Yahoo!ニュース

似ているけど別物、『インターン紹介とインターン派遣』はどう違うのか。

酒井一樹就活SWOT代表

就活SWOT代表の酒井です。

そろそろ「インターン」を探す方が多くなる季節ですが

インターンシップに参加するには、

1. 直接インターンシップ募集企業に応募する

2. インターンシップ紹介会社を利用する

3. インターンシップ派遣会社を利用する

という3つの方法があります。

2と3は、一見同じに見えてしまうかもしれません。

…が、実はこの2つのどちらを利用するかによって

その後のインターンライフ(?)は大きく変わってしまいます。

今回は、この問題について業界事情を書いてみたいと思います。

インターンシップ紹介会社とは

インターン生を企業に紹介して、

紹介したタイミングで手数料を受け取るのが「インターンシップ紹介会社」です。

これはシンプルなのであまり解説はいらないと思われますが、

インターン受け入れが決まった後は学生個人と企業が直接契約します。

インターンが開始した後、インターン紹介会社が

両者の間に入ることは基本的にありませんので、

一般的なインターンシップと同じように参加できると考えて問題ありません。

インターン生がインターンを何ヶ月続けても、週何日出勤でも、

基本的に紹介会社には関係ありません。

(厳密に言うと、短期間で辞めたら紹介料を受け取らないという仲介会社もあります)

インターンシップ派遣会社とは

一方のインターン派遣会社とは、どのような会社なのでしょうか。

仲介会社は毎月インターン生の派遣料を企業から取り、

マージンを抜いてインターン生に給与を払います。

つまり、インターン生の給与は、

インターン先の企業ではなく、インターン派遣会社から振り込まれます。

マージン比率は企業によってバラバラですが、3〜5割程度が相場のようです。

派遣会社にとっては、インターンが継続すればしただけ利益になりますので

「なるべく長く続けてほしい」「できれば出勤日数も多くしたい」

と考えるようになります。

辞めたいけど辞められない?

こういった仕組み自体は一般的な派遣会社と同じなのですが、

かなり過酷な労働状況でも「もうちょっと頑張ろう」と

無理をさせられる学生の話が結構あるのが問題です。

インターン紹介を利用して『インターン先の企業と直接契約』しているならば

基本的に労働条件は企業との相談によって決められますが、間に派遣会社が入る場合

「できるだけ長く働いてほしい」「できるだけ稼働日数を増やしたい」

という思考が働きます。

(インターン生に休学を奨めて、稼働日数を増やしている団体もあります。)

また、派遣会社のマージン分があるので、企業からすると

直接インターン生を雇う場合に比べて1.5倍〜2倍程度の時給を払う必要が出てきます。

この違いは意外に大きいものです。

インターン派遣を利用する企業から見ても、

「高い時給を払っているのだからその分、頑張ってもらわなければ…」

という思考が少なからず働きます。

結果として『長時間労働 × 求められるハードルも高い』

という無茶ぶりな状況が出来上がってしまう場合があります。

「そんなの、辛いなら派遣会社にそう言って辞めれば良いじゃないか」

…と思われるかもしれません。

しかし、現実には筆者のところに相談が来る学生さんで

「インターンが厳しすぎて、でも辞められない…」と話す方は

十中八九、インターン派遣会社の『紐付き』でインターンをしています。

さらに付け加えると、地方出身の方が多いです。

首都圏に比べてインターンのチャンスが少なかったため

インターン派遣しか選択肢になかったのだと思われます。

「辞めたいです」…と言っても、

毎日のように学生のキャリアコンサルティングをする社会人から、

「そうは言っても成長したいでしょ。

何のためにインターンに参加したのか目的を考えてみて」

…と言われた時、反論して突っぱねられる学生さんはあまり多くないでしょう。

(また、インターンのためだけに上京しているので

帰るに帰れない…という事情もあるそうです。

休学までしてしまっていれば、尚更です。)

NPOでもビジネスがしたい?〜派遣NPOにも要注意

なお、そういった問題があるのは

派遣会社だけでなくインターン支援のNPOも基本的に同じです。

…といっても、学生が運営しているような団体であれば

同じ学生同士なのでそこまで厳しく言われることはあまりありません。

一方で、非常に「大きな利益を出している」NPOも存在します。

企業からは会費を取ってインターン生を紹介しているのですが、

インターンへの支払いは給与ではなく「活動支援金」という微妙な名目にしており

結果的に最低時給を下回る…というような事例もあるようです。

更に言うと、学生個人から研修費用を取ることも…。

「参加必須」の合宿研修が参加費2〜3万円というケースもあるので驚かされます。

「NPO」というと「非営利だから…」と良いイメージを持たれる方も多いと思いますが

NPOでもスタッフに「給与」を支払うことはできます。

(そのこと自体がダメだと言うつもりはありません。 

そうしないとインターン紹介担当のスタッフも生活していけませんので…)

NPOと営利企業との違いは

「利益剰余金を配当しない」ということや

「収支報告を詳しく実施しないといけない」という程度。

一時期「事業型NPO」なんて言葉も流行りましたが、

NPOというのは普通に「ビジネスができる」存在なのです。

ですので「NPOであること」と「収益度外視で社会貢献をしている」ことは

必ずしもイコールではありません。

もちろん、ボランティアに近い活動をしているNPOが多いのも確かですが

いずれにしてもイメージではなく、実態を見て決めることが重要でしょう。

これは決してNPOを批判しているわけではなく、

「株式会社もNPOも仕組み自体は変わらないから、中身を見て判断しましょうね」

という話です。

「登用のチャンス」を逃してしまう?

また、派遣会社経由でインターンに参加することのデメリットとして

「正社員雇用される時に面倒くさい場合がある」という事が挙げられます。

これは仲介する会社によるのですが、

「派遣してるスタッフを正社員雇用するなら、そのタイミングで紹介料をくださいね」

という契約になっていることがあるのです。(数十万円程度の金額です)

紹介料がかかるということは、それだけそのハードルが高くなることを意味します。

企業と直接契約している場合、

インターンから正社員になるタイミングでそういった「紹介料」はかかりません。

ですので、インターンからの正社員登用を意識している会社であれば

そもそも受け入れ時点で

「直接契約でインターンを受け入れよう」と考えることの方が多いでしょう。

インターン先で成果を出している方の中には、

大学在学中に正社員登用される方や、場合によっては役員登用される方もいらっしゃいます。

しかし、「インターン派遣」という仕組みにハマっている限り

そういったチャンスを得ることは難しいでしょう。

派遣と紹介、両方やっている会社もある

インターン派遣会社/NPOのデメリットを多く書いてしまいましたが、

実際には「派遣と紹介、どっちでも対応してます」という企業も存在します。

企業によって直接雇用したいのか、派遣として受け入れたいのかの

ニーズは異なるため、両方に対応していることが多いわけですね。

派遣免許を取っているからといって

絶対にインターン派遣を行なっているわけではないので

そこは担当者に「この求人は派遣なのか、直接雇用なのか」と聞いてみると良いでしょう。

まとめ

一見して同じに見える「インターン紹介」「インターン派遣」ですが、

中身は全くの別物だということがお分かりいただけたかと思います。

どちらを選ぶかは読者のみなさま次第ではありますが、

せっかくモチベーション高くインターンに参加されるのであれば

両者のメリット・デメリットはよく考えた上で、活用していただければと思います。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

酒井一樹の最近の記事