前の件だ。なぜ彼が辞めねばならないかを明確に説明できる人はいないのではないか。それなのにこれほど多くの人々に辞職すべきと断じられた政治家もいないだろう。

私は5月9日の夜、TBS「NEWS23」に出演した舛添氏があまりに部下のせいにばかりすることにあきれ果て、Yahoo!ニュースに記事を書いた。

自分で自分を炎上させてしまった舛添都知事が挽回する方法

番組放送後にTwitterを調べたら、あからさまに人びとの怒りとあきれ返った様子が表れていたので、そのデータを紹介した。多くの人の怒りに本当に火をつけたのは、この「NEWS23」出演だったかもしれない。

その後、週刊文春は舛添氏に関するスクープを連発した。他のマスメディアはその後追いをする形で、こぞって舛添氏を叩き続けた。「週刊文春にはこう書いてありました」だけで構成している番組もあった。私はそれに辟易して、5月30日にまた記事を書いた。

舛添都知事についてテレビはどれだけ伝えたか(そしてメディアのイナゴ化について)

最初の文春記事から一カ月でテレビは舛添問題をどれだけ報じてきたかを検証したものだ。

その後もマスメディアは舛添氏を叩き続けた。私はいよいよ辟易し、周囲には同様の意見も多く聞こえてきた。日本中の信頼を失っていたので辞めてしかるべきとは思うが、辞めると言うまでメディアは叩き続け、バッシングによって辞めさせられたようにも思える。さらにそれをネットが過剰に煽っていたのではないか?そんな疑問を私は感じていた。それを確認できないかと、分析会社にデータを提供してもらった。

テレビ報道は舛添氏が会見をするたびに過熱していった

まず、舛添氏の問題をテレビがどれくらい伝えたか、その推移を追ってみた。テレビ放送の内容をデータ化するエム・データ社に依頼し、TV Rankというツールで「舛添」を内容に含む番組を”見える化”してみた。

データ提供:エム・データ社
データ提供:エム・データ社

見てもらえばわかる通り、舛添氏の問題を扱った番組の数が円の連なりで示されている。文春のスクープ後すぐに連休に入ったので一度報道は中断したが、連休明け5月9日の「NEWS23」の出演から火がつきはじめた。ちょっとした法則性が見受けられ、定期的に”山”ができている。調べてみると、13日と20日の都庁での定例会見、6月1日の都議会での所信表明演説、そして6日の弁護士による第三者調査の発表時に”山”ができているのだ。要するに、舛添氏が人前に出てきて何らかしゃべるたびに、そのことがわあっと報道されている。

そのあとはワイドショーや夜のニュースでそれぞれの会見内容をフォローしたり、別の疑惑について紹介したりするのが定番化していた。会見が報じられて、そのあと一週間フォロー報道が続き、また会見が行われる、というパターンだ。

5月半ば以降からマスメディアの舛添報道が徐々に過熱し、ヒートアップしていったことがよくわかる。だがそれは、マスコミが過剰に煽ったとか、暴走したとは言えなさそうだ。むしろ舛添氏の会見にきれいに合わせて報じていっただけだと言える。ヒートアップしたとしたら、舛添氏が会見するたびに市民感覚を逆なですることを言ったり、言い訳が逆に世間の心証を害したりした結果だと解釈したほうがいいように思える。会見によって沈静化するのではなく、会見が燃料を注ぎ入れる形で燃え続けた。

Twitterの反応は、マスメディアの報道に沿った素直なものだった

では同じ時期、Twitterはどう推移したのか。ソーシャルメディアの分析会社、データセクション社に依頼し、「舛添」を含むTweetの数を出してもらった。(10%抽出データで、実数値は10倍したものと考えてほぼ間違いない)それを折れ線グラフにしたものが、これだ。

データ提供:データセクション社
データ提供:データセクション社

5月9日以降盛り上がりはじめ、13日と20日にやはり山ができている。その後5月後半は徐々に下がっていたのが、6月に入ってまた増加し、15日の辞職表明を受けて急上昇している。

私は、テレビ番組のデータとは乖離する部分が、後半に出てくるのではないかと推測していたのだが、むしろ大まかには比例しているように思えるグラフだ。Twitterの反応は、報道を受けての素直なものなのだろう。

そこをはっきりさせようと、二つのグラフを強引に重ねてみた。それがこの図だ。

画像

作ってみてびっくりした。大まかにどころか、ほぼ比例している。5月下旬には少々乖離が見られるものの、6月6日以降、つまり弁護士の会見以降、テレビ報道と明確に連動して反応が推移している。

これは、あの弁護士会見が決定的にネガティブな結果をもたらしたと言えるかもしれない。6月1日の都議会での所信表明時にはテレビ報道とTwitter件数には乖離が見られるのだが、弁護士会見後に再び相関性が出てきている。弁護士会見は、何も弁護できてなかった。それどころか不要に火に油を注いだと言えそうだ。

マスとソーシャルのメディアが煽ったのではなく、舛添氏の自責点

今回の舛添氏の疑惑発生から辞職に至るプロセスは、かなりイレギュラーで異常な現象だったと思う。明確な法律違反はないにも関わらず、日本の首都の知事が辞めてしまったのだ。そこには、マスメディアが必要以上に世間を煽ったり、ソーシャルメディアで人々が無軌道に扇動したりが潜んでいるのではないかと懸念した。

だがデータから見えたのは、マスメディアは舛添氏の会見を定期的に伝えていたし、ソーシャルメディアでは人々がその報道を見て率直に反応していたことだった。メディアが錯綜して世の中を異常にヒートアップさせた、などということはなかった。

ヒートアップさせたとすれば、それは舛添氏そのものだったと言えそうだ。意図しないにしても、会見で不信を増幅させるようなことを自ら言って、人々を自分で煽ってしまったのだ。最初の「NEWS23」で部下に責任を押し付けなければ、その後の会見で説明を先延ばしにしなければ、つまりは最初からきちんと反省してそれを言葉にしていれば、こうならなかったかもしれない。それなのに、その逆ばかりを続けてしまった。

一方で、テレビの報道の量とTwitterの件数はきれいに連動していたのも驚きだった。テレビの伝え方とネットの反応には、以前よりも明確に相関性が出てきている。相乗的に”世論”が形成されており、今年に入って文春が放り込んだネタをテレビとネットが燃やし続ける案件が続いている。「舛添疑惑」もその典型だった。過剰に煽ったとは言い難いにせよ、この相互的な世論形成が辞任に至らしめたのは間違いないだろう。極めて時代的な現象が、リアルな社会を動かしはじめているのだと思う。