12月19日、ラグビー大学選手権準々決勝が東西で2試合ずつ計4試合が行われた。東京・秩父宮ラグビー場では連覇を狙う早稲田大学(関東大学対抗戦2位)と慶應義塾大学(関東大学対抗戦3位)が激突した。

11月23日に行われた対抗戦での「早慶戦」では、早稲田大が22-11で勝利したが、慶應義塾大も調子を上げてきており、接戦が予想された。

◇前半から先手を取った早稲田大が勝利

12月6日に敗戦した「早明戦」の反省から、早稲田大は練習中からキャプテンNo8丸尾崇真(4年)を中心に「自分たちから先手を取っていこう、BATTLE(※今季のスローガン)しよう」と言い続けてきた。その言葉通り、早稲田大が先手を取って流れをつかむ。

前半5分、No8丸尾主将がスクラムからブラインドサイドを突いてインゴール右隅に飛び込んだ。続く14分、ボールを左右に動かし「今季一番成長した」とコーチ陣や先輩たちが声を揃えるWTB槇瑛人(2年)が右隅にトライ。

攻撃の手を緩めない早稲田大は20分、FL相良昌彦(2年)のタックルで相手がこぼしたボールを、今季初先発の1年CTB伊藤大祐(桐蔭学園出身)が拾って55mを走りきってトライ、さらにWTB槇が2本目のトライを挙げて、前半だけで24-7と大きくリードした。

後半、慶應義塾大学に攻められる時間帯もあったものの、さらにWTB古賀由教(4年)のトライを加えた早稲田大学が29-14で勝利し3年連続、準決勝へと駒を進めた。

◇自分でサイクルを作り、シーズン中でも体重増加

No8丸尾、FL相良とともに早大のバックローを形成するFL村田(撮影:斉藤健仁)
No8丸尾、FL相良とともに早大のバックローを形成するFL村田(撮影:斉藤健仁)

この試合でもWTB槇とともに出色の出来を見せたのは身長185cm、体重98kgの1年生FL村田陣悟(京都成章)だった。ジャッカルを決めて相手の反則を誘えば、2本目のトライの前にゴール前に力強く迫ったのもFL村田だった。

「ハードワークして力強いプレーをして士気を上げて(チームに)貢献する」と心がけて試合に臨んでいるFL村田は対抗戦・開幕の青山学院大戦で途中出場だったものの、力強いプレーを見せて勝利に貢献した。

相良南海夫監督は「途中で出てきて想像以上にやってくれた。青学戦は村田が一番、良かったくらい。ポテンシャルを感じて、試合で使いながらがいいかなと思った」と感じ、2試合目から先発で起用。その後はコーチ陣の信頼を得て、大学選手権の準々決勝までルーキーながら先発出場を続け、試合を重ねるごとに存在感を増している。

例年より1ヶ月遅れて10月4日から始まった関東大学ラグビー対抗戦。試合が始まると村田は「自分で何かできないかな」と1週間で自分が何をするかというサイクルを作っていたという。

「正直、(大学で)活躍するイメージはできていなかった。ですが、(1週間の)サイクルを作り、自分なりに考えて行動することが、不安要素を取り除くことや試合の緊張をほぐすことにつながっている。正しいマインドを持って、日々の生活するところから始まっています」(FL村田)

例えば寮の規則正しい3回の食事以外にお餅やバナナ、プロテインの補食を2回摂って、積極的に筋肉トレーニングも重ねて、毎日、練習後に「ラグビーノート」を書くなどもしたという。

するとシーズンが始まっても体重が落ちるどころか、3~4kg上がって98kgと上がり、さらに大学の試合にも慣れてきたことが「成長につながっている」と自ら振り返った。

◇高校代表から落選したからこそ「今がある」

昨年度の「花園」こと全国高校ラグビーで、Aシードで優勝候補の京都成章の中心選手だったFL村田だが、常翔学園(大阪第2)に24-27で敗れてベスト8で終わってしまった。

さらに、花園後の1月から2月にかけて高校日本代表候補合宿で自らをアピールしたつもりだったが、チームメイトで同じポジションのFL延原秀飛(帝京大)、FL三木皓正(京都産業大)の2人は高校日本代表に選ばれたが、自身は落選してしまった。

「(高校日本代表に落ちたことが)本当に悔しくて、どうしたら受かることができたのかと考えこんでしまった」。FL村田は京都成章の練習に参加することもできたが、高校日本代表に選ばれたチームメイトと顔を合わせて「一緒に練習するのが悔しかった」ので、1~2週間くらい、練習に行かない時期があった。

FL村田は「早稲田大でやるというモチベーションはありましたが、なかなか立ち直れず、ラグビーから一度離れて、気分を変えてみようという思いもあったのかも。その時期があって、今の自分がある」と当時を振り返った。

京都成章時代。左から山本、西野、延原、三木、岡、村田、本橋(撮影:斉藤健仁)
京都成章時代。左から山本、西野、延原、三木、岡、村田、本橋(撮影:斉藤健仁)

◇早稲田大の先輩たちに刺激を受けた

3月になると上京して、早稲田大学ラグビー部の寮に入り練習が始まった。環境が変わったFL村田が「(1年生から)スタメンを取ってやろう!」と思い始めた矢先、コロナ禍により、4月に入ると再び実家に戻った。

ラグビー部として少人数の「スモールチーム」でZoomによるミーティングで試合を見て意見を交換したり、自分なりにトレーニングしたり、友人と走り込みをしたりして2ヶ月間ほど過ごしたという。

6月になり、大学の寮に戻り、同部屋の副将FL下川甲嗣(4年)やFL相良といった先輩たちが、日本一を目指し努力する姿に直接触れたことで「一緒に過ごして刺激を受けました。自分はこのままではダメ。先輩たちの姿を見て、もう一度、頑張ろう」とマインドを変えたことが、今の活躍につながっている。

1年生ながら、早稲田大のアカクロジャージーを着て試合に出ることはやはり「重みを感じる」と話したFL村田。今、心がけていることは、練習中から先輩の選手たちと積極的にコミュニケーションを取ることだ。「遠慮せずに、自分の思いを伝えないと思いっきりプレーできないし、勝利につながらない」と語気を強める。

早稲田大の大学選手権の連覇まで残り2試合となった。攻守にわたり体を張って前に出続ければ、ルーキーのFL村田は高校時代には手にすることができなかった日本一の栄光に近づけるはずだ。