ブラック企業大賞2017…誰が選んだ?就活で参考になる情報なの?という疑問に答えます

(写真:アフロ)

労働問題に取り組むNPO団体などが企画した「ブラック企業大賞」の2017年ノミネート企業が発表され、現在「ウェブ投票」を受け付けている。

「このブラック企業大賞とは何?」

「それって胡散臭いものじゃないのか?」

「就活で何か参考になる情報なの?」

…などの疑問に応える形で記事にしてみたいと思う。

【ブラック企業大賞はそもそもどうやって決まっているのか?】

ブラック企業大賞は、年に1回「ブラック企業大賞企画委員会」という団体が発表している。この委員会は労働分野に関わるNPOや弁護士などが集まって組織されているようだ。

ノミネートしている企業9社は一般公募ではなく(ここ重要)、委員によって選定されている。

ノミネートした9社に対してはウェブで投票が受け付けられており、現時点ではNHKが1位になっている。

ただし過去の事例を見るとウェブ投票で1位になった企業が必ずしも大賞になるわけではなく、大賞は委員会判断によって決定されるようだ。(2016年は日本郵便がウェブ投票賞だったが、電通が大賞となっている)

参考までにホームページから引用しておくと、このような委員で構成されている。

ブラック企業大賞企画委員会

●古川琢也(ルポライター)

●白石 草(OurPlanet-TV 代表)

●河添 誠(首都圏青年ユニオン青年非正規労働センター事務局長)

●佐々木亮(弁護士)

●川村遼平(NPO法人POSSE事務局長)

●松元千枝(レイバーネット日本)

●内田聖子(アジア太平洋資料センター〈PARC〉事務局長)

●須田光照(全国一般東京東部労組書記長)

●水島宏明(ジャーナリスト・法政大学教授)

●竹信三恵子(ジャーナリスト・和光大学教授)

●土屋トカチ(映画監督)

出典:http://blackcorpaward.blogspot.jp/

今年度ノミネート企業は9社発表されており、参考までに記載すると下記の通りである。

ゼリア新薬工業株式会社

株式会社いなげや

パナソニック株式会社

新潟市民病院

日本放送協会(NHK)

株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西

大成建設株式会社・三信建設工業株式会社

大和ハウス工業株式会社

ヤマト運輸株式会社

出典:http://blackcorpaward.blogspot.jp/

※掲載順は委員会ホームページそのまま

委員会から発表された「ノミネート理由」については、すでに他のオーサーから記事が出ているので併せて参考にしていただきたい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20171128-00078633/

(個人的には「なるほど」と思う理由もあれば、首を傾げる理由もある…というのが正直な感想だ。)

なお、労働問題は政治的問題として絡めて考える方も多いと思われるが本記事はあくまで学生の就職活動をテーマに書いているので政治問題にまで言及するつもりはない。その点はご理解いただきたい。

【ランキングではない】

そもそも、この企画は所謂「ランキング企画」などではないことに注意しよう。

審査を行う委員の眼から見て「話題性もあり、取り上げるべき」と判断された企業がピックアップされているに過ぎない。

良い意味でも悪い意味でも「審査員の主観」が入っており、労働時間に対しての賃金の割合がどうだという計算などが行われているわけではない。

当然のことながら、これにノミネートしていない会社がホワイトだという話でもない。

もちろん過去のノミネート企業が今年度ノミネートしていないからといって、状況が改善したとは限らない。

ノミネート企業はあくまで氷山の一角であり、むしろもっと酷い状態にある企業だって世の中には存在する。

世の中には報道もされず、労災認定すらされず埋もれている案件はいくらでもあるのだ。

(もちろん、火のないところに煙は立たないという考え方もそれはそれで正しい)

今年度のノミネート企業は最近なんらかの形で報道され、「労働問題においてタイムリー」な企業なのである。

就活目線で企画されているわけではないので当然といえば当然なのだが、この性質は意識しておいた方が良いだろう。

【他の企業でも起こりうる】

わかりやすい例がゼリア新薬だ。これは「新人研修がきっかけで社員が自殺に至った」というノミネート理由だが、ゼリア新薬と同じ研修会社に新人研修を外注している企業は他にもある。研修内容が同じであれば他の企業でも起こり得た事なのだ。

実際に事件が起き報道されたのがゼリア新薬だったからノミネートしているにすぎず、安直にゼリア新薬がブラックだと槍玉に挙げれば良いものではない。

不運にもそんな事が起きてしまった会社と、今後も頻発し得る会社との差は大きい。

後者を回避することは大事かもしれないが、前者まですべて回避していると就職できる会社が無くなってしまうだろう。

【特殊な例なのか、頻発することなのか?】

もう1つ、NHKを例に考えてみよう。ノミネート理由を読むと 過労死した女性の1カ月間の時間外労働は159時間37分に及んだと言う。

もちろんNHKの労働時間は長い。それは筆者の周囲にいるNHK職員を見る限り間違っていない。

しかし「NHKの職員ってみんなそのくらい働いているの?それともその女性だけ特別だったの?」…という疑問を持たないだろうか。

さすがのNHKでも、大半の職員が159時間相当の残業をしているわけではない。

「では何時間くらいなのか?」という疑問への答えはここには書かない。それは自分で色々と探してみてもらいたい。

そうした情報はブラック企業大賞の受賞内容を見ていてもわかるものではなく、OB訪問をして社員に聞いた方が良いと言えるだろう。

あるいは、最近なら企業の社員が匿名でクチコミ投稿する情報サイトがいくつも存在するので、そういった物も是非活用していただきたい。

ちなみにNHKは約1万人の職員を抱えている。1万人の組織がブラック企業かどうかを判断するならば、1人の事例だけでなくもう少し多くの職員がどのような働き方をしているか知ろうとするべきだろう。

【報道され、批判されるのは氷山の一角】

皮肉なことに有名企業であるほど事件が起きた時には大きく取り沙汰され、無名な会社が同じことをしていてもそれはニュースになりにくい。

決して有名企業が起こした事件を軽視するわけではないが、自殺や過労死に至るケースというのはあくまで氷山の一角でしかない。

その氷山の一角だけを回避できれば良いわけではない。

たまたま過労死が出ていないだけで徹夜仕事がデフォルトだという企業もあるだろうし、たまたま自殺者が出ていないだけで不当なパワハラが当たり前になっているという企業もあるだろう。

【事件を事例として知ることは大事】

ただし、取り上げられている企業に関わる事件を知識として知っておく事は大事なことだ。

「ノミネートしているからこの企業はブラックらしい」と表面だけを捉えるのではなく、そこまで言われている企業でどのような事件が起こったのか、そしてなぜそのような事が起きるのかを考えてみて欲しい。

そもそもの話、ブラック企業というワード自体が曖昧な要素を多数含んだ概念になっている。

ブラック企業を敬遠するよりも「給与の低い会社は嫌」「徹夜が発生するような会社は行きたくない」など自分にとってのNG条件を具体的に決めるべきなのだ。

ブラック企業大賞やブラック企業ランキングを眺めて「なるほど、この会社がブラックなのか!」とわかったつもりになっているうちはまだまだ企業を理解できていない。

キャッチーな煽り言葉に騙されず、自分にとって必要な情報を見極めていただきたい。