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開幕戦からラグビー日本代表FB松島が先発!松島が挑む仏リーグ「TOP14」、そしてクレルモンとは?

斉藤健仁スポーツライター
昨年のW杯の開幕戦でハットトリックを達成した松島。今季からフランスに挑戦する!(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

◇開幕戦から松島がFBで先発出場!

昨年のラグビーワールドカップ(W杯)で5トライを挙げたラグビー日本代表の快足ランナーが、開幕早々、フランスリーグデビューを果たす。

今シーズン、サントリーサンゴリアスからフランス「TOP14」の強豪のひとつクレルモンに移籍した日本代表FB松島幸太朗が、9月6日(日本時間7日)、ホームで行われる開幕のトゥールーズ戦で、早速15番を背負って先発出場することになった。

7月9日に渡仏し、練習試合や紅白戦でアピールしたFB松島は「TOP14」のFacebook上で「6ヶ月のプレシーズンを経て試合をするのですごく楽しみ。開幕なのでしっかりアピールしていいパフォーマンスができるように頑張ります」と意気込んでいる。

それでは松島が挑戦するフランスリーグ「TOP14」はどんなリーグで、そして新たにプレーするクレルモンとはどういったクラブなのだろうか。

◇フランスの強豪クレルモンとは?

ラグビー日本代表FB松島幸太朗選手がサントリーから移籍したクレルモン(正式名称:ASMクレルモン・オーヴェルニュ)は、世界的なタイヤメーカー、ミシュランの一族が1911年に創設したクラブだ。

本拠地はフランス中部オーヴェルニュ地方クレルモン=フェランにあり、黄色と青がクラブカラーである。そのため、愛称はチーム名から「ASM(アーエスエム)」やジャージーの色から「イエローアミー(Yellow Army)」や「レ・ジョーンヌ・エ・ブル(les Jaune et Bleu)などと呼ばれている。

クレルモンと言えば、正式契約にはならなかったが、元日本代表WTB大畑大介も2002年に在籍したことでも知られる。2006年から14年まで、スコットランド代表でも指揮官を務めたヴァーン・コッターHC(ヘッドコーチ)が指導し、2009-2010シーズンに悲願の「TOP14」初優勝を果たした。

そして2016-17シーズンには今シーズンも指揮を執るフランク・アゼマHCの下、2度目の優勝を遂げた。リーグ戦での準優勝は12回を数え、またヨーロッパ王者を決める「ヨーロピアン・チャンピオンズカップ」でも3度の決勝に進出している欧州でも有数の強豪だ。

メンバーは現役フランス代表やその経験者が中心だ。PRラヴァ・スリマニ、LOセバスチャン・ヴァーマイナ、FLアルトゥール・イトゥリア、新加入のSHセバスチャン・べジー、SH/SOモルガン・パラ、SOカミーユ・ロペス、CTBウェズレー・フォファーナ、CTBダミアン・プノー、WTBアリヴェルティ・ラカなどが在籍している。

他にもフィジー代表No.8ペセリ・ヤト、日本でもプレーしたサモア代表FBティム・ナナイ=ウィリアムズ、元ニュージーランド代表CTBジョージ・モアラ、元オーストラリア代表ピーター・ベサムなども在籍している。

本拠地は「スタッド・マルセル・ミシュラン」だ。クラブ創設者の名前を冠した約18000人収容のスタジアムで、フランスで最初に人工芝を導入したことでも知られる。

ゴールポスト裏の2つのスタンドには、ミシュラン創業者の曾孫で2006年に海難事故で亡くなったエドゥワール・ミシュランと、1976年に試合中に落雷で命を落としたジャン=フランソワ・フィリポノーの名が付けられている。

◇フランスリーグ「TOP14」とは? 

ラグビーワールドカップ(W杯)で3回の準優勝を誇り、2023年にW杯開幕を控えるフランス。近年、サッカーだけでなく、ラグビー熱が非常に高くなっている。その国内の1部プロリーグが「TOP14(トップキャトーズ)」であり、今シーズンからFB松島がプレーするクレルモンも強豪チームのひとつだ。

欧州のラグビー伝統国フランスの国内リーグの起源は1892年と古く、2005年から現在の「TOP14」となり、文字通り14チームによって優勝が争われている。また、昨シーズンこそ新型コロナウィルス感染拡大の影響によりシーズン途中で中断されたが、「TOP14」は世界で最も成功しているプロリーグのひとつと言われ、フランスだけでなく世界中からスター選手が集まっている。

そのため、2015-2016シーズンの決勝戦はスペインのバルセロナ・カンプノウで開催され99124人のファンを集めたことで知られ、一昨年シーズンの観客動員数は273万4738人で、一試合平均は14624人とおおいに盛り上がりを見せている。

過去の国内1部リーグを含む「TOP14」で最多優勝回数を誇るのは、フランス南西部のトゥールーズを本拠地とする一昨年シーズンの王者トゥールーズ(スタッド・トゥールザン)の20回だ。それに次ぐのが、パリを本拠地とするスタッド・フランセの14回である。この2チームは長年にわたって覇権を争うライバル関係にあり、両者の対戦は「フランスダービー」として世界的に知られる。

他にも一昨年シーズン2位の松島が新たに加入したクレルモン、元日本代表FB五郎丸歩(現ヤマハ発動機)がプレーしたことでも有名な「銀河系軍団」トゥーロン、パリの強豪クラブのひとつラシン92、3シーズン前の王者・カストル、昨シーズンの中断時に首位に立っていたボルドー、モンペリエ、ラ・ロシェルなどが強豪として知られている。

今シーズンの「TOP14」は9月4日に開幕し、プレーオフを経て2021年の6月26日に終了する。総当り戦でホーム&アウェーの26試合を行ない、上位6チームがプレーオフトーナメントに進出する。3位~6位は準々決勝から、1位と2位は準決勝から出場し、そのトーナメント戦の勝者がそのシーズンの王者になり、優勝盾である「ブレニュス盾」を手にする。

また「TOP14」の上位8チームは、来シーズンのラグビー版のチャンピオンズリーグ「ヨーロピアン・ラグビーチャンピオンズカップ※」への出場権も獲得する。一方、リーグ戦の下位2チームは、2部リーグにあたる「プロD2」の上位2チームと自動入れ替えとなる。

※なお新型コロナウィルスの影響で中断されていていた2019-2020シーズンの「ラグビーチャンピオンズカップ」は再開され、9月19日、20日に準々決勝が行われる。フランスリーグでは松島のいるクレルモン、ラシン92、トゥールーズが残っており、クレルモンは19日にホームでラシン92と対戦する。

◇「TOP14」の過去5シーズンの優勝チーム

2019-2020シーズン ※リーグ中断により優勝チームなし

2018-2019シーズン 優勝:トゥールーズ 準優勝:クレルモン

2017-2018シーズン 優勝:カストル 準優勝:モンペリエ

2016-2017シーズン 優勝:クレルモン 準優勝:トゥーロン

2015-2016リーズン 優勝:ラシン92 準優勝:トゥーロン

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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