テレビ朝日、障害者採用サイトの「検索回避タグ」で炎上…。邪推のしすぎでは?
テレビ朝日の障害者採用サイトが、Googleなどの検索エンジンを回避する仕組みになっていたことが分かり、一部ネット上の掲示板やニュースサイトで炎上している。
(障害者採用を「障がい者採用」と表記するケースもあるが、本記事では漢字で統一して表記するので予めご了承いただきたい。)
【 検索回避タグが入っていると何が問題なのか? 】
現在は修正されているが、テレビ朝日の障害者採用ページには検索エンジンを回避する「noindex」タグが入っていた。
今回この件が炎上したのは、「テレビ朝日が本当は障害者を採用する気がないのでは」というある種の推測から「就職差別だ」という邪推に至ったのが原因だ。
詳細な仕様は割愛するが「noindex」タグが入っているページは基本的にGoogleに登録されず、登録されないということはGoogleなどで検索した時に見つけられないページとなる。
ただしGoogleにインデックスされた他のページからのリンクで辿り着くことは可能であり、アクセス自体ができなくなっていたわけではない。
障害者採用サイトはテレビ朝日の採用情報ページからリンクされていた。
折しも、省庁における障害者雇用の数値水増しが発覚し、テレビ朝日を含むマスコミ各社がそのことを批判しているタイミングだった。
ネット上では、テレビ朝日が意図的に障害者採用サイトを検索避けしたと考え、「障害者差別だ」と避難する声が出てきていた。
【 テレビ朝日の障害者採用サイトは昔製作された物 】
筆者はテレビ朝日とは何の利害関係もないが、
この件でテレビ朝日を叩いている方は採用業務の現場もウェブサイト製作の現場も知らないのだろうと感じている。
まず炎上していたテレビ朝日の障害者採用サイトは明らかに昔作られたものであり、掲載されている内容も古い。
実際テレビ朝日に確認したところ、10年ほど前に製作されたものだという。
そもそもなぜnoindexタグが入っていたかというと、昔は現在のように通年採用を行っておらず、1年の中で募集を行っている時期と行っていない時期があったためだという。
ネット上では「新卒採用サイトにはnoindexが入っていない」という指摘が出ているが、現在公開されている新卒採用サイトは2019新卒向けのものであり、障害者採用のページとは明らかに製作時期が異なる。
また、大企業になると新卒採用と障害者採用は担当者も異なっているケースが多い。当然、ウェブサイトを製作した業者が異なるケースも多い。
「新卒採用サイトにはタグが入っていなかったから、障害者採用サイトのタグは意図的だ」と主張するのは的外れもいいところだ。
今は通年で障害者採用を実施しているという事なので、確かにnoindexタグを残す必要はなかっただろう。
しかし人事担当者も検索エンジンに詳しい人ばかりではない。(むしろ、詳しくない担当者の方が多い)
noindexタグが残っていても特段問題だと感じず、そのまま消さずに運用していたとしてもそこまで不思議なことではない。
【 外部の求人サイトにテレビ朝日の障害者求人も掲載 】
少し調べればわかる事なのだが有料で求職者募集を行う人材紹介会社や求人サイトにはテレビ朝日の障害者採用情報が普通に掲載されている。
もちろんそれらのページにnoindexタグは入っていない。
今回、テレビ朝日の障害者枠の採用募集をサポートしているという企業にもヒアリングを行ったが、やはり特別な制約はなく普通に求人募集を行っていた。
当該の求人情報は下記のページから閲覧することができる。
●アットジーピー転職
https://www.atgp.jp/index.php?module=Search&action=ShowItem&id=23566
●BABナビ(バブナビ)
https://bab-navi.com/kyujin/5107/
もしテレビ朝日が障害者採用に消極的だとしたら、採用にコストがかかる外部の求人サイトなどわざわざ利用しないのではないだろうか。
【 大企業は、障害者採用に積極的にならざるを得ない 】
これは意外に思われるかもしれないが、それなりの大企業であれば障害者採用の目標達成には熱心だ。
障害者雇用促進法43条第1項によると、従業員が一定数以上の規模の事業主は従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある。
2018年9月時点で民間企業の法定雇用率は2.2%であり、基準は年々高くなってきている。
計算すると、従業員を45.5人以上雇用している企業は障害者を1人以上雇用しなければないけない事になる。
従業員規模の小さい企業では守られていない事も多いが、未達成企業は障害者雇用納付金を収めなければならない。
逆に達成している企業には調整金、報奨金が支給されるというルールだ。
企業は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する必要がある。
未達成企業にはハローワークから行政指導が入るとともに、改善が見られない場合は「企業名公表」に至るリスクもあるのだ。
そして法定雇用率が2.2%である一方で民間企業の平均実雇用率は2%にも満たず、事実上「働ける障害者の取り合い」が起きていると言っても過言ではない。
「意欲があり、働くことができる障害者」は企業にとって喉から手が出るほど欲しい人材なのだ。
そんな中で、自主的に採用ページを目立たせなくさせる動機は無い。
【 障害者=差別されるもの という先入観 】
もちろん障害者を採用する上では様々な配慮や準備が必要であるが、それでも障害者人材を求める企業は増えてきている。
今回のテレビ朝日を叩いたネットユーザーはこの点が理解できておらず、「障害者は採用市場で差別されるものだ」という思い込みが先行してしまっていたのではないだろうか。
企業の採用需要を理解していないからこその邪推である。
そのような先入観が発生する状態こそ不健全であり、これを機にもっと障害者雇用についての現状や課題について理解していく必要があるのではないだろうか。