BluAge(ブルーエイジ)社の大量内定取り消し事件を機に、「新卒でスタートアップなんて行くもんじゃない」という意見が多数出てきている。スタートアップに所属する社会人からも「BluAgeみたいな会社のせいで、他のスタートアップも同じだと思われたら悲しい…」という声が聞こえて来ている。

巷では「経営者がプロフィール写真で腕組みしている会社は危ない」という意見もよく聞かれる。(Bluage社のコーポレートサイトに載ったメンバー紹介がそういった写真であったため言及されている)

半分笑い話でもあるが、「確かに!」と思われる方も多いかもしれない。

企業選びの基準というのは非常に難しいテーマではあるが、今回は企業を選ぶ際に「これに該当したら警戒して!」という要素をいくつか紹介したいと思う。

スタートアップ企業を検討する方はもちろん、そうでない企業を志望している場合でも是非参考にしてもらいたい。

【警戒すべきスタートアップ企業の特徴】

●大量採用をしている

今問題になっているBluAgeも該当するが、大量採用を行っているスタートアップには最大限警戒しよう。特に新卒の大量採用は死亡フラグに近いといっても過言ではない。

仮に現在の企業規模が50名程度であれば、1学年10数名でも十分に大量採用と言えるだろう。

未経験者が大量に採用される場合、新入社員目線で見るとそれだけ手をかけて教育してもらえないという懸念がある。そして全員が幹部候補というわけにはいかないので、その大半はソルジャー枠という可能性が高い。考え方次第だが、敢えてリスクを取ってまで入社する旨味は小さいだろう。

(決してソルジャー枠での採用を否定するわけではないが、スタートアップ企業にわざわざソルジャー枠で入りたいという学生も少ないだろう)

そもそも採用人数が多いのは「大量に辞める前提で大量に採っている」というパターンもある。短期離職でも割に合うくらい待遇が良いならともかく、長く働きたいと考えているなら警戒した方が良いだろう。

また大抵の場合、スタートアップの新人育成は想定よりも時間がかかるものだ。既存社員が優秀なスタートアップほど、新卒社員の育成を甘く見ていることが多い。「優秀な自分たち」を基準に考えてしまいがちだからだ。

状況によってはマネジャー層が時間を取られて売上を上げにくくなったり、生産性が低下する恐れもある。

その間に市況が変われば増大した固定費が負担となり、その企業全体の危機につながる可能性もある。

成功しているメガベンチャーの中には、「初めて大量採用した時は社内がカオスになって、大変でした」と武勇伝のように語っている企業もあり、「大きくなる企業にはそんな時期があるものだ」と考える人もいるかもしれない。しかしその考え方は生存者バイアスがかかっている。

大量採用を経て成長した企業の裏には、大量採用をきっかけに崩壊した企業も数多く存在する。そしてそこには経歴を汚すだけに終わったり、犠牲になった人材も多い。

●事業の社会貢献性を必要以上に訴えてくる

すべての会社がそうだと言うつもりはないが、社会貢献的側面を必要以上に訴えかけてくる企業も要注意だ。

そのような企業では、「社会貢献度の高い事業をしているから、社員は頑張らなくてはいけない」という押し付けが発生する場合がある。これは経営者から社員への押しつけだけでなく、社員同士の同調圧力なども含まれる。

勘違いしてはいけないのは、「事業の社会貢献性が高い」ことそのものが悪いわけではない。事業の社会貢献性が高いことに胡座をかいて社員に「やりがい搾取」をしていたり、モラルやコンプライアンスに反する行為を正当化するのがいけないということだ。

事業の社会貢献性をアピールしてくる企業があった場合、それに共感して入社した社員を裏切らない立ち振舞いをしているかどうか見極めよう。

●資金調達以外に目立ったニュースがない

資金調達ができているスタートアップは、期待されていることは間違いないだろう。ただ残念なことに「資金調達だけが上手いスタートアップ」も存在する。新規性の高い珍しいビジネスモデルを持つ企業や、経営者のプレゼン能力が突出している企業で多い。特定の事業分野がバブルになっている時にもよく見られる。

もちろん経営者のプレゼン能力は高い方が良いのだが、事業の成長がそれに着いて行っているかどうかが問題だ。

また、「資金調達以外にもニュースはあるが、事業提携など売上拡大に直結しない話が多い」パターンも要注意だ。

学生目線で見ると、スタートアップの事業提携話は華々しいものに見えるかもしれない。ただ、内容をよく見ればその多くは売上に大きなインパクトを与えないものも含まれていたりする。

現実には「提携したは良いものの、収益にはつながらずいつの間にか無かったことになっていた」というケースが多いものだ。

スタートアップの事業提携は、提携先のネームバリューや話題性があれば良いというものではない。小手先のPR手段に留まらず、売上の増加や質の高いユーザーの確保などの成果に結びついているのかどうか見極めよう。

●身の丈に合わない事業投資をしている

採用に限らず、その企業の売上規模に見合わない事業投資をしているケースも要注意といえる。これは本業への投資も含まれるが、それ以上に多いのが「新規事業」や「異業種」への事業投資だ。

その投資が本業と関係ないジャンルである場合、騙されて大きな損失を被る可能性も高い。(実際、筆者の知る経営者にも、専門分野とは違う新事業に大金を出資したり、買収した結果、大きなダメージを受けた方が何人もいる)

大きな損失が発生した場合のしわ寄せは、黒字の本業にも及び、黒字事業を担当している社員の給与・待遇にも影響を与える。

経営者というのは「もっと早く企業を拡大させたい」「今の事業だけに依存していては危険だ」というプレッシャーと戦っている。その結果として焦り、「どうしてそんな素人でも引っかからない案件に引っかかったのか?」という案件に手を出してしまうことも多い。

結果として大成功になる可能性もゼロではないが、就職先を選ぶ上ではそのような高リスク企業に入る必要性は薄いだろう。

【スタートアップの見極めは困難 】

他にも警戒すべき「特徴」はたくさんあるが、筆者がこれまで見てきた中でも「まず、これだけは」という要素を紹介させていただいた。

ただ、ここまで書いたようなことに十分注意しても、正直学生の段階でスタートアップの見極めをすることは難しいだろう。

少し知識を身につければ明らかな地雷は避けられるかもしれないが、入社して意味がある、十分なリターンが得られる企業を見極めることは社会人でも難しい。

自分の体は1つしかないので、複数のスタートアップで働いてリスクヘッジするということもできない。そういう意味で、VCが投資を成功させるよりも難しいと言っても過言ではない。(厳密には副業という選択肢はあるが、新卒時点では現実的ではない)

だから迷ったらスタートアップではなく、すでに実績のある企業を考えよう。それでもスタートアップに興味があるという学生は、そもそも就活でスタートアップを受けるのではなく、在学中からさっさと長期インターンで飛び込んでみた方が良い。実際に中に入ってみれば、それで見えてくるものも多いだろう。