「転勤は当たり前」そんな価値観はもう古い?変わる就活生と企業の動向

(写真:アフロ)

「転勤は可能ですか?」…人によっては、就活の面接で聞かれると困る質問の1つではないだろうか。

特に大手企業の面接では、定番の「意思確認」の1つだと言えるだろう。

業界により多少異なるが、一般的に大企業の総合職は転勤の可能性も高い。転勤はできないがそういった企業に勤めたいという場合は、一般職や地域総合職(エリア総合職)などと呼ばれる職種へ応募するのが一般的だった。

一方で、就活生の方は「転勤の必要な企業」を敬遠する動きが増えているようだ。

【転勤が多い会社はどんな会社?】

まず前提として、転勤の可能性が少ない企業では前述のような質問は出てこない。

全国展開する規模ではない企業、本社しか拠点がないような企業がわざわざ「転勤の可否」を意思確認する事はないだろう。

全国に複数の拠点があるとしても配属のほとんどが東京であれば地方の支社は地方採用した社員だけで足りるという事も多い。

そのため転勤が必要な会社とは「全国展開しており、尚かつ地方にも人材配置が必要」という条件を満たす企業がメインとなる。

(海外赴任というパターンもあるが、こちらはむしろ希望する学生も多いため一旦別問題としておきたい)

これに該当する企業としては、主にメガバンクや保険などの金融業界の大手企業、全国に工場を持つメーカーや営業所を各地に持つサービス業などが有名だ。

一方でIT関連などオンラインサービスが主体の企業では、特に理由がなければ大体が東京に拠点を構えている事が多い。

東京だけで人材が確保できない場合に、地方活性化を名目に地方拠点を設けるというような取り組みもあるが、そのような例ではその地域に雇用を生み出す事が目的の1つとなっており、東京で採用した人材をわざわざ地方に転勤させるという事は少ない。

管理系の人材を転勤する事はあれど、その企業の全体から見ればごくごく一部の割合になるだろう。

【転勤したくない学生は急増中?】

冒頭でも触れたが、今「転勤はしたくない」という基準で企業を選ぶ学生が増えてきている。

別に昔の学生が転勤を歓迎していたわけではない。希望とは違う勤務地に配属が決まり、残念がったり慰められたりする学生の様子は多く見られる光景だった。

転勤が好まれていたというわけではなく、「それでも志望企業に入る」「転勤して昇進する」事の方が優先されていたのだ。

「マイホームを買った途端転勤が決まった」など、本人の意図しないタイミングでの転勤の話もよく耳にする話だった。その辞令も唐突であり「2週間後から~支店に」と言われ、拒否権もなく慌ただしく引き継ぎをしたという話も多かった。

「転勤があるのが前提」であり、本人の希望など聞かず「人事の決定が絶対」というのが昔の価値観だったと言えるだろう。

是非は別として、「それを受け入れるのが普通」というのが一般的な考え方だった。

しかし今の就活生や若手社会人は、そういったやり方を「非人道的」と感じている事も多い。あるいは「非生産的だ」という意見も多い。

データとして見ると、リクルートキャリア就職みらい研究所の調査では「地元で働きたい」という学生の割合は2018卒で約36%だったが、2019卒では40%を超えた。

これは転勤が当たり前という文化の中で仕事をしてきた社会人からすると、驚かれる方も少なくないのではないだろうか。

あくまで個々人の主観の話なので世代ごとに一括りにするべきではないのかもしれないが、そういった価値観は浸透してきてると見て間違いないだろう。

【企業側も変わり始めた?】

そういった価値観の変化に伴い、企業側も変わらざるを得ない状況になってきた。

特に今は就活生の売り手市場ということもあり、学生の価値観に合わせて行かなければ採用の成否にも響いてしまう。

例えば金融系では、全国をいくつかのエリアに分割してそのエリア内でのみ転勤させる事で「転勤自体はあるが範囲は転居が不要な程度に収める」というパターンが出てきている。

メガバンクの三菱UFJ銀行も「全国転勤の有無を選ぶことができる」という制度を2019年4月から導入するなどして話題になった。(その代わり地域限定職がなくなり、総合職に一本化された)

これまで同社を含めたメガバンクは、総合職なら2~3年に1回程度の頻度で転勤をすることが普通だった。「転勤が嫌だからメガバンクを辞めた」というのもよく耳にする話だった。

メガバンクの場合、取引先との癒着を防ぐという目的もあって「転勤は当たり前」として認識されてきたのだが、この価値観に一石を投じる制度となるのかもしれない。

三菱UFJの場合、転勤を希望しない場合でも賃金体系は同じになり、役割や職責で処遇を決めていくという。

これは「転勤を希望しないが昇給・出世はしたい」という社員にとってはありがたい話であるが、「転勤を希望しない社員に責任ある役割が与えられるかどうか」がポイントになるだろう。

「結局転勤しなければ昇格・昇給に値する職責を与えられない」となれば「待遇か、勤務地か」を選ぶ必要が出てくるかもしれない。

仮に転勤を希望する社員が少なくなってしまった場合、手当を厚くするなどなんらかの方法でインセンティブを設けていく必要も出てくるだろう。

運用開始されたばかりなので成否の判断はまだこれからだが、多用な働き方を認めていかなければ人材の確保も困難だと企業側も意識し始めたという好例ではないだろうか。

先行して取り組みを始めた企業での成否次第で、他の企業にも今後影響が出てくると考えられる。

【「転勤したくない」就活生はどう動くべきか?】

徐々に企業も変わりつつあるが、それでも現時点で転勤が必要になる企業は少なくない。

まず自分の就活の軸として「転勤してでも希望する企業で働きたいのか」「ライフスタイルは自分で決められるようにしたいのか」、優先順位を決めておこう。

「優先順位」と書いたのは、これが1か0かで決められる問題ではないためだ。

「第一志望なら転勤も辞さないが、そうでないならライフスタイルを重視したい」、「海外勤務なら頑張りたいが、国内の転勤生活は嫌だ」など自分の許容できることと許容できない事は明確にしておこう。

内定が欲しいばかりに面接の場でごまかすような回答をすると、結局入社後に両者にとって不幸な結果になってしまう。